UNDER ABYSS〜奈落の上を生きる者〜

路傍のMOB

プロローグ

 夢を見た。


 俺が通っていた私立高校の最後の行事である修学旅行の帰り道での飛行機内で。


『どんな力が欲しい?』


 多分、そんな事を聞かれたんだと思う。

その時は何故か意識があやふやで、それを聞いてきた人が美しい見た目をしていたという事。

俺が


『いつでも自由に空を飛んでいける力が欲しい』


 そう答えたという事しか覚えていなかった。

多分、その俺の回答に対して悲しそうに『そう……』と呟いた女性は___






 それを最期に、俺の意識は途絶えて……海の藻屑となっていた飛行機は完全に消滅した。









 何か、右耳辺りに生暖かさを感じて声を零しながら顔を振る。


「_____」


 ん?

ちょっと自分の声に違和感を覚えながらも、もう一度音に出してみる。


「___………_____!?」


 ……聞いたことがない筈なのに、聞き取れる高い音。

もう一度……


「___……」

「____?」


 とやっている内に、外側からも同じ音での反応があった。

 再び顔の辺りに感じる生暖かい感覚。それが嫌で手を振る素振りに体を動かすと、落ちた。

 比喩でも何でも無く真下へと、頭の方から落ちていった。

ヒュー……っと、1秒程して頭から何かに激突した。

 あ、死んだ。とは思ったものの、来るだろう痛みは一切無い。恐る恐る目を開けると……


「____!?」


 頭上にいたのは溢れんばかりのコウモリの群れ。木の枝いたる所に止まっているコウモリ達に、その奥に見えるのは赤色の月。周囲一帯の枯れ木には何処を見てもコウモリが止まっており、地面には俺のように地面に落ちたコウモリが所々に転がっていた。

 ……俺のように?


 手を確認しようと顔の前へと持ってくると、少しだけ足を引っ張られるような感覚とともにそれはもう立派な黒色の膜が。

 ……あ、駄目だこれ。キャパオーバー……

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