099:島流しの真実【6章完】
「鬼ってどういうことなのじゃー」
「ユニさん鬼と言えば、頭に角が生えているんですよ!」
「そうなのかー。じゃあ、ユニは鬼だったのかー」
「アルラウネ。角が生えていれば鬼と言うわけじゃないのよ。私だってサキュバスの角が生えているし、ユニの角はユニコーンの立派な角ね」
「ドリアラさんの話が進まないから少し黙っていてあげようか」
アカリが制止し、ドリアラに話の続きを促す。ドリアラはニコっと笑い、アカリの方へ寄って頭を撫でた。小さなドリアラの姿が薄くなり本来の姿を取り戻し話を進める。本来の話を取り戻したドリアラの口調は落ち着いた口調に戻っていた。
「あなた、リリスさんの魂と同じ色をしていますね。なんか……切っても切れないような不思議な感覚があります。なぎささんに縁を繋ぐ石を渡しておきましょう。きっといつか活用できる時が来ると思います」
銀色に光る鉱石の塊が僕の前に魔法陣を介して出現し浮遊している。淡くピンク色の光を発し僕が受け取るのを待っているかのようだった。
「その石は!」
「リリスさんはご存じですね。ヘルメスが海底神殿で作っていた『運命の指輪』の素材となる一つです。天女族の持つ『ハートブルマニア鉱石』と合わせる事できっと役に立つでしょう」
「これで、『運命の指輪』が作れるんですね。なぎささんとの運命が分かるんですね!」
「ドリアラさん…… そろそろ鬼の本題に入ってもらってもいいかしら」
「分かりました。鬼が復活したのはタマサイ王国の一角にある『ハッサド』。かねてより力の源を探していたのは感じていました。しかし、力を少しづつ蓄えていたことまでは気づかず、皮肉なことに復活したことで気づく切っ掛けになったのです」
「なぎさとハッサドに転移した時に襲ってきた姉妹が物資の事を言っていましたね」
「ええ。物資はあくまで食料や探索などに必要な物であり、島流しと際して運ばせていたようです。しかし、本当の目的は、泥船に埋め込まれた珠であったようで、その珠に罪人の血を注ぎ込むことで、儀式の贄として鬼を復活させていたようです」
「タマサイ王国は、王国一丸となって鬼を復活させてきたということですか?」
「違います。ハッサドに住む者の人たちの殆どは、雇われたか何も知らずに探しているだけの者たちです。タマサイ王国でも、鬼の復活を企てている者は数える程度でしょう」
「ドリアラ様。では、鬼が既に復活しているということは、これから戦争が巻き起こるということですか」
「リリス。復活と言ってもまだ充分に力が蓄えられていません。どちらかというと、肉体が復活したというのが正しいでしょう。ここから力ある物を贄にしていくでしょう。だからこそ、力ある物を生み出す緑の洗礼は行えなかったということもあるのです」
「動向を察知されかねないと……」
「その通りです。大樹で儀式を行うのはリスクが高い。だからこそアルラウネの洗礼をなぎささんにお任せした理由でもあるのです。一時的に力の波を放出してしまう儀式ですので、隠れて結界を張っておいたのです」
「じゃあ、ドリアラは監視をされているってことですか?」
「はい。緑の環に入ってベヌスに力を供給しているのは建前上で、大樹の中に隠れていると言った方が正しいでしょうか。強き力を持つ者に監視の目が向けられ、鬼の配下の一人である馬頭鬼が復活したという話もあります」
「ドリアラさん! 馬頭鬼(めずき)なら会いましたよ。なぎさちゃんの力に敵わないと悟って逃げちゃいました」
「アカリさん! 馬頭鬼がどこに行くのかは言っていなかったのですか!」
「ええ。 確か…… 相棒の牛頭鬼を探しに行くって言っていたような……」
「そうですか…… 馬頭鬼は復活した…… ならば牛頭鬼も復活したと考えて良いでしょう。 あとは、ハッサドの鬼が完全復活しないよう阻止しなければなりません。なぎささんたち、様子を見に行ってください」
「なぎさが居れば、鬼なんかちょちょいのちょいなのじゃ!」
「ユニさん。鬼の力は未知数です。先般の勇者と呼ばれた者も鬼に取り込まれてしまいました。鬼はどんな手を使ってくるかわかりません。十分注意してくださいね」
「ドリアラ。大丈夫だよ。僕たちはみんなで協力して鬼退治をしてみせるよ。こういう場合は倒せないまでも封印するとか良い方法がないか調べてみるよ」
「お願いします。では早速地上へ転移させますね。分身の力もあとわずかです。力が足りなくならないうちに始めます」
ドリアラは体を縮ませながら地下室の中に光を広げていく。緑の光が全体を包み、視界に広がる光が緑から白に変わった所で、吸い込まれるような感覚に陥った。
「ど、ドリアラ……。 予想(9話)の話を聞きたい──」
全ての視力と聴力が遮られてしまった。今までの魔法陣の転移とは違う感覚が僕たちを包む。最後にドリアラが「無事に帰ってきたらゆっくり話しましょう」。かすかにそんな風に聞こえた気がした。
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