067:作戦会議?
「アールド王子、どうしてここに……」
「なぎさ殿たちに助けられたことがあってね。その縁で知り合いになったんだよ。そしてこの2人が城を訪れ、ベオカ民を助けるのを手伝って欲しいと頼みに来たんだよ。蒔田殿はどう思うかね」
「私は困っている人がいれば助けてあげたいと思います。それになぎさ君は私の生徒ですから…… しかし、ご恩のあるこの国の領地に私の勝手で判断して良いものか悩みます」
「そうか。それなら君の思う通りにしたまえ。ここは君の領地だ。ヨハマ連邦は、領土の問題は領主に任せておる。失敗しても構わん。そうならない人財を領主に据えているからな」
「アールド王子…… それならなぎさ君。好きなようにしていいわよ。ただし、王子やこの国の民に迷惑をかけないようにすること」
「そういう事だなぎさ殿。蒔田殿が言うように君の好きなようにしたまえ。もしそれがキッカケでタマサイ王国がヨハマに攻めてきたときは魔人を倒したその力で助けてくれよ」
アールド王子の言葉を聞いた竜崎は勢いよく立ち上がった。座っている椅子がひっくり返るほどで、大きな声をあげて混乱している自分の頭を紐解こうと質問をぶつけてきた。
「なぎさ。お前は一体何者なんだ! アールド王子を助けた時に魔人を倒しただと! それに私を助けた時も魔人を退けた。魔人以上に戦えるその強さは何なんだ!」
「まあまあ、竜崎将軍。人に言えない事情というのは誰にもあるものだよ。なぎさ殿は信用に足る人物だ。助けてもらったからではない、リリス殿、ユニ殿を見ていれば分かる」
「なぎささぁ~ん」
何の前触れもなく、いきなり扉を開けて1人の女性が走り寄って飛びついた。緑の髪をした尻尾の生えた女性『ウタハ』が無事に役割を終え到着した。
「おかえり。ベオカ民を無事に連れてこられたんだね」
「はい。兵士に協力しもらってコツで匿(かくま)ってもらっています。領主様との話はまとまりましたかって…… あー!フクロンで声をかけてくれた……」
「あっ、あなたは食堂で仲間に失敗を擦り付けられていた…… そう。噂になっていた男の人ってなぎさくんのことだったのね」
「ウタハ、先生と知り合いだったんだ」
「そうなんです。私がフクロンで仲間から怒られているときに優しく声をかけてくれたんです。リリスさんとユニさんも声をかけてくれましたよね」
「蒔田殿とウタハ殿が知り合いだったとは中々世間も狭いものだなー。なぎさ殿これからどうするつもりかね」
「アールド王子、僕はこれからサムゲン大森林に行こうと思います」
「なぎさ! 私も連れて行って。あなたの力をこの目で見てみたいの。ずっととは言わない! サムゲン大森林の時だけでいいから」
黙っていた竜崎が必死にお願いしてきた。昔から知っているが、こんな必死になった竜崎はは見たことがなかった。
「なぎさ殿、私も一緒に行くぞ!」
「駄目なのじゃー。ユニが一緒に行くのじゃ! ずっとなぎさと離れていたから留守番はいやなのじゃ!」
「そうです。私もなぎさと一緒に行きます」
「私もなぎささんと一緒にいたいです」
「みんな。今回は留守番してもらっていいかな。今回は竜崎とアールド王子を連れていこうと思う。今回は、コツを守ってもらっていたいんだ」
「リリスさん、ユニさん、ウタハさん。コツの領主としてこの街の守護をお願いできないでしょうか」
3人が離れた場所でちょこんと丸くなり『あーだこーだ』議論している。程なくして答えが決まったのか、リリスが一つの条件を提示した。
──コツで待っている間、昔のなぎさの話を詳しく聞かせること
「皆さんの協力を得てベオカ民を救うことが出来ることに感謝します」
これまでの協力を感謝した。ベオカ民のためとはいえ僕が考え僕が決めた作戦に皆を巻き込んでいるのだから。
……それと皆にお願いしておかなければならない事がある。
「僕たちの力は他言無用にお願いします。協力してもらっている中でお願いをするのは失礼だと思うのですが、旅の目的を達成したら仲間と平和に生活したいのです」
「なぎさ殿。本当の力がどの程度か分からないが、軍隊でもかなわない魔人に1人で勝つ力は、町の1つ……いや城さえも落とすことができるだろう。その力が各国に知られれば、恐怖より利用価値が勝れば政治的問題に巻き込まれ、恐怖が勝れば命が狙われるだろう」
「なぎさくん。無理だけはしないでね。ベオカ民を命懸けで手を差し伸べる優しさに先生は感動しました! ……一つだけ忠告すると、浮気は駄目ですよ。ちゃんと1人に絞りなさいね」
「はっはっは。蒔田殿、このヨハマは一夫多妻制ですぞ! なぎさくん、養えれば何人娶(めと)っても構わないぞ」
「王子…… さっき領主が領土のことを決めていいって言ってましたよねぇ。一夫多妻制を一夫一妻に……」
なんて会話をしている中、竜崎だけは笑顔は無く真剣な表情をしていた。魔物が急に襲ってきても、慌てる事なく対処が出来るほどに緊張感をもっていた。
▽ ▽ ▽
竜崎・アールドと共にサムゲン大森林の南(コツの西)に向けて馬を走らせていた。これまで乗馬経験がなかったので、軽く手ほどきを受けてから出発した。
大地を駆け回る爽快感が気持ちを高揚させる。馬と心が通じ合ったかのような錯覚になる。流れる景色、自分の力で走っている感覚になってしまう。
「なぎさ殿。サムゲン大森林を村一つ作れるほど広げるというのはできるものなのかね」
「ええ。広げる範囲を整地して土壌改良すれば植物の成長を速められます。そこに集めた種を蒔いて、栄養剤を撒けば短い時間で森が作れるはずです」
「それを1人でやるのかね。一体どれ程の力を持っているんだなぎさ殿は」
「力は使い方次第だと思うんです。強い力は破壊を生みやすいですが、護る力として使うことも出来ます。僕は守ることに力を使っていきたいんです」
マップを見ながら予定ポイントを確認し、作戦の拠点としてログハウスを作る。竜崎の希望で訓練施設も併設した。
「それでは、作業を始めますので待っていてください」
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