第六十一話 残業


 ある男が遅くまで会社で残業をしていた。


 その時期は大きな取り引きがあり、責任者である男は帰宅する間も無い程だった……。


 残業に夢中で食事も忘れていた男は、空腹感に襲われ休憩も兼ねた買い出しに向かう。二十分程で戻った男は、いつの間にかオフィスの隅に灯りが点いていることに気付いた。


 そこに居たのは若い女……何やらブツブツと呟きならが業務を熟している様だった。



 しかし、女性がそんな遅い時間まで残業していることに違和感を感じた男。改めて確認の視線を向けた瞬間、それは起こった。

 視線を向けたとほぼ同時……女が急に立ち上り窓に向かい走り始めたのだ。


 男が止める間も無く女は窓に激突……かと思いきや、窓をすり抜け階下に姿を消す。


 オフィスは四階。落下した心配以前になぜ窓が割れていないのか……男はそれが気になって仕方がない。



 そうして窓際に近付き外を見ると、何かが上階から落下してくるのが見えた。

 それは先程の女性……落下する瞬間、確かに男と目が合い笑顔を浮かべそのまま下へ。地面に落ちる寸前で姿を消した。


 恐怖に取り憑かれた男は急いで一階の警備室に駆け込み、夜明けまで震えて過ごすことになった……。


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