第五十八話 五分の魂


 ある子供の話。



 その子供は虫を見付けると捕まえて直ぐに殺してしまう子供だった。

 昆虫の種類に関係無く、見付けたらとにかく虱潰しのように駆除していたという。


 親達は虫にも五分の魂があるのだと説いたが、何処吹く風で聞き入れない。


 そんなある日の夜、子供は寝苦しさで目が覚める。

 目を覚ますと、子供の身体中には大量の虫が這い回っていた……。


 子供の悲鳴を聞き付け駆け付けた親達は、その光景に絶句する。

 どうやって部屋の中に入ったのか……そんな疑問も残されていたが、とにかく虫を全て外に逃がし我が子を確認した。


 中には毒のある昆虫がいたらしく、子供はかなり酷いアレルギーを発症していた為に急ぎ病院へ……。

 処置が終わり安堵した家族が病院の窓を見ると……そこにも大量の虫が貼り付いていた。


 流石に反省した子供は、退院後両親と寺に向かい殺した虫の供養をすることになった。


 虫にも魂がある。だが虫は小さい。仲間を殺された虫達は復讐の為に力を合わせたのだろう……住職はそう呟いていたという。


 それ以来、子供は昆虫をやたらに殺すことは無くなった。


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