第三十八話 屋上


 その学園の屋上は厳重に立ち入り禁止にされていた。

 生徒達の間では、その原因が不確かな噂となって広がっていた。



『一つ……十年程前、屋上から生徒が転落した為立入り禁止になった』


『二つ……屋上には生徒の幽霊が出て、屋上から人を突き落とそうする』



 この噂に興味を持った数人の生徒。コッソリ職員室から鍵を盗み出し、合鍵を作り屋上への侵入を計画する。

 そうして、周囲から発見されづらい薄暗い放課後に時間を定め生徒達は屋上の探索を開始した……。



 しばらくあれこれと様子見していた生徒達。しかし、これといって何事もなかった為に屋上から出ようとしたその時──生徒達は信じられないものを見ることになる……。


 それは学園ではなく、学園から程近い病院。その屋上から人が落ちる姿がハッキリと見えたのだ。

 慌てた生徒は携帯電話で急ぎ警察に連絡。だが、連絡を受けた警察の調べでは病院で落下した者はなかったという。


 翌日──警察から報告を受けた学園側は屋上に侵入した生徒を呼び出した。携帯電話の番号、そして目撃した場所を素直に話したことで身元がバレてしまったらしい。


 呼び出したのは生徒指導の教師。怒られると覚悟をした生徒達だが、教師は言葉を荒げることもなく切々と言って聞かせる。


「あの人影はな?何故かウチの学園の屋上からだけ見えるんだ。つまり、あちらからはこちらが見ていると判っていて飛び下りている。そんな屋上に生徒を入れたらどんなことが起こるか……私は考えるだけで怖くなる。だから良いか?お前達の見たことは誰にも話すなよ?絶対に見たがるヤツが出る……何かあったらお前らの責任だからな?」


 教師に釘を刺された生徒達は、その後二度とその話をすることはなかった……。

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