第2話 ライバルはEテレ?

 同局は「7」チャンネルの前は「12」チャンネルだった。

 昭和では「12」チャンネルは教育番組の枠組みだったこともあり、テレ東は教育番組として世の中に認知されていたのだ。


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 ここ最近、どのテレビもザワつくネタが多くなった。

 公営民営問わず午後のニュースで、太陽の異常な活発が報じられる。

 太陽が何を主張しているのか、宇宙のノミ虫たる人類に理解できるわけはなく、街頭インタビューでは口々に気温上昇による不満が放送。


 そりゃ不満だって言うさ。

 誰だって言うだろ?

 何故なら気温が上がって異常気象が続き、クリスマスだというのに気温は38度と真夏日だった。


 外では地中から孵ったセミが一斉に鳴き声を上げて、一瞬の伴侶を探し回る始末。

 どのテレビ局も異常気象からなる熱中症で、病院へ搬送される患者数を、臨時ニュースとして通常番組に差し込む。

 そんな中、その流れへ抗うように通常番組を流す局があった。


 ――――――――――――Eテレだ。


 まぁ、子供向け教育番号だし子供に異常気象のことを、釈迦が説法を説くように解説しても理解はしてくれないだろうから、仕方ない。

 通常番組を流す局はEテレ以外に、もう一つあった。


 そう、知る人ぞ知る――――――――――――テレ東だ。


 テレ東はこの12月の異様な真夏日の中、午後のロードショーでクリスマス映画の定番「34丁目の奇跡」を流していた。


 この唸るような暑さで、太ったオッサンが本物のサンタかどうかなんて、どうでもよくなってくる。

 本当にブレないテレ東。


 だが、夕方のニュースでちゃんと異常気象について、報じていた。

 テレ東、一歩遅いというべきかマイペースというべきが、そのブレない姿勢と精神には敬服する。


 というより、テレ東は他局と比べて人員が少なく、突発的な有事の際、人材を割くことができないという世知辛い事情があるらしい。

 テレ東がどんな時も通常放送を続けるは、仕方のないことだったんだなぁ……。


 お正月になり窓から外を覗くと、都会に竹が自然発生したかのように、門松がおっ立てやがる。

 初詣で庶民共が神社であぐらをかき昼間から飲んだっくれる福の神へ、頭を下げる中、俺は48時間耐久ドラクエでエンディングを迎えるまで寝れまテンを実施していた。


 1年の始まりは未曽有の大災害に見舞われた。

 日本全体を震度6強の地震と超巨大台風に加え落雷の事故。

 富士山が噴火して富士の樹海は焼け野原。

 テレビをつければ連日、それぞれの災害の専門家が、渋面で解説を繰り広げる。

 専門家は皆、声の聴きとりづらいオジサンに偉そうなオジサン、白髪のオジサンにハゲたオジサンと、オジサン、オジサン、OZISANN!


 まさに地震、カミナリ、火事、オヤジ。

 すべての災害が一変にくるとは、何という不幸な令和世代。


 災害が影響して、東京は停電。

 不安な日々が続く。

 ついにスマホの電池が切れて情報は遮断された。


 3日が過ぎた、ある朝。

 電気が復旧し、とりあえずテレビのスイッチを煎れる。

 最後に変えたチャンネルはテレ東だ。


 テレ東を拝むことに重圧を感じるなんて自分でも驚く。

 決意を改めリモコンのスイッチを押す。 

 すると――――――――。


『お〜は〜! 良い子のみんな〜? おはスタの時間だよぉ〜』


 テレ東はいつも通り『おはスタ』を放送していた。

 

 はぁ〜……落ち着く。


 俺様は何気ない日常をくれるテレ東に感謝した。

 ネット民は今回の災害をB級映画から取って「トータル・ディザスター」と呼び始めた。


 トータル・ディザスター以降、世界は激変、というより異常事態が起きる。

 日本で最も冷え込む北陸地方で、体長30センチの芋虫が見つかるなど、世界を仰天させるネタが持ち切りになった。

 そしてここから、現代人の想定していた災難に対する見解を、覆す出来事が……。

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