冒険の日 ⑤-3-1

「おやかたぁ、このなまらめんこいのもっと欲しいんだけどどうと?」


「あ、はいわかりました。ポッキモン買い占めておきますね」


「マスターぁ、鉱山っぽい山は見つけたけどぉ、ちょっと遠いよぉ?」


「あー、本当ですね。でも鉱物は現地調達しないと購入では賄えないんですよねぇ。なので現地に行きます。中継所を作ってここまで運べるようにしますよ」


「マスター遠出するのか? ならば私がそーこーしゃを運転しよう。前回ので操作は覚えたぞ。任せておけ」


「マキちゃん、大丈夫ですか? 長距離運転はキツイんで代わっていただけるなら助かりますけど……」


「無論だ。私は騎士だぞ。乗り物なら全てに適性がある」


「はぁ。左様ですか。ではお願いします」


【オペレーション三匹の子豚末っ子謹製レンガハウス建立計画】の第一歩は家の周りに壁を建てることである。


そのために庭の敷地にイーコマースアプリサバンナで購入した【DIYのお父さんを応援! 簡単レンガ式たたら製鉄炉キット】を設置した。


ただ材料の鉱石類はかなりの数になるためサバンナでの購入では賄いきれない。そのため各地にドローンを飛ばし、鉱山をエリーちゃんに探してもらっていたのだ。


「じゃあオイは、おやかたが石を持ってくるまで木やら炭やらやっておくとよ」


工事責任者は着任したばかりの人形ドールトウカローサちゃん。作業員であるポッキモンシリーズの人形型ボットらを仕切ってその采配を振るう。


「わかりましたローサちゃん。宜しくお願いしますね。ミレイちゃんも留守番をお願いします」


「ん。りょ」


私が不在の間家の警備を担当するのはローサちゃんと一緒に起動した人形ドールタニキリミレイちゃんだ。


「まかせるし」「らくしょうだし」「そのかのうせいはひていできないな」「ドンだけぇー」「そろり、そろり」


そして彼女の周りで羽ばたきながらざわついている色違いのティンカーベルらは、ピクシー人形型警備偵察ボットの五徳ピク民(仁、義、智、礼、信)である。


「コスギ殿! 道案内は私に任せてほしいのであります!」


「あ、いえ大丈夫です。ナビがありますので」


「そんなコスギ殿! 私はこのあたりを飛んできたので地理に明るいでありますよ! 信じてほしいであります!」


「信じないわけではありませんが留守番をしていたほうがいいのではないかと」


「それに護衛だってできるでありますよ! いえもちろんコスギ殿ほどの手練れに護衛など必要ないとは正論でありますが、露払いは必要だと考える次第であります! コスギ殿が手ずから雑兵を始末するなど威厳に関わる問題でありますから!」


「いえ、私結構細かい仕事好きですので心配には及びませんよ」


「なっ?! コスギ殿!?」


なっ?! じゃねーんだ。お前は信用できないからつれていかねーんだよ。この場ではっきり言ってやろうか邪魔だから大人しくしてろって。とは咄嗟に脳裏に浮かんだセリフであったが私は自重した。真実は時に人を傷つけるだけで何も生み出さないという真理を私は知っているのだ大人だから。思ったことをそのまま口にするのは子供の行いである。


「なるほどそれは一理あるな。マスター。このトカゲを番犬代わりに連れて行くのも手だと思うぞ」


「へ?」


その時、置き去りにする気MAXだった私に思いがけない提案をしたのはマキちゃんだった。


「そのトカゲの魔法や体術による戦闘能力は高い。私から見て、そのトカゲはこのあたりの魔物を遥かに凌駕している。私たちと違い言葉が使えるのもこの先で何かの役に立つかもしれない」


そう。今マキちゃんが言ったように、彼女たちの言葉はどうも周りには聞こえていないらしい。めっちゃ口とか動いているのだけど、どうやら私には聞こえる声が周りには音として認識されていないようなのだ。


それを知ったのはこのトカゲこと雲雀の指摘によるものであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る