まるっと異世界の日 ④-3-1

蜥蜴だけあって温度変化に弱いのだろうか。まさか眠ってしまうとは思わなかった。普通逆なのでは。寒いと寝るのではなかったか。


蜥蜴幼女の体を拭いて洗面所に設置してある室内強制換気用の巨大ドライヤーで体全身を乾かす。


服を着せて蜥蜴幼女を抱え上げると私は地下室へと向かった。


本当なら牢屋にぶち込んでおきたいところだが、あいにく普通の家に牢屋なんてない。いかに大国アメリカといえどプールは作っても牢屋は作らないのだ。なので代わりにシェルターを使うことにした。災害時に備えた部屋ではあるが隔離しておけると言う意味では同じだろう。


犬小屋ではなく人が生活することを想定している部屋なので当然家財道具はそろっている。天上には無数のLEDライトが付けられているため地下室とは思えないくらい部屋は明るい。


最奥にあるベッドルームまで私は幼女を運んだ。この蜥蜴のバックボーンがわかるまではこいつはここに監禁だ。


私は蜥蜴幼女を残しキッチンへ。


子供の喜ぶ料理と言えばなんだろうな。


から揚げか、カレーか、ハンバーグか。


から揚げは共食いになるかもしれない。ドラゴンって鶏の亜種っぽい気がする。


カレーは香辛料が問題だ。この世界の香辛料事情が分からないうちにおいそれと出すべきではない気がする。


そういう消去法で選択は次点のハンバーグへ。


――汁物は……味噌という選択は今は無いな。アレは人を選ぶ。


ドイツの友人に味噌汁を出した時魚臭い汁だなと言われたことを思い出す。鰹節が苦手な外国人は日本人が思っているより恐らく多い。友人が鹿節をうまいうまいと言っていたのを鑑みるに食の好みはそれまで何を食べてきたかに大きく左右されると思っておくのが妥当だろう。殊にここが西洋モデルのファンタジー世界ならばなおさら日本食は地雷と考えるべきではなかろうか。日本食推しは事故る。刺身なんか狂気の沙汰。残念な結果になる可能性が微レ存どころではない。


――ここは万国共通美味しいスープのコンソメ……いやしかし。


あれ作るのは手間がかかる。ここは手堅く帝国ホテルのコーンスープを選択すべきか。チンだけど蜥蜴如きに微細な味の違いなどわかるまい。


――まぁ腹が減ってると生物は碌な事を考えないからな。尋問は腹を満たしてからに限る。


人間ダウナーな時はおいしいごはんだ。私なんか症状がひどいとそれすらも受け入れられなくなるが、そんな時は誰かがおいしいものをあーんして食べさせてくれたら堕ちなくて済んだのかも……いや、それはない。ないない。やっぱそういうのはいらないや。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る