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ロッカーの中に閉じこめられてからどのくらいたったかわからない。中から体をゆらしたり、体当たりしたり、やれることは全部やったけど、ロッカーのカギは開かなくて、僕はここから出られない。さけびすぎて、のども枯れた。もう何も見えなくなった。ドアのすきまから見えてた光はとっくに見えなくなってる。日がしずんで、もう外は夜になったんだろう。真っ暗だ。本当に真っ暗。それに、すごく寒い。二月だし、エアコンなんてついてないし。ロッカーは金属だから、さわるとすごく冷たい。だけど、僕はロッカーにさわるたび少しだけ安心する。ずっと真っ暗だと、どこからどこまでが自分なのかわからなくなるから。何も見えないけど、手をのばしたらロッカーにさわれる。そこにロッカーがあるってわかる。何もしなかったら、すごくすごく広くて真っ暗な海の中にぷかぷか浮かんでいるような気持ちになる。そのまま自分が水みたいにとけていって、広がっていくような気がする。それがすごく怖くて、僕はさっきから自分の足をさわったり顔をさわったりしている。自分がまだ人の形をしてるかどうかずっと確かめてないと怖くて変になる。ロッカーのかべに寄りかかるみたいにして立ってるけど、立ちっぱなしでもう足が棒みたいになってる。すわれるほどの広さはないけど、すわろうとしたらひざがつっかえる。ひざとお尻で突っ張るみたいにすると足が少し楽になる。ロッカーの中で身動きすると、がたがた鳴る。寒いからどうしてもふるえてしまう。すごくがたがた鳴ってる。この中は音が響きやすい。外の音が変に聞こえる。風の音みたいなのが聞こえるけど、本当に風の音なのかどうかわからない。友達の家で見た怖いゲームに出てきたゾンビとか、図書室で読んだ怖い本に出てきた人体模型とか、今までに見た怖いものが全部全部頭の中に浮かんでくる。外から何か音が聞こえるたびにビクってする。何も見えない。実はすぐそこに何かがいるかもしれない。わからない。わからないから怖い。ロッカーの外にお化けがいるかもしれない。実はロッカーの中にいるかも。手をのばしてバタバタして、ロッカー以外の何にもさわれないことに少し安心するのを何回も何回も何回もやってたけど、寒さで手も顔も冷たくなって、ロッカーにさわっているのかさわっていないのかわからなくなってきて、もう足をさわってもどこをさわっても本当にそこに足があるのか自分の体があるのかわからなくて、何も見えないしさわれないし、音だけがずっと聞こえていて、そとの小さい音もだんだん大きく聞こえてくるようになって、ロッカーのすぐ外に何かがいてぼくのほうをじっと見てるかもしれなくて、ここがロッカーの中かどうかもわからなくなってきて、音だけが聞こえて、あたまの中でずっといろんな音がなって、頭の中か外かもわからなくなって、今までに見たこわいもの全部に取り囲まれて、今にも僕のからだに誰かの手がのびてきそうで、もうぼくの体がそこにあるのかどうかもわからなくて、僕は、ああ、いやだ、やめて、さわらないで、あっちいって、いやだ、いやだ、ここはどこ、たすけて、ぼくは、どこ、いや、こわい、こわい、こわい、なに、だれ、いやだ、いや、あ、あああああ、ああああああああ


ああ




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