アンバランス

伊勢燈雅

第1話ワンパーソン

 2034年、世界初のバーチャルリアリティーゲームとして「ワンパーソン」の配信が始まった。

 

配信1日前

「新、このゲーム大枚はたいてまで買う必要あると思うか?」

「俺は欲しいよ。なんてったって世界初だぜ。」

「でも20万だぞ。そんな金あんのかよ?」

「お前と一緒にするなよ。俺は半年前から予約してバイトもしてんだぞ。」

「そんなの初耳だぞ。言ってくれたら俺もやってたのに~」

 物憂げそうに良が言った。

 俺と良は小学校からの付き合いだが、ゲームの話などはあまりしなかった。

 一年前くらいからワンパーソンの事でニュースが持ち切りになったので、その流れに乗った形になるが、俺的にはこのゲームにかなり期待を寄せていた。

 俺は運良くワンパーソンの最初の配信に応募して、当選していた。明日から配信になることは前からわかっていたが、胸の高鳴りは異常な程で、少し怖いくらいだった。

「じゃあさ、新、俺も買ったら一緒にやろうぜ。その時はしっかりサポートしてくれよ!」

「わかったよ、また明日な」

 そう言って二人は別れた。

 俺は別にゲームをめちゃくちゃやるタイプではないのだが、このゲームに限ってはやりすぎるくらいやる気がした。

 ワンパーソンの配信開始は明日の正午だったので、明日やりこむために今日は早めに寝ることにした。とは言ってもドキドキが止まらず眠りにつくまでにかなり時間がかかった。

 その夜はこれまでにないくらい綺麗な星が出ていた。

 当日

 生憎今日は日曜日なので学校はなかった。

 朝のニュースはワンパーソンのことで持ちきりだった。それもそのはず、実は今回の配信では5000人の当たったプレイヤーしかプレイできないのだ。

 今考えると、俺はすごく幸運だった。

 俺は11時に起きたので、配信まであと1時間だ。バーチャル体験の器具はかなり前に届いていたので、セッティングもかなり前に完了している。後は配信されたと同時にインストールして、起動するだけだった。

 ボーッと待ち続けていたらあっという間ににあと1分のところまで来ていた。

 俺はここから新しい世界に行くのだ。

3.2.1

 カウントダウンが終了すると同時に新はインストールし、起動した。

 「ワンパーソンへようこそ。ユーザー名を記入してください。」

 新と入力すると同時に頭の中に何かが入りこんでくるような感覚におちいった。

 数秒たつと、新は少し古風な洋館のような建物の一部屋のような場所に立っていた。

 「こんにちは新くん、ワンパーソンのマスコットキャラクターのドラだよ。よろしくね!」

 「おうよろしく!」

 「じゃあさっそく、容姿を決めよう!このままでいってもいいし、カスタムで違う姿のにもなれるよ!」

 「今の姿をベースにもできるのか?」

 「もちろんだよ!」

 と言われ、自分の容姿に金髪の髪の毛と青色の目を付けて、容姿の設定は完了した。

 「容姿が完了したら、利用規約をよく読んで、よかったら同意するを選んでね!」

 新は一通りをスクロールして細部まで行かないにしても、なんとなく眺めた。

 「どうせこんなのは決まり文句みたいのしか書かれてないからいいや。」

 一人ごとを呟いた。そして同意するを押した瞬間・・・

 「あらためてワンパーソンへようこそ!新の活躍を期待するよ!」

 そして新は「始まりの町」へ降り立った。

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アンバランス 伊勢燈雅 @jayokawa1028

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