ソビエト零細部活連邦
アル
第1話【四月十四日 午後三時二十八分~内藤省吾~】
生徒会室に呼び出された。
「来たわね。内藤省吾。映画研究会の代表ってことになってるのは、あんたよね」
「また、文句かよ。別に生徒会から部費もらってるわけじゃないし…」
生徒会室の空気の悪さに呟く。
「なんですって?」
行き遅れのオールドミスみたいな雰囲気をまとった十七歳。生徒会長、青森美園が質問の形を取った攻撃を投げてくる。こいつは絶対に結婚できない。将来は、どこかの企業でバリバリキャリアの女管理職になって、独身で高級な犬とか飼って寂しさを紛らわす未来だ。
ぼくは、その闇色の心を声音に乗せて言う。
「映画研究会は、生徒会から部費の割り当てももらっていません。自主独立であり、干渉されるいわれはありません。映画は観客に鑑賞させるものであり、観客に干渉されるものではありません」
言葉に韻を踏ませて遊んでみる。
「だったら、校外で勝手にやりなさい」
面白みのない女の子だな。本当に行き遅れるぞ。
「……」
反論もせず目もあわせずに、天井の蛍光灯を見る。今は、こいつの青白いつやつやした顔を見てるより、蛍光灯の色のほうがまだ温かみがある。
「いい?校則の部活動の部分を読むわよ。『中等部一年から、高等部二年までは、生徒会に認められた部活動のいずれかに所属しなくてはならない』『部活動の代表者は、毎年五月十日までに部活動の目的と部員五人の学年、クラス、氏名を所定の用紙に書いて生徒会に提出。部員および活動内容に変更があった際は、速やかに生徒会に届けなくてはならない』」
そんなものは知っている。去年も言われたからな。
「じゃあ映画研究会と称する集まりが、部活動の要件を満たしてないことは分かった?」
青森は手にしたシャープペンで机をコツコツと叩く。
「お前が天才だってのは分かった」
「なにを言い出すの?」
どうせ、こいつは映画研究会の味方をする気はないのだ。皮肉の一つくらい言ってもいいじゃないか……。なぁ?
「そのシャープペンで机を叩く打撃音とリズムが天才的だ。ダライ・ラマだってイラつかせられる悪魔のビートだと思うよ」
青森が眉をしかめる。こいつは去年、副会長だった時代から映画研究会のことを潰そうとしていたんだ。仇敵とはこいつのことだ。
「とにかく、今年の部活動リストには映画研究会は載せません。校内での活動も禁止、備品と言い張っているガラクタは今週中に持って帰りなさい。期日までに部室を掃除しなかったら、生徒会のほうで全部処分します」
「じゃあ、なるべくゴミを詰め込んで掃除の間、留守になる生徒会室を占拠して部室にさせてもらうよ」
「だまりなさいっ!」
ぼくの弁舌が、ついに青森に机を叩いて立ち上がらせることに成功した。小さな勝利。やーい。ばーか。ばーか。
「それにな、青森……」
青森の理屈の穴をちょっとつついてやろう。
「まだ四月だ。三年生が卒業してから二ヶ月しか経ってないだろ。三ヶ月までは廃部にならないんだろ」
青森のキツツキシャーペンが止まる。
「三年生は去年の夏から受験のために、部活停止でしょう」
「部に籍がないわけじゃないだろ」
「屁理屈を……まぁ、いいわ。どうせあと一ヶ月の命よ」
奥歯をかみ締める青森美園生徒会長。細い顎がぶっこわれるぞ。
「それだけか?じゃあな」
そう言って、居心地の悪い生徒会室を後にする。
「つ、つぎのクラブ代表さんどーぞー」
舌ったらずの下級生が次の犠牲者を呼び出す。ふと生徒会なんて辞めとけと下級生に言おうかと思うが、なにも言わずに部屋を出る。
せっかくの高校生活を生徒会などで無駄にする連中の気が知れない。生徒会なんて、学生生活の中で唯一政治的なものじゃないか。政治なんて、関係しないですごせるなら、そのほうがいい。
人として生まれたからには、文化的に生きなくてはね。
ぼくにとって文化ってのは、映画のことだ。だから、ぼくは映画研究会の会長なわけだよ。
◆◆◆◆
部室にもどると、我が同志の一人がテレビに向かっていた。映画を見ているのだろう。研究熱心な部員だ。肩までかかる黒髪が制服の襟を隠している。ほっそりとした背筋はまっすぐに伸びていて、凜としていると言っても過言じゃない。
その涼やかな後姿の向こうで、44口径のマグナム弾が腐ったゾンビの眉間に命中している。ピンク色のゼリー状の物体が骨に混じって、風船が割れるように吹っ飛ぶ。頭のない腐った肉体が数歩進んで、倒れる。
「香織。またゾンビか?」
「ゾンビよ」
同志、上原香織の隣にパイプ椅子を持ち出して座る。横顔を見る。横顔も涼やかだ。顔もスタイルも、体のつくり全体がシャープに出来ている。胸もシャープに出来ているな。丸みがどこにもない。
香織は一緒に小学校に行っていたときは、もう少し丸みがあった記憶があるのだが、小学校を卒業したあたりから、ぐんぐん手足ばかりが伸びて線の細い丸ペンで描いた少女マンガみたいな女子高生になった。
まぁ、客観的に見れば美人だ。美人の幼馴染である。
しかし現実だ。フラグは立たない。というか、こいつには異性と思われていない。普通の幼馴染とは少し違った意味で。
「たべる?パパのおみやげ」
香織が手に持った袋を差し出してくる。ビーフジャーキーだ。テレビの中ではミイラみたいなゾンビが火炎放射器でこんがり焼かれている。
「いや……いいや」
こんがり焼けるゾンビを見ながらのビーフジャーキーはなかなか食べづらい。
「そう?」
「ゾンビ好きだな」
こいつは黙ってさえいれば間違いなく知的美人なのに、ゾンビ大好きだ。読む本も、見る映画も、やるゲームもゾンビだ。
「ゾンビいいよ。最高だよ。ゾンビ。ゾンビを発明した人にはノーベル賞をあげるべきよ」
それは、ノーベル医学賞だろうか?
テレビの中で、重機関銃が炸裂する。迫り来るゾンビの腕が吹き飛び、足が吹き飛び、残った腕で地面を這い進む。その背中に銃弾が浴びせかけられ、真っ二つにちぎれる。這い進む上半身の切断面からは、腸がずるずると引きずられている。
もしゃもしゃ。
香織の小さな顎がビーフジャーキーを咀嚼する。
「おおー。いい出来だよー。いいよー。内臓も手を抜いちゃいけないよねー。さすがだよー」
手は抜いてないゾンビが腕ごと吹き飛ばされている。
「あのな、香織」
「んー」
もしゃもしゃ。
「あと、三人部員が要るんだ」
「私、要らない」
「生徒会が、映画研究会の部員が五人以上いないと認められないって言うんだ」
「私、認めてもらわなくていい」
我が同志にして幼馴染の上原香織は揺るがない。声に感情の起伏がなくなってきた。あまりいい傾向ではない。これは、香織のご機嫌が斜めってきている現れだ。
「生徒会が認めたことにならないと、香織にも二つ困ったことが起きる」
「ひとつよ」
「ふたつだよ。この部屋がなくなることと、他の部に所属しなきゃいけなくなる」
香織がこっちを見る。
「ひとつよ。この部屋がなくなるのは困る。お弁当食べるところがなくなるから」
「他のもっと人がたくさんいる部に入らなきゃいけなくもなるんだ」
香織は、そういうことが苦手だ。その理由を話せば、特別に免除してもらえる可能性は高い。でも、なるべくその事情を理由にしたくない。ぼくも、香織も、香織の両親も。
香織が無表情で、ちょっと首をかしげる。
「部活に入らないのは、校則違反よ。だけど、一つくらい校則を破ったからって、なにをされるっていうの?」
「……それは……」
そこまできて、気がついた。香織の方が、ぼくよりも実務的だった。ぼくは、校則にあるから生徒会の認めた部活動でなくてはいけないと思っていた。だけど「生徒会の認めた部活動に参加しなくてはならない」という校則を破ったからと言ってなんだろう。それで、どんな罰則があるのだろう。停学や退学になったりするような校則では一切ない。
「勝手にさせておけばいいわ。せいぜい、内申書に『協調性に欠ける』って書かれるくらいよ。それだって別にダメージなんてないわよ。その分、ちょっと成績を上げて大学入試でいい点を取れば帳消しだわ」
「そうか」
「そんなことで、生徒会室に行ってたの?」
「そうだよ」
「あのウンコ青森に呼び出されてホイホイ行ってたのね」
「こらこら、女の子の言葉遣いじゃないぞ」
やんわりたしなめてみる。多分ダメだけど。
「ファッキン省吾はウンコ眼鏡に呼び出されて、おぼえたてのチンパンジーがメスを追いかけるのと同じくらいほいほい生徒会室に行ってファックしてる間、私はひとりでゾンビを見物するハメになったのね」
ダメだったどころか、エスカレートさせた。
「ごめんちゃい」
こいつが、こうなったら謝ったほうが早い。香織がぷいっと、テレビのほうを向く。
「……」
黙ったまま、横顔を見る。美人さんが、うっとりと手榴弾で手足を四散させるゾンビを見ている。
「でも、この部屋がなくなるのは困るだろ」
「こまるわ」
「だから、あと三人」
「だれがいるの」
そういわれて、言葉に詰まる。映画研究会に入りたさそうにしている人がいないわけじゃない。むしろ、けっこうな人数がいる。あえてブロックしていると言っていい。
なにせ、香織はモテる。
すらっとした長身に、小作りな顔立ち、真っ白な肌に憂いを帯びたような切れ長の目。背の高いオードリー・ヘップバーンみたいな顔立ちにメロメロになった男子は数知れない。
その香織と同じクラブで一緒に映画を見たりする。そのシュチュエーションにあこがれて、何人も映画研究会のドアを叩いた。
特に、香織が高等部からの入試組で入ってきたときは酷かったよな。
そのときのことを思い出す。
◆◆◆◆
当時の映画研究会は、ぼくと二年生の先輩が四人。当時も廃部寸前だった。三年生の先輩たちは、部室には寄り付かず、学校の部費補助を最大限に使って映画館に行きまくっていた。ようするに、映画研究会は学校の補助と学割とレディースデーを使って映画を観るという部活だった。
中等部からこの学校に通っていたぼくだけが、映画研究会で部室に来ていた。部室でストーリーを書いたり、映画の演出の上手いところのメモをつくったりしていた。今、思えばぼっち部活だった。香織は高等部の受験入学組で、高等部の入学翌日に入部した。先輩たちは喜んだ。部費の基本補助は、部員の頭数で一人当たりいくらという計算だったからだ。ぼくは映画も観るけれど、作るほうにばかり興味があったし、香織にいたってはゾンビにしか興味がない。
余った部費は、先輩たちのチケット代になった。
そうして香織は入学早々に落ち着いて大好きなゾンビを見ながら、昼食を食べられる空間を手に入れた。
そのはずだった……。
だが一週間も経つと、映画研究会の部室がにわかに騒がしくなった。
まず、ぼくのクラスの友人が急に映画マニアになった。タイタニックのDVDを持って部室にやってきた。
「省吾。俺、映画研究会入るわー」
そう軽く言って、さわやかなイケメン笑顔をひらめかせて、そいつは部室に入ってきた。そいつが、ぼくのファーストネームを呼んだのは、そのときが初めてだ。ぼくはそいつの名前も思い出せなかった。
「そうか?」
かすかな懸念をもって、そいつを迎え入れる。
いや、そんなことよりこいつの名前、なんだっけ?中等部から何度か同じクラスになっていた気がする。いまさら名前なんて聞けない。なんだっけー。きゃー。
「来ないでください」
香織が完璧な拒絶をもって、追い出そうとする。
「あっれー。香織ちゃんも、映画好きだったんだー。きぐうだねー」
イケメンはへこたれない。にこにこと笑いながら、香織に近づいた。やめろばか、と言う暇はなかった。
「消えてください。出てってください。近づかないでください。吐き気がしてきました」
無表情に端的な嫌悪感を載せて、香織がイケメンに拒絶と事実を発射する。ぼくだから、事実を列挙しているだけだとわかるが、イケメン君にとっては罵倒だ。顔の装甲が厚いイケメン君はそれでもへこたれなかった。
「あれ?なんで、俺、そんなに嫌われちゃってんの?」
「嫌われているのは、お前のせいじゃないと思うけど、それ以上近づかないほうがいいよ」
イケメン君も被害者だ。やんわりと傷つかないように忠告する。いつものパターンで最後通告になる。ここで引いてくれないと後片付けが大変だ。
「なになに?なんでー」
ニコニコと香織の隣のパイプ椅子に座った。もうだめだ。あきらめて、掃除用具のロッカーに向かった。
「わぁっ。ちょ……」
背後で悲鳴と、びちゃびちゃという音がした。振り返ると、予想通りの光景。香織が会議机に向かって胃液と、さっきまで弁当箱に入っていた食べ物だったものを弁当箱に戻していた。
「わかっただろ。出て行け。吐き気がすると言われていたのに、無視するからだよ」
バケツとちりとり、雑巾を持ってイケメン君を追い出す。
「うぶぉ。げはっげろげろげろげろ」
その間も香織は、渡したバケツに向かって盛大に嘔吐をくりかえしていた。
最初の二週間で、ただでさえ痩せていた香織が三キロも体重を落とした。百六十八センチもあるのに体重は三十キロ台まで減った。香織目当てだったり、本当の映画好きだったりする男子生徒が映画研究会のドアをノックしては、香織がゲロにてお引取り願う。その繰り返しだった。
香織は男子に近づけない。
教師も男性教師は香織に近づき過ぎないように学校側から密かに注意を受けていると聞いた。
香織が六歳のころに、当時二歳の妹の仁美が熱を出した。お母さんが妹さんを病院に連れて行っている間に、香織は誘拐された。犯人が捕まり、香織が助け出されるまで一週間。なにがあったかはわからない。だけど香織はそれ以来、男性に近づけない。吐く。吐きまくる。ずっと一緒にいた父親と、ぼくが唯一の例外。小学校も中学校もあまり通わず過ごした。名目だけ卒業して、一般受験で去年、この学校に入ったのだ。
◆◆◆◆
「まぁ、男子はありえないからな…」
辛い昔のことを思い出して、ちょっと嫌な気分になったところでつぶやく。
「ありえないわ」
ぼくの独り言に、香織がいつもの声音に戻って答える。
「香織のクラスの女子で、だれかいない?」
「いないわ」
即答だ。
「そうなの?香織、女の子たちとは話してたりするじゃん」
「みんながこの部屋に来るのはいや」
「なんで?」
「助けに来なかったくせに」
答えになっていない。しかも、理不尽だ。
「当時は、ぼくだって六歳だよ。なにができたって言うのさ」
「……わかってる」
「わかってんじゃん。そりゃ、同情はするけどさ」
ゾンビ映画のスタッフロールが流れ始める。香織がDVDを止めて、こちらを振り向く。
「わかってるけど。省吾は助けに来なかったわ」
こんな短い言葉なのに、前後の論理が繋がってない。
「それが悪いにしても、ぼくが駄目なだけだろ。なんで、香織の友達が映画研究会に入っちゃだめなんだ?」
「省吾は女子と仲良く部活なんてしていいわけないでしょ。助けに来なかったくせに」
意味がわからないが、これを言い出されると、これ以上は食い下がれない。あきらめよう。香織がなにも映ってなくなったテレビのほうを向く。そしてつぶやく。
「女子はだめ。男子は吐き気がするからだめ」
香織の言葉は、もうぼくに向けられていない。独り言になっている。
ぼくも黙る。
沈黙。
ひらめき。
「そうだ。いいこと思いついた」
「なに?」
香織の眉間に皺がよる。
「仁美ちゃんだよ。ここの中等部に入ったんだろ。仁美ちゃんに入ってもらおうよ」
「ひとみ……?」
香織の妹の仁美ちゃんとは、昔から三人でよく遊んだ。香織が学校に行っていない間だって、三人で遊んだりもしていた。駄目な理由はひとつもない。
「仁美ちゃんならいいだろ」
「いやよ。最近、あの子おかしいから」
「まぁ、仁美ちゃんもエキセントリックなのはたしかだけど、そこもぼくは慣れているから大丈夫だよ。香織だって大丈夫だろ」
「大丈夫なのは、大丈夫だけど…」
「な。じゃあ、仁美ちゃんに話してみようぜ」
そう言って、香織を立たせて部室を出る。一年生が帰ってしまう前に、仁美ちゃんを捕まえておきたい。まぁ、家に帰れば、お向かい同士なのだけどね。
研究会の部室になっている旧放送準備室から、一年生の教室はわりと近い。階段をあがって、すぐだ。
「一のA…ここだな。いるかな」
香織をブロックしながら、一年生の教室を覗き込む。中等部一年の教室マジすげぇ。ロリっ子の詰まった箱だぞ。わーい。わーい。
「内藤ファッキン省吾は救いようのないファッキンなペド野郎ね」
「言っておくけど、ぼくはロリコンじゃないぞ」
「あっ。おにいちゃーんっ」
ぼくらを見つけた仁美ちゃんが駆け寄ってくる。香織の妹なんだから当たり前だが、美少女の部類に入る。
美少女がお兄ちゃんと呼びながら、真新しい制服姿で駆け寄ってくる。
わぁい。いくら払えばいいかな。
「くそファッキンペド省吾が興奮するから、そのファッキンな呼び方はやめなさい。仁美。つぎやったら野球の話をするわよ」
香織さんのご機嫌がナナメになった。
「や、野球の話……」
仁美ちゃんの表情が凍りつく。
すばらしい!
中学一年生で、野球の話が怖いと思えるとはすばらしい。映画研究会に入るにふさわしい同志だ。
「そう。野球はチームワークが大事なのよ」
香織がにっこりと笑う。香織も、仁美ちゃんが同志として十分な素養をもっていると確信したのだろう。
アンタッチャブルだ。一九八七年の映画だ。
その冒頭のシーンで、ロバート・デ・ニーロ扮するアル・カポネがレストランにファミリーの幹部を集めて、野球の話をするんだ。バットを持って席に着いた仲間の周りを歩きながら話す。子供のころ、グラブを買ってもらって嬉しかったと話す。野球はチームワークが大切だ。ファミリーにも結束が大事だと説く。自分たちは家族だと話す。ファミリーは助け合っているんだと。そしてバットを幹部の一人の頭に振り下ろす。こいつは仲間を売りやがったと滅多打ちにする。何度も打撃音と顔を真っ赤にしたデ・ニーロが映り、バットが血に染まっていく。印象深いシーンだ。
映画史に残る見事な演出だ。
あれがわかるとは、仁美ちゃんは同志だ。
「タワリシチ仁美ちゃん。映画研究会に入ろう」
「うん。入るよ。おに…先輩っ」
言い直しに、香織、にっこり。
「仁美。家族は助け合わなくてはいけないのよ」
「……う、うん。お姉ちゃん……わか、ってるよ。だいじょうぶ」
香織。仁美ちゃんが泣きそうな顔をしているぞ。
こうして、映画研究会の部員は三人になった。
あと二人。
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