CROSSLORD

司馬楽 みちなり

第一章 MarriageBlack

第1話 クズ達の戯れ

「ミイコ、今日は良い?」

「え?あ、うん。」


 こうして俺達夫婦は、夜の行為を始めた。


「どう?気持ちいい?」

「う、うん。良いよ?」


 ゆっくりと、ゆっくりと慈しむようにミイコに重なっていく。


 結婚して半年、夜の行為はこれで五回目だ。

 普通新婚なんて言ったら、毎日とは言わないまでも、そこそこの頻度で交わると思うけれど、ミイコは行為が余り好きではないと言い、月に1度あるかないかと言う現状だ。


 でも俺は焦っていない。


 なんと言っても愛しているから。



 ◇◆◇◆◇◆


 私には好きな人がいる。


 今の旦那と会う前から付き合っていて、それは今でも続いている。


 彼は出会った時から既婚者で、ある時私にも結婚を勧めてきた。


 私は彼が今の奥さんと別れて結婚してくれる訳じゃないんだと、とても辛い思いをしたけど、お互いに結婚していれば、私が奥さんに嫉妬する事も、彼が私に罪悪感を持つ事も軽減されると言うので、適当な人と結婚をする事にした。


「で?旦那のセックスはどうなんだ?」


 結婚して二日目に、彼と一回目のエッチを終えて、ベッドの上で聞かれた。


「してない。」

「は?」

「だから、してない。好きな人としかしたくないもん。」


 当たり前の事を聞かないで欲しい。

 私はこんな事をしているけれど、浮気性な訳じゃないし、どちらかと言えば一途だと思っている。


「マジかよ…アッハッハ!」


 彼はとても愉快そうな顔で、その瞳には優越感が浮かんでいるように見えた。


「でも旦那はしたいって言うだろ?」

「まぁ、初夜だったから。でも、私は余りそういうの好きじゃないって旦那に言ってたから。」


 私達は交際三ヶ月で、プラトニックなままスピード結婚した。


 彼はそれを聞いて、私をキツく抱きしめ、荒々しくキスをしてくる。

 彼の行為はとても激しくて、私が結婚してからとても求めてくれるようになった。

 嫉妬してくれてるのかと思うと嬉しくなって、私も以前より感じてしまう。


「ぅっ、あぅん!」

「ククッ…お前こんなに感じて、セックス大好きじゃねぇか。」

「もぅ、貴方とするのが好きなの。…んんっ!」

「でも、ミイコの口から旦那って言葉が出てくると、妙に興奮するな。」

「フフっ、変態。」

「じゃあ、旦那って言った口でくわえてくれよ。」

「しょうがないわね…んむっ」


 こうして本日二回戦が始まった。



 ◇◆◇◆◇◆


 新婚初夜、ミイコから行為を断られた俺は、申し訳なさそうにこう言われた。


「ごめんねソウくん。あれだったら外でして来ても良いから…本気になっちゃ嫌だよ?」


 浮気は良いけど本気はダメだと可愛い顔で言われ、そんな事する訳ないじゃん、と言いながら、一人の女に連絡を取った。


 彼女は俺の元カノで、結婚する前迄はセックスフレンドになっていた。


「待ってた〜!ねぇねぇ、早くしよう!」


 車で迎えに行くと、熱烈歓迎を受け、ホテルに行くまでの間、ずっと口で俺のモノを弄んでいる。


 久しぶりだからとても気持ちいいけど、運転が難しい。


 いやらしく笑いながら、興奮が抑えられないのか、くわえながら自分で触り始めた。


「バカ、ちょっとは我慢しろ。」

「んぐっ、ハァハァ、結婚するなんて言うから諦めてたんだから!ずっと欲しかったのに〜。」


 ホテルに入り、部屋の入口が閉まった瞬間、彼女は俺の唇を自分の唇で塞ぎ、舌を絡めてくる。

 絡めてくるのは舌だけではなくて、壁に身体を押し付けられ、脚まで絡めてくる。

 まるで飢えたケモノである。


 ベッドに着くまでの間、服を脱ぐのすらもどかしいと、俺はズボンを下げ、彼女はスカートを捲りあげて行為をした。一回目が終わって、漸くベッドに辿り着き、そこで二人とも全裸になった。


 彼女は俺のモノをずっとくわえながら、上目遣いで笑っている。とてもエロい。


「プハッ!で?奥さんとのエッチはどうなの?」

「どうもこうも…してない。」

「えぇ〜!…ムグッムグッ…プハッ。勿体無い。」

「お前くわえるか驚くかどっちかにしろよ。」

「話してる時間も勿体無い!死ぬほどしようね。」


 先程出したばかりだと言うのに、既に万全の体制を整えている俺の下半身を見て、彼女はいそいそと俺の上に跨った。


「あぁ!気持ちいい。奥さん宝の持ち腐れだよね。あんっ!」


 彼女は嬉しそうに感じ、そんな事を言うと、俺の唇を蹂躙する。


「俺は宝じゃねぇけどな?」


 二回戦が終わり、流石に息切れした彼女と少し話した。


「宗次郎の六回目の衝撃ったら無いのにね?」

「そうか?」

「そうだよ。それまではさぁ、なんかゆっくりしてて、気持ちいいんだけど、それはマッサージしてもらってる気持ち良さみたいな感じだったし。」

「まぁ実際そうだからな。」

「でもさぁ、これ知っちゃったら、離れられないよねぇ。」


 そう言いながら、彼女は俺のモノをまさぐり出す。


「まさか宗次郎が美衣子に惚れるなんて思わなかったよ。失敗したなぁ〜。」

「失敗って、お前は俺と結婚なんて考えられないだろうが。」

「それはそうなんだけどさぁ、でも宗次郎とはエッチしたいし。」

「ミイコと結婚出来たから、もう会うつもり無かったんだけどな。」

「一目惚れとか…そりゃね、ミイコは地味だけど、よく見ると可愛いよ?でもさぁ、結婚するから、もうセフレ止めるとか、めちゃくちゃ絶望したんだからね?あ〜ん、ムグッ。」


 会話が長続きしない。

 ヤリたくてヤリたくて仕方がないらしい。


「でもさ、あの子好きな人いるんだよ?ハムっ。」

「んっ…あぁ、それは別に良いんだけどなぁ。」

「ハァハァ…ミイコは宗次郎が知ってると思ってないけど、それ知っててミイコに拘るんだ?何処に惚れたの?」


 フェラとフェラの間に喋るんじゃねえ。


「からだ。」

「んんっ?ひゃらだ?」


 とうとう口から離す事もなく喋りだした。


「そう、身体。」

「身体目当てみたいに言うね?ちゅぱちゅぱ」

「身体目当てだからな。心は関係ない。」


 初めて動きが止まった。

 ゆっくりと口を離して、パチパチと瞬きをしながら、俺を見ている。


 俺は美衣子の身体を愛している。


「ちゃんとエッチ出来たら、多分凄い相性良いと思うんだ。」

「えぇ〜!マジでぇ?!私じゃダメ?」

「だからお前は俺と結婚なんて考えられないだろ?」

「でもぉ〜、私宗次郎と毎日エッチしたい。」

「半年の間に、お前がミイコを説得してくれよ。」

「えぇ〜…なんかこの宗次郎を知られたくないなぁ。知られたら相手してくれなくなりそうだし。」


 俺は彼女を押し倒した。

 腕を押さえつけ、唾液を交換するかのようなネットリとしたキスをし、耳を噛んだ。


「あぅん…」


 潤んだ瞳で熱い吐息を吐き、胸が大きく上下している。限界までそそり立った胸の先端を甘噛みして、彼女を見上げる。


「半年の間に、五回出来るように説得してくれたら、その間お前の相手をしてやる。」

「んんっ!あっ…ほ、ほんとぅ?」

「勿論だ。更に、今日は気絶する程してやるから、どうだ?」

「やるぅ!あぁん!ヤッてぇ!」


 何言ってるか分からない。

 そして三回戦に突入した。



 ◇◆◇◆◇◆


 宗次郎を紹介してくれた友達から、結婚後の話を聞かれて、私は正直に話した。


「だって、彼としかしたくないもん。」


 何時もなら「まぁそうだよねぇ」と言ってくれるのに、今日の彼女は少し違った。必死と言うか、なんと言えばいいのか、鬼気迫る?って感じ。


「レスは離婚の理由になるんだからね?」


 私は自分がクズだって自覚はあるけれど、彼女もこんな私の事を知って宗次郎を紹介してくれたのだから、同類だと思っている。


「ほら…その、ミイコの彼は、不倫の背徳感で気持ちよくなってるんでしょ?」

「あぁ、そういう事なんだ。最近激しいの。」

「ミイコが宗次郎としたら、もっと良くなると思うなぁ〜。ミイコも宗次郎とした後に好きな人としたら凄く感じると思うし、改めて彼の事を好きになるんじゃないかな?あ、あと彼も嫉妬するだろうし、そう言うの感じられたら、ミイコも嬉しくない?」


 うん。それは確かに魅力的だと思う。

 別に宗次郎が嫌いな訳では無いんだけど、彼の事が好き過ぎるだけなんだ。


「先ずは月に1度とかでどう?」

「う〜ん、彼と相談してみる。」


 まるで化粧品やダイエット食品の、1ヶ月お試しプランのような説得を受けて、彼とエッチをした後にベッドで聞いてみた。

 嫌がると思ってたんだけど、反対はされなかった。


「確かに、結婚していて一度もセックスしてないのは、おかしいと思われても仕方がないな。浮気調査なんかされても面倒だし…でも、月に1度だからな。お前は俺のモノなんだから。」

「うん!」


 束縛されるのも愛情を感じて、嬉しくなる。


 あぁ、私は好きでもない人に抱かれるんだ…


 そう思うと、とても興奮した。


 旦那に隠れて会うのも、刺激がある。こんな効果があるのかと、感心してしまう。

 その日のセックスは、私も燃え上がってしまった。

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