第0085話 闇奴隷商人たちの最期
「サリー。 お前さんが自分のアジトにおびき
「はい、シンさん。 この国の闇奴隷商人の
今のところは思い通りに事が進んでいますね?」
ん? 背後になんか視線を感じるな?
後ろを振り返ると、すぐ後ろの席でニヤニヤしながらこちらを見ている男と目が合った……
「何か用か?」
「いやなにね、実はその3匹のきつね族
今夜のオークションが終わった後に買って帰ろうかと思っていたんですがねぇ……
どうやら
どうです?
"3匹"だとぉ? "3人"と言え! クソ野郎が! ったく! 困ったヤツだ!
「誰がてめぇなんかに売るかっ! おととい来やがれってんだ!」
「そ、そうですか……いやぁ残念ですねぇ~。
私は
あ~あ、まさか私の他にも同じような
おしいなぁ~、これほどの
この国では
ねぇねぇ、なんとか私に売ってもらえませんかねぇ?」
ちょっと
「くどいっ! 売らねぇって言ってんだろうが! これだけは言っておくぞ?
命が
「ひぃぃぃぃぃっ! わ、分かりましたよ。 ああ!
3人の幼女は、というか
モデルとなった幼女たちがかわいかったからなぁ。
それを見て男は、ニヤニヤしながら右手を軽く幼女型ゴーレムたちに向けて振っている……きしょく悪い!
そんな男を
俺たちは、オークション会場の舞台に向かって一番左にサブリネ、その右に3人の幼女型ゴーレムたち、そして、その右に俺という順で座っているのだが、サブリネは
「ねぇねぇ。どうするんですか? やはり全員一気に『
「いや。一気にサンドワームの
「えーーっ! そんなぁ~。そんなんじゃぁつまらないじゃないですかぁ!?
ちぇっ! 激痛に "のたうち回る姿" を見たかったのになぁ。 ブーっ!」
ぶ、ブーイングだとぉ!?
「た~っぷりと苦痛を味わわせてからぶっ殺すんじゃなかったんですかぁ?」
「ああ。そうだよ。サンドワームに生きたまま喰われちまうんだぜ?
十分恐怖と苦痛を味わうだろ?」
「えーーっ!? それじゃぁつまんないよぉ! そうだ!
オークションの商品たちに
ゴーレムたちにコイツらをぶっ殺させるんですよ。 どうですぅ?
「ストーリーって……」
サリーことサブリネは目をキラキラと輝かせて返事を待っている。
「分かったよ。今回の件ではお前さんには世話になっているからなぁ……
しょうがない。ゴーレムたちに
「わーいっ! やったぁ-ーっ!」
サブリネは大喜びだ! 喜びのあまり今にも跳び上がらんばかりだ。
「おいおい。落ち着け、気付かれるだろうが!」
「す、すみません……嬉しくてつい……てへっ!」
うわ~『てへぺろ』! ……な~んか腹が立つなぁ。
この会場内には闇奴隷商人が十数名と、その
一方で……オークションにかけられる女性たちとすり替えた、彼女たちそっくりのゴーレムは全部で10体いる。
そのゴーレムたちのスペックは、外見を除いて全く同じである。 同じ身体能力と戦闘力他を持っている。
というのも、女性たちとすり替えたゴーレムたちは、すべて全く同じ"ひな形"からコピーして生成しているからだ。
ゴーレムを生成する時に、いちいち戦闘力等を"手動"で調整していては
それをコピーして外見情報だけを与えてゴーレムは生成されるのである。
そういえば一部のハニーたちはもうかなり強くなったよなぁ……
このひな形じゃもう彼女たちの練習相手にはならないかもな?
そろそろ特別チューニングした新しいひな形を用意する必要があるかもなぁ?
50人の敵に対してゴーレム10体か……
まあ、ウチのハニーたちを超える戦闘力を持つ者はいないだろうから、数としてはこれで十分だな。
この会場を除いた商館内には、他にも商館の従業員や闇奴隷商人たちが売るために連れてきた奴隷、ヤツら自身が
その中で、奴隷たちの方は基本的に殺さずにすべて解放するつもりだが、従業員の方は魂の色を見て……そうだなぁ、黄色くらいまでは生かしておいてやろうかな。
"スカイブルー" → "青色" → "緑色" → "黄色" → "オレンジ色" → "赤" → "黒"。
魂の質によってヒューマノイド種族の魂の色はこの範囲内で決まる。
右に行けば行くほど魂の
今回は黄色までは生かしておくことにしたのだ。
魂の色が"黄色"というのは、人に対してひどい裏切り行為をしたことがあるような人間である。 まあ、その程度までは許してやろうか……と思ったのだ。
色は
なんというか、
なお、善悪の判断はこの惑星の管理システムが決めた基準に
『ゴーレムたち! 今からターゲット情報を送信するから、その情報に基づいて敵を
俺が殲滅開始を指示したら、それ以後はおのおのの判断で行動せよ。
だがいいか! ターゲットはひとりも逃すな! 繰り返す! ……(同内容)』
念話で各ゴーレムに命令しておいた。
◇◇◇◇◇◇◇
まあ、実際は10体のゴーレムなんだが……
彼女たちは事前チェックの時とは異なり、今は
ベリーダンサーが着るような
それぞれの腰に巻かれた布には番号が書かれたCDくらいの大きさの丸いバッジがつけられていて、舞台に向かって、左から右に並び順で1番~10番までが記されている。
どうやら一番左の者から順に番号順でオークションにかけられていくようだ。
「さあ、それではオークションを始めます!
1番前へ! 中央まで出てこい。 さあここまで来るんだ」
オークションの司会者の男は、チラッと壇上の女性たちの方を見ると、そのように命令し、前を…つまり、客席の方を見た。
命令されても1番の番号札をつけた女性は動かない。
まあ、当然だわなぁ。 女性は……いや正確には女性型ゴーレムは俺の命令にしか
司会者は気付かずに進めようとする……
「えー、まずは1番目の商品です。 商品はダークエルフの
ざわざわざわ……
「……って、あれ? おいどうした? 早く前に出て来ないかっ!
これは命令だ! さあ早く!」
女性(型ゴーレム)は動かない……
『
俺の命令を受領したと言わんばかりに、女性型ゴーレムたち10体すべての両目が一瞬だけ金色に光ると、彼女たちは
ぎゃあぁあぁぁぁぁぁぁっ! 痛い! 痛い! 痛い! 痛い! 痛い!
まず1番のゴーレムが右手首をつかんでいた司会者の腕をもぎ取った!
激痛に司会者は絶叫して、腕がちぎれた
……うわーーっ! に、逃げろーーっ! 殺されるぞーーっ!
オークションの参加者たちはその様子を見て一瞬だけ凍り付いたが、舞台の上から女性型ゴーレムたちが次々に客席の方へと飛び降りてくるのを見て恐怖した!
言葉にならない大声を発しながら、
「あははははははっ! ひぃーーひっひっ! あーおかしっ! うーふふふ!
ひーひっひっ、上様見て! 見て! ヤツらの
サリーことサブリネは席から立ち上がると大笑いしている!
オークション会場の4カ所ある出口のひとつに、命からがらといった感じで逃げて行く闇奴隷商人たち数名の姿が目に入った……のだが……
必死の思いでたどり着いた出口の前で彼等は
ああ、なるほど! なんと出口の扉の前では無表情の女性型ゴーレムが待ち構えていたのだ! 彼女たち、ゴーレムの身体能力なら、あっという間にそこに移動しても全く不思議じゃない。
彼女たちは普通の人の何十倍ものスピードで移動可能だからだ。
闇奴隷商人たちは、その出口で待ち構えていたその女性型ゴーレムによって次々に
ぎゃあああぁぁぎゃあああぁぁぁぁぁぁっ! ぁぁぁぁっ! ……
そこかしこでゴーレムたちによる一方的な
その様子を見ていると
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーっ!」
俺とサリーことサブリネが、ゴーレムたちの一方的な
バカなヤツだ……ちゃんと警告したのになぁ。
男は幼女型ゴーレムに
男は
男の両腕を引きちぎった幼女型ゴーレムは、両足を
左手には男の右腕をそれぞれの手首の部分を持って両方の手を
うわぁぁぁーーっ! ば、化け物だぁーーっ!
ぐはっ! うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーっ!
一見すると、ただの幼女にしか見えない小さな女の子が……
その幼女が目の前で男を
……のだが、その先で待っていたのも
もはや彼等には逃げ場などはない! どう
ただ早いか遅いかだけの違いでしかない!
◇◇◇◇◇◇◆
「はぁはぁはぁはぁはぁ……な、なんてことだ!
ま、まさか、あの奴隷たちが命令に
し、信じられない! ヘルカルマ! これは一体どういうことだ?」
「はぁはぁはぁ……ま、マリファさん。 き、聞きたいのはこっちの方ですよ!
あなたの方こそ、何かご
「はぁはぁはぁ……わ、分かってたら聞くか? ボケっ!」
「はぁはぁ……す、すみません」
この国の、ある町の神殿が運営している孤児院の院長として
この闇奴隷オークション会場となった奴隷商館の主、ヘルカルマはどうやらオークション会場からは、なんとか逃げ出せたようだ。
「マリファさん。ここまで来ればもう大丈夫ですよ。 あの
「ああ……助かった! とにかく
く、くっそぅっ! もうちょっとでシオン教の
「あの状況ですよ? ひょっとしたらシンのヤツも
そうすれば結果オーライじゃないですか?
ヤツが死ねばそれで成功と言えるんじゃないんですか?」
「なるほどな。ヘルカルマ。 それもそうだな。
目的は
お前いいところに気が付いたなぁ、ヘルカルマ! ほめてやるぞ! あはははは」
「ほおぅ? ずいぶんと嬉しそうだなぁ。 一体だれが死ねば成功だって?」
「だ、誰だ! くそっ! 暗くてよく見えないぞ! まさかシン!?」
脱出通路内は、
……カツン カツン カツン……
「ヘルカルマ! 声の正体を確かめるよりもここはとにかく逃げるぞ!」
「はい! あの
その後で建物も地下通路もすべて、
…………カツン カツン…… ヒタヒタ ヒタヒタ ヒタヒタ……
ガチャン……ギギギギギギ~~っ!
扉までたどり着いたマリファとヘルカルマは、
「「そ、そんなぁ……」」
結果はご想像通りである! 扉の外、出口は
「よう、お二人さん。 ここまで逃げてこられたことは、一応ほめてやるぜ」
「「シン!?」」
シンの後ろには、10体の女性型ゴーレムと3体の幼女型ゴーレム!
そして、サリーことサブリネがいる。
「ゴーレムたち……やっちまいな!」
ざざざざっ!……という足音を立てながらゴーレムたちはシンを
ぎゃあああぁぁぁぁぁぁっ! や、やめろーーっ! ぐはっ! うぐっ!……
うわぁぁぁぁぁーーっ! た、助けてくれーっ! どはっ! うぎっ!……
マリファとヘルカルマは、ゴーレムたちによって"ボッコボコのギッタンギタン"にされて死んだ。
ただ……シンは
この時マリファという女の
…………………………
ゴーレムたちによって殺された闇奴隷商人たちの死骸は、まとめてサンドワームの巣へ、彼等が流したおびただしい量の血もすべて凍らせて死骸と一緒に転送し……
その後で商館の建物はレプリケーターを使って
当然だが地下通路の方もすべて
女性専門奴隷商館ビギャルドがあった場所は
そこに建物が建っていたことが分かるわずかな
建物があったことを知っている者からすると、
◇◇◇◇◇◆◇
ことがすべて終わるとかなり夜も
この時間では、もう開いている店もなく、野営用のテントの中でサブリネと遅めの夕食をとることにした。
夕食はサブリネのたっての願いにより
『この世界でまさか再び豚骨ラーメンが食べられるとは思いませんでした……』
彼女はそうつぶやき、泣きながら麺をすすっていたのが印象的だ。
心にジーンとくる……
彼女も俺も
『日本人だった時の記憶を持っているがゆえに、この世界での食べ物を食べる度に、日本人とはいかに
彼女はラーメンを食べながら涙を流し、しみじみとそのように語っていた。
◇◇◇◇◇◆◆
夕食をとりながらサブリネと相談して、今後はシオン神聖国にいる"おギン"の
それでサブリネにも、
俺とおギン、ノアハだけには
念話が使えないと、おギンの部下として
防具として
「え!? 感激! これは婚約指輪ですね?
ついに私も上様のフィアンセとして認められたんですね? そうですよね?」
「いやそうじゃねぇよ。 お前さんの身を守る防具だぜ、それは。
婚約指輪じゃねぇからな!」
指輪だからいけないのかなぁ……。
この指輪をもらった女性の多くが、俺からプロポーズされたと
「またまたぁ~照れなくてもいいですって! 本当は私を愛しているんでしょ?」
「あのなぁ、それは俺が守ってやりてぇ女性たちみんなに渡しているものだからな!
特別な
「ぐはっ! やられたわぁ~。 私のことを大切に思ってくれているんですよね?
今のお話だと、上様は私を守ってやりたいと思っているってことですもんね?」
「ああ、まあなぁ……今回もよくがんばってくれたしなぁ。
今ではお前さんのことを大切な仲間だと思っていることだけは確かだが……
ノアハを
サブリネは、渡した指輪を左手の薬指にはめて、左手を顔の前に持ってくると嬉しそうに手を動かしながら見ている……
「言っておくが、今後お前さんの上司になるおギンや、忍者部隊のナンバー2であるおエンにも同じ装備を渡しているが……彼女たちも婚約者じゃねぇんだからな!
指輪を渡した者がすべて俺の嫁だということではねぇから、勘違いするなよ!」
「でもさあ……敵だった私を……嫌っていたこの私を、今では大切な仲間だと思って下さっているんですよね?
それじゃぁいずれ私を嫁にしてくれる可能性だってゼロじゃないんじゃない?」
「そりゃぁまあ、その確率はゼロだとは言い切れねぇがなぁ……
お前さんが、もっともっと人の心の痛みが分かるようになって、他人に
まあ、お前さんの上司となるおギンたちをしっかり見習って
「おギンさんって人は、そんなに心が
「ああ、そうだ! おギンもおエンも望んでくれるのなら嫁にしてぇくらいのいい子たちだぜ! だから、お前さんも彼女等のもとでしっかり自分を
俺がこのように話していたとサブリネから聞いたおギンとおエンは、数日後、俺の前に二人
当然だが、俺には
おギンたちのもとで自分を
「日本で食べていたような美味しい料理が食べたいのでがんばりますっ!」
「って、そこかい!? お前さんが俺の嫁になりてぇのはっ!? ったくよぉ!」
サブリネとは夕食後、女性専門奴隷商館ビギャルドが建っていた……今は
◇◇◇◇◆◇◇
神殿に帰るともう
俺もひとっ
風呂にゆっくりと入った後、さあ寝ようと思って寝室に入って驚いた!
ベッドでは、キャル、シャル、シェルリィ、ラティ、ローラという、いつも
今日、奴隷商館から救い出したきつね族の3人の幼女、ピコナ、ナノン、アトナと俺の嫁のラフ(この子たちとキャルたち子供たちの面倒を見ていてくれたのだろうと思われる)と……
ニラモリア国で
な~んか、ほのぼのしてくるなぁ。
◇◇◇◇◆◇◆
翌朝。朝食をとるとすぐに俺は、昨日奴隷から解放した3人の幼女たちを連れて、彼女たちの母親を
"敵国に入るのですから、
それでスケさんとカクさんに
出発前に話をしている時に感じたのだが……
スケさんも、カクさんも、なんとなくテンションが高めのような気がする。
さすがに敵国に入るということで、出発前に3人の幼女たちを念のために
だたし、STRだけは強化しておかなかった。
それは母親が
STRを強化しておくと下手をすれば
俺は
そうしたのは、町へ入るための検問を通る際に生じるであろう"トラブル"を
3人の幼女の名前は、長女がピコナ、次女がナノン、三女がアトナと言い、3人は三つ子である。彼女たちは
「こ、これはひどいですわね……」
「こんな……これじゃまるで
カクさんとスケさんが思わずつぶやいた。
「おかあちゃん、どこぉ~。 ねぇ、おかあちゃん……ぐっすん」
「おかあちゃーーん!」
「ううう……いないよぉ~。 おかあちゃんはやっぱりいないよぉ~。 ぐっすん」
子供たちは母親の姿が見えず泣き出した。 かわいそうで見ていられない。
ピコナたち親子が住んでいた、家と呼ぶにはあまりにもみすぼらしい小屋のような建物の中を調べる……
…………あったぞ! きつね族女性の魂の "
子供たちにぬか喜びをさせるわけにはいかない!
落ち着け! 念のためにこの魂の『魂の履歴』を確認するんだ!
子供たち3人は
『かわいそうになぁ……もうちょっとだけ待っててね』と心の中でつぶやきながら、魂の履歴の確認作業を続ける……
確認できた! 間違いない! この子たちの母親の魂だ! やった!
これで子供たちとの約束を
この子たちの母親を
「ピコナ、ナノン、アトナ。 大丈夫だよ! 今から君たちのおかあちゃんをここに呼ぶから見ててね」
「……ぐっすん。ほんとぉ?」
「ああ。本当だよ。 だからちょっとだけ待っててね」
「「「うん! わかった!」」」
スケさんとカクさんは、二人とも目には涙をいっぱいためながら『よかった!』と言いたげだ。
二人は子供たちに
「まずは身体を 『修復!』 」
淡い緑色をした半透明な光のベールがひとつ、人の形をして俺の前に現れる。
そのベールの中で見る見るうちに身体が再生されていく……女性の身体だ。
「おっといかん!
光のベールが消えると目の前には
「「「おかあちゃん!」」」
「そうだよ。でもね。もうちょっとだけ待っててね。
おかあちゃんはまだ寝ているからね。 いいかい?」
「「「うん! まつぅ!」」」
「それでは!
目の前で、
「……うう……ん…んん……」
「「「おかあちゃんっ! おかあちゃんっ!」」」
「……んん……あれ? ピコナ、ナノン、アトナ。
おはよう。 ごめんね、
母親のテランは、どうやら
子供たちが
「「「おかあちゃんっ! おかあちゃ~~~~~んん! うわぁーーーん!」」」
子供たちはこらえきれずに母親に飛びついていった!
その様子を見ている俺とスケさん、カクさんは涙を
その時である! この
「誰だ! お前たちは!? そこで一体何をしているんだ!」
俺たちがいる小屋の外には、
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