第0077話 ユリコとザシャアに迫る危機
「ユリコさんっ!しっかりしてっ!そんなヤツの言いなりになっちゃダメっ!」
「あらま。あなたには私の魔法が
「私は神の
神の
さあユリコさんを大人しく解放しなさいっ!それがあなたの身のためですよっ!
ユリコさんは
さあ!ユリコさんを放しなさいっ!」
ユリコは目から涙をポロポロと
この目は今まで何度か見た。そう、精神支配されている者たちが見せる、苦痛と悲しみがこもったうつろな
ユリコの腰には今黒色のスーツを着た、目がつり上がっている男の手が回され、彼女の身体を男の身体に
男の周りには、ユリコと同じようにうつろな目に涙をいっぱい
女性たちは全員がベリーダンサーのような
ザシャアは心の中で『この男はもう終わりだな』と
男がユリコを精神支配した時点で既にアウトだ。ましてや、内心で嫌がっているユリコの腰に手を回して抱き寄せている……もう完全にシンの
既に男はユリコにちょっかいを出してしまっている。この男の
だが、今ここにはシンがいない……
ザシャアは
男はニヤニヤしながら目の前にいるザシャアを
「ふふふ。
後でこのユリコという女と一緒にたっぷりとかわいがってやりましょうねぇ。
さあ、
「ち、
「あなたにできますかねぇ?
この子たちはみんな私に精神支配されて従っているだけなんですよ?
神の后ともあろうお方が、罪もない者たちを斬り捨てられますかねぇ?
やれるもんならやってご覧なさいな。あははは。
さあ、みんな早く捕まえなさい!」
女性たちはジリジリとザシャアとの距離と
『ダーリン!助けてっ!』
◇◇◇◇◇◇◇
<<全知師。
最小威力の光子魚雷を準備しろ。起爆までの時間は1分にセット。
湖の
>>承知!
上空に待機している衛星より最小威力の光子魚雷を1本確保しました。
起爆タイマーを1分にセット。
ミニヨンが収集したデータに基づき湖の最深部を特定中……完了!
転送準備が完了しました。
起爆タイマーをスタートさせた後、光子魚雷を湖最深部へ転送しますか?
<<よし。やってくれっ!
>>承知!
起爆タイマーをスタート。転送!
湖最深部への光子魚雷の転送が完了しました。
起爆まで残り52秒です。
<<ありがとう。全知師。
俺たちは
ボブゥウォンッ!………ザザザザザザザーーーッ!
高さ10mほどの
だが、もちろん、シールドが展開されているため俺たちは無事だ。
津波かぁ、これソリトンだよなぁ……
大学時代の
何度か津波は押し寄せてきたのだが、
成功だな。水が引いたら下の階層に流されずに湖底に残った魔物たちの
いや、それよりも先に進むことを優先すべきか……対岸へ渡ることをまず考えるべきだな。もうゴールが見えてきたからな。ダンジョンマスターのもとへと急いだ方がいいよな。よし。そうしよう。
さてと、恐らく湖底はぬかるんでいるだろうな。まずは超低温化で凍らせるか。
魔族のハニーたちやビィヴィは言葉が分からないから、念話回線を全員に
「みんな!湖の水が引いたら、
その際に、先頭グループの者たちは、湖底だった部分を超低温化で凍らせながら進んでくれ!」
「それはどうして?」
「ミューイ。それはな。湖底だったところはぬかるんでいる可能性が高いからだ。
カチカチに凍らせた方が歩き
「あー。なるほどぉ」
地面を凍らせると
たとえ氷の坂道だって
垂直に切り立った氷の壁はさすがに二足歩行で登っていくのは無理だが、60度くらいの氷の斜面であれば二足歩行でも余裕で上っていける
第1階層……スライムがうじゃうじゃいたあの階層を凍らせた時に、その効果は実証済である。あの時、普通に歩けることにハニーたちは特に疑問を抱かなかったようだが……。
念話と普通の会話が同時に行われているが、どうやらハウリングみたいな現象は起こらないようだな?
ちょっとだけエコーがかかったように聞こえるのは……
「下の階層へ流されずに残った魔物が現れたら、各自の判断で倒してくれ!
魚鱗陣形を
"はいっ!"
現在のパーティーメンバーは……
オークドゥ、翠玉、バジリドゥ、ディープレッド、ビィヴィ、
ノアハ、ザシャア、ウェルリ、ジー、ソニアルフェ、
シェリー、ラフ、ラヴ、ミューイ、
ヴォリル、ミョリム、ラヴィッス、
ユリコ、マルルカ、マイミィ、
リガーチャ、
スサク、リクラ、トフル……
俺を除いて24人だ。これを4人ずつに分けて、6グループ作り……
三角形状の魚鱗陣形となるように、先頭に1グループ、2列目には2グループ、そして、3列目は3グループを配置してこの先を進むことにした。
なお、この魚鱗陣形は背後からの攻撃には弱い。
だからそれに
↑前方
▲
▲ ▲
▲ ▲ ▲
○ ←俺
ちょうど↑こんな感じの陣形だ。
水が抜けた湖底は複雑な地形をしている。この地形により展開できるシールドが制限される……極薄シールド以外は行動を阻害してしまうのだ。
だから、完全防御シールドの展開の方は各自の判断に
全員には
なお、パーティーメンバー全体を
これも複雑な地形の影響で全体としての行動が制限される可能性が高いからだ。
ティアラが展開する完全防御シールドは半径2mの球形の範囲に防御領域が
一方、指輪が展開する極薄シールドの方は、身体全体に体型に合わせて薄く展開されるため、仲間との密着(シールド越しではあるが……)も可能であり、移動の支障となることもない。
だから、今回のケースではこちらの方が動きやすく、適しているのだ。
この陣形で超低温化を放ちながら少し進んでみて思わぬ利点が明らかになった。
それは、超低温化を放っていくことで水の抜けた湖底だった場所の地中に
地中に潜んでいる敵の攻撃を受ける前に
途中、何度かブルードラゴンの
その際になんとなく気になり、それとなくビィヴィの表情を
それどころか、まるで彼等が倒されるのは
彼女の仲間を殺しているという罪悪感を抱かずにすんだからだ。
ちょうど今も襲ってきたブルードラゴン7匹を倒し終えたところなのだが……
やはり今回もビィヴィのことが気になり、彼女の方をチラリと見てしまった。
ビィヴィと目が合った。彼女は俺に対してニコッと笑う……。
だが、そんな彼女を見て、なんとなくかわいそうになってしまった。
彼女は優しすぎたがゆえに、戦闘を好む同族たちから
ただひとり、孤独に
この子も俺が守り、そして、絶対に幸せにすると心に
◇◇◇◇◇◇◆
俺たちは
対岸が
俺はこのまま順調に対岸までたどり着けるものだと思っていた。多分、メンバー全員がそう考えていたことであろう……
百里を行く者は九十里を半ばとす……とは、昔の人はよく言ったものだ。
別に油断していたというわけでもないのだが……思ったようには、簡単には行かなかった。そんなに甘くはなかったのである!
それは突然起こった……
ドゥンドゥドゥドゥドゥドゥドゥ……グググゴゴゴゴゴ……グラグラグラ……
「地震だ!みんな!身を守れ!」
なにやら
ガラガラガラガガガガガガガガ……ゴゴゴゴゴォォォォーッ!
ガガッ……ズガガガガガガガガガガガガ……
地面が揺れ始めて数秒後、湖底だった場所の地面が
あれよあれよという間に、第8階層の湖底だった地面は、下の階層へと落下していったのだ。俺たちはそれに巻き込まれてしまった!
最小威力の光子魚雷だったのだが、それは湖底の
それでも、俺はまだこの時点では
全員が転移能力もあるし、念話能力もある。
それにみんなは極薄シールドを展開していた。怪我をすることはないだろうし、離ればなれになってもすぐに合流できるものと考えていたのだ。
だが、この後、俺は
◇◇◇◇◇◆◇
「……シン。だめよ…そんなところを触っちゃだめ。あなたには奥さんたちがいるじゃない。…ん?はっ!?きゃぁーーっ!いやぁーっ! ファイヤーボールっ!」
ゴォーッ!ボフッ!ガァァァーーッ!……ボシュッ!
第8階層の湖底
シンのパーティーメンバーたちのほぼ全員がその崩落に巻き込まれてしまって、下の階層へと落下していったのだ。
ユリコも例外ではなく、崩落に巻き込まれて第10階層まで落下し、その途中で加わった衝撃で気を失ってしまった。
深い
一線を越える前にシンを
タコのような魔物が目の前にいて、彼女の身体をまさぐっているのだ!
ユリコは恐怖し、悲鳴を上げながらも必死でファイヤーボールをタコ型の魔物に向けて放つ!
目の前のタコに向けて放たれたファイヤーボールは、至近距離のため放たれたとほぼ同時にタコの目と目の間に当たり、タコは全身が
タコはユリコをまさぐっていた
「はぁはぁはぁはぁ……も、もうイヤ! き、気持ち悪い……」
ユリコがいる周辺はぼんやりと明るいが、すこし離れると真っ暗だ。たった今、タコ型魔物に襲われたばかりの彼女には、その暗闇の中にまだタコがうようよいるような気がしてならない。
ユリコはいるかどうかも分からない見えない敵に恐怖する……
ユリコから数mほど離れた
ユリコだ!ユリコがいる!よかった!ユリコのもとへ行こう……
「ユリコさ………」
ザシャアは、ユリコに近寄って声を掛けようとしたのだが……そのタイミングがマズかった!
「いやぁぁぁぁぁーーっ!ファイヤーボー……うっ……」
ズ……ズサッ!
タコに身体を触られて
だが、ファイヤーボールが放たれる前にユリコは再び意識を
シンがユリコとマルルカを加護する際に掛けておいた保険が……つまり、二人がシンやハニーたちに危害を加えようとしたら、その瞬間にすべての能力を失って、ただの平均的な女性になるというあの保険、イベントハンドラが実行されたのだ!
(→第050話後半参照。)
ユリコはシンの后、ザシャアを敵と認識して攻撃神術であるファイヤーボールを放とうとしたため、敵になったものと判断されてしまい、彼女のステータス等々がごく平均的な女性レベルのものへと強制的に変更されてしまったのだ。
ユリコが意識を失ったのは、変更を適用するために強制的にリブートがかかったからである。
ユリコが今度意識を取り戻した時には、彼女はシンの加護を失う。そして、彼の庇護下からも外れ、
「ゆ、ユリコさん!ユリコさんっ!しっかりなさって!ユリコさんっ!」
「……ん………んん、うーん。……はっ?ザシャアさん?」
「よ、よかった!大丈夫ですか?」
「ええ。でもなんだか身体が重くて……なんか感覚も変なの」
「えっ!?ユリコさん!
「うっ……、い、痛い……。意識を失った時にどこかにぶつけたのかしら?
修復……あれっ?治らないわ。あれ?」
「えっ?私にやらせて下さい。修復!」
ザシャアの修復神術は成功し、ユリコの
「岩にぶつけたくらいで怪我をされるとは……。
ユリコさん、極薄シールドはちゃんと展開されていますか?」
「ええ。そのつもりよ。でも、念のためにもう一度展開してみるわね」
ユリコは左手の薬指に
「あれ?どうしたのかなぁ?
「ひょっとしたら……。ユリコさん、攻撃神術は使えますか?」
「えーと。ちょっと待ってね。ファイヤーボール!…………???
えっ!?ダメっ、使えないわっ!ウインドカッターっ!……だ、ダメだわ……」
「やはりそうですか……修復神術も使えなかったので、もしやと思いましたが……
岩に頭をぶつけたショックで、神術が使えなくなってしまったのでしょうか?」
『ザシャアさん。聞こえる?』
ユリコは念話でザシャアに話しかけてみたが……ザシャアからは返事がない。
どうやら念話も使えなくなってしまったようだ。
「ザシャアさん。今あなたに念話で話しかけたのですが……」
「え?まさか……念話もだめなんですか?これは大変なことになりましたね。
とにかくダーリンと合流して見てもらった方がいいですね」
「そうね……」
その時である。ザシャアは、背後から人の気配が近づいてくるのを感じた。
どうやら数名がこちらへと近づいてくるようだ。ダーリンたちだろうか?
◇◇◇◇◇◆◆
「おやおや。派手な音がしたので様子を見に来てみたら……いやぁ~、様子を見に来て正解でしたねぇ~。こんな
そう言いながら、真っ黒なスーツを着た男が、その背後に数名の女性を
男の背後にいる女性たちの目はうつろで目には涙を浮かべているように見える。
彼女たちは精神支配でもされているのだろうかとザシャアは思った。
嫌な予感がして、ザシャアはユリコを背に
「だ、誰ですかっ、あなた方は!? 妙な気を起こすと後悔しますよ!」
「メスどもよ!
男の目が一瞬赤く光ったかのように見えた。
ザシャアは攻撃を受けるかも知れないと
「誰があなたなんかの言うことを聞きます……か? ゆ、ユリコさん!?」
ザシャアの後ろにいたユリコがふらふらと男のもとへと歩いて行ったのだ!
これはマズいと感じたザシャアはユリコの腕を取ろうとしたのだが、男は一瞬でユリコのもとへと移動して彼女の手を取り……
グイッと引き寄せたかと思うと、ユリコの腰に手を回し、ユリコの身体を自分の身体に密着させるかのように抱き寄せたのだ!
ユリコの目はうつろだ。だが、彼女の目からは涙が
ザシャアはユリコが精神支配されてしまったことを確信する。
「ユリコさんっ!しっかりしてっ!そんなヤツの言いなりになっちゃダメっ!」
◇◇◇◇◆◇◇
「いやぁ~
ザシャアには罪のない女性たちを斬り捨てることはできなかった。
女性たちに両腕を
「ふふふふふ。たまりませんねぇ。さあ、それでは身体を
全裸になるように命令されたユリコは服を脱ぐためなのか、男から少し離れ……
目から涙をボロボロと
「ユリコさん!ダメよ!しっかりして下さい!
「なにをしているのです?あなたもサッサと服を脱いで全裸になりなさい。
私の言うことを聞かないと、私のレディースたちをひとりずつ殺しますよ。
神の后ともあろう者が、
ザシャアは
グシャッ!ブシューーッ!……ドサッ!
男はザシャアがなかなか脱ぎ始めないのを見て、男の左に立っていた女性の頭を
頭を引きちぎられた女性は首元から血を
「さあさあ、グズグズしていると、またひとり
「わ、分かりました。あなたの言うことを聞きます。ですから、どうか女性たちを殺さないで下さい」
「最初から素直に従っていれば、この子は死なずに済んだのにねぇ。
あはは。まあこの子の身体にはもう
なんて
ユリコは既にゆっくりとファスナーのスライダーを下げ始めている!
最初、首元にあったファスナーのスライダーはもうヘソのあたりまで下げられてしまっているっ!ユリコの胸の谷間はハッキリと確認でき、なにかの
『ダーリン!助けてっ!助けてっ!
キャットスーツのファスナーのスライダーに手をかけながら、ザシャアは必死にシンへ念話を送り続けるのであった。
◇◇◇◇◆◇◆
「そのスーツを脱ぐ姿にはそそられますねぇ。そうして恥ずかしげに
後で……いや、今からたっぷりとかわいがってあげますからねぇ。期待していて下さいねぇ。ふふふふふ……あははははははっ!」
男はたった今殺した女性の遺体を石ころのごとく
「もう待ちきれません。私がそのスーツを
グィッ!グググッ……ブチッ!ブシューーッ!
ぎゃあああぁぁぁぁぁぁっ!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
「ふぅ。どうやら間に合ったようだな。悪ぃな、ハニー。遅くなっちまった」
「ダーリン!」
ザシャアたちが
シンはユリコへと右手を伸ばしている男のその右手首を
男の腕の根元、腕を引きちぎられた肩の部分からはすごい勢いで血が
男はあまりの痛みに
「……痛い!痛い!痛い!……れ、レディース!そ、その男を倒せ……」
「ダーリン!ユリコさんとその女性たちは男の精神支配下にあります!女性たちを殺さないで下さい!」
「分かった!」
シンはユリコを含む精神支配されている全女性をターゲット指定して……
「基本システム、シャットダウン!」
直後、ユリコと女性たち全員が意識を
「だ、ダーリン!女性たちは……」
「大丈夫だ。意識を失っているだけだ。問題ねぇよ」
シンは男をもの
◇◇◇◇◆◆◇
「おいっ!クソ野郎!
てめぇ、よくも俺の大事な女性たちにちょっかいを出してくれたなぁ?
覚悟はできているんだろうなぁ?
普通に殺されるだけですむと思うなよ?……
ぎゃあああぁぁぁぁぁぁっ!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
ん?一本引きちぎったから、
「てめぇのここが一番の
グチャッ!……ぎゃあああぁぁぁぁぁ…………
チョロチョロチョロ……
思いっきり
男は絶叫すると意識を失ってしまった……白目をむいて口から
「性犯罪者には
まあ
女性であるザシャアには股間を踏み潰されるその恐ろしさがピンとこないのか、不思議そうな顔をして俺の方を見ている。
「はぁはぁはぁ……お、おのれぇ~。よ、よくもやってくれたな。
お、思い知らせてやる!……ドラゴン化!」
地面で息も
光が消えるとなんとそこには!体長が10mほどもあろうかと思われるブラックドラゴンが現れたのだ!
その際、ドラゴンに踏み潰されそうな位置にある、殺された女性の遺体も一緒に転送することにした。どうしてそこに女性の遺体があるのかは分からなかったが、なんとなく気になったからだ。
状況から考えれば、女性はドラゴンに殺されたのは間違いないだろう。放ってはおけなかったのだ。無惨にも踏み潰させるわけにはいかない。
改めてドラゴンを見る。引きちぎられた腕も、
股間は……残念ながら不明だ。完全体のドラゴンは"それ"を必要時以外は体内に
あるいは、体長に比して…そのう……めちゃめちゃ小さい……粗チンか……。
まあ、男のアレなんて見たくもないから、見えない方がいいんだけどな。
でも……多分修復されていることだろうな。
思った通り、コイツはひひ
俺はすかさずザシャア、ユリコ、女性たち、そして、俺を守るようにシールドを展開する。ヤツは攻撃してくるに決まっているからだ。
「食らえっ!」
ゴォォォォォォォーーーーッ!
ブラックドラゴンはレッドドラゴンが放つ火炎放射がかわいらしく思えてしまうくらいの強力な火炎を放射してきたのだ!
だが、これくらいは全く問題にならない。シールドが
「どうだっ!思い知った……か…ええーーっ!?私のか、火炎放射が
「
スパーーンッ!
ぎゃあああぁぁぁぁぁぁっ!う、腕がぁ……腕がぁっ!痛い!痛い!痛い!
「はぁはぁはぁ……く、くっそうっ!お、お前は誰なんだ!」
ザシャアが、左手を腰に当て、右手でブラックドラゴンを指差しながら告げる!
「私のダーリンですよ!即ちこの世界の神様です!
私は警告しましたでしょ?ちょっかいを出すと、あなたに待っているのは地獄の苦しみを味わいながらの死のみだと。さあ!覚悟なさいっ!」
ザシャアがそう告げている間に、ブラックドラゴンの消滅したはずの右腕が元に戻っている?ここは魔物生成の材料となる
「ふふふ。神なんて怖くなどないねぇ。……デスっ!」
………………なんにも起こらない。
「へっ?ば、バカな!?私の闇魔法…
「てめぇはバカか?分かっちゃいねぇなぁ……そんなもん、神であるこの俺に通用するわけねぇだろうが?」
ブラックドラゴンの攻撃って…この程度なのか?ちょっとがっかりだなぁ……。
ヤツの攻撃など全く怖くない。問題はどう倒すかだな。
恐らくヤツの
俺の予想通りなのかちょっと試してみようかな。
「ウインドカッター
シュンシュンシュンシュン………
ぎゃあああぁぁぁぁぁぁっ!
無数のウインドカッターがブラックドラゴンへ向けて放たれた。
ドラゴンは
「はぁはぁはぁ…
当然だがシールド内にいる俺たちには全く通用しない。
「ば、バカなっ!?重力系魔法も通用しないなんて……」
「お手本を見せてやろう……強重力場100G生成!」
グブッチャッ!
さすがのブラックドラゴンも
だが、今度も
「わ、分かった。わ、私が悪かった。どうか許して欲しい」
「ダメだな。俺の大切なハニーたちにちょっかいを出したんだからなぁ。
絶対に許さん! 楽には死なせてやらないから、覚悟するんだな」
ニヤリと笑ってやった。
「ひぃぃぃぃぃっ!わ、私は
そんな私を、か、神が殺してもいいんですかねぇ?ダメでしょう?ねぇ?」
「そうか?……だが、たとえ貴重種だろうが、てめぇなんか死んだって俺は
いや逆にてめぇみてぇなクソ野郎は生かしてはおけねぇなぁ。ぶっ殺すのが世のためだぜ。 そうは思わねぇか? なぁ、ザシャア」
「はい。
「ということで……ぶっ殺す!」
「ま、待って下さい。わ、私が死んだらブラックドラゴンがいなくなるんですよ?本当にいいんですか?それで?」
「あのなぁ……てめぇ、俺が誰だか言ってみろ」
「この世の…この世の神……様で・す」
「そうだ。神だ。絶滅しようがなんだろうが、ブラックドラゴンを新たに創造することぐれぇ、この俺にはわけねぇことだっつうのっ!
俺をなめんなよ、このスットコドッコイがっ!」
「ひぃぃぃっ!ど、どうかお許しを。そこにいる女どもはみんな差し上げますからどうかそれでご
ブチッ!……
「四肢粉砕!」
ぎゃあああぁぁぁぁぁぁっ!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
「はぁはぁはぁはぁ……」
「バカか?この子たちはてめぇのモノじゃねぇっつうの!
今の言葉を聞いた以上は、もう絶対に
「ひぃぃぃぃぃっ!おゆる…し……」
グゴォォォォォォォォーーーーーーッ!
幅30m、高さ20mの烈火の壁が高速でブラックドラゴンへと向かっていく。
一瞬でブラックドラゴンがいた場所を烈火の壁がなめた。ブラックドラゴンには逃げる
烈火の壁が通り過ぎた後にはなにも残っていない……
魔石も含めてブラックドラゴンを完全に消滅させたのだった。
◇◇◇◇◆◆◆
「修復!からのぉ~
ブラックドラゴンに
精神支配をされていたユリコと女性たちは、ブラックドラゴンが消滅したことでその支配から解放されて精神支配は解けている。
「う……う…う……」
蘇生させた女性が意識を取り戻す……
「……ここは……。ううう……うわぁーーーん!」
「おお、よしよし。さあ、もう大丈夫だぞ。お前さん、
女性は俺にすがりつき泣き出したので、その頭を
「ダーリン。ここは私が……」
そう言うとザシャアが、俺にすがって泣いている女性を俺から引き
「ダーリン。ユリコさんの様子がおかしいのです。どうもダーリンの加護が消えてしまったようなのです。ユリコさんを見てあげてくれませんか?」
ユリコも呼び寄せて、彼女たちがこの階層に落下してからの話を
『し、しまった!
ユリコとマルルカに掛けておいた保険のことを完全に忘れちまってたぜ!
この子たちが敵に回っても大丈夫なように……ハニーたちを攻撃しようとするとすべての加護を消し、ステータスを一般女性レベルに落とすようにしていたんだ!
今回敵と間違えてユリコがザシャアを攻撃しようとしたことでそれが実行されちまったんだな……ふぅ~。
「あれ?シン、すごい汗ね?大丈夫?」
「ああ……ユリコが無事でよかったと思ってな。冷や汗が出ちまったぜ」
う~ん、
「今すぐ加護をし直してやるからな……」
野営用のテントを設営する。
ザシャアに、ブラックドラゴンに精神支配されていた女性たちを風呂へ案内してもらい、彼女たちには汗を流してもらうことにして……そして、その間にユリコの加護をし直すことにした。
ユリコが一般女性レベルに変更される前のステータスデータ等については、実はバックアップされている。
ソフトウェア開発に
今回はそれが
「それじゃ、ユリコ。そこのベッドに横になってくれ。
あっ!心配するなよ!やらしいことなんて一切しねぇからな。ははは。
ちゃんと分かっているぜ? どうせ『やらしいことはしないでしょうね?』とかなんとか言って俺をからかおうとしてたんだろう?ははは」
「そ、そんなことしないわよ。失礼しちゃうわね。ふ~んだ」
バックアップデータからのリストアは一瞬で終わった。
「さてと……それじゃぁ、これから加護を有効にするから、ちょっとの間だけだが意識が飛ぶからな。そこで目を閉じてリラックスしていてくれ。いいな?」
「分かったわ。どうぞ」
「よし!リブート」
「…………はっ!……ああ。力がみなぎってきたわ!ありがとう!シン!」
ユリコが突然ベッドの端に腰掛けて様子を見ていた俺に抱きついてきた。
ん?ユリコが震えている?泣いているの…か?
「うう…こ、怖かったわ。とても怖かったの。
あの男に凌辱されるんじゃないかと……うう。
ありがとう……シン。ありがとう……ううう……」
原因を作ってしまったのはこの俺だ。後ろめたい……
この子を今度こそ守ると約束しておきながら……この
「ごめんな。ユリコ。本当にごめん。……無事でよかったぁ。本当によかった」
ユリコは顔を上げ、
二人の間の引力が強まったかのように錯覚する。自然と顔が近づいていく……
二人はどちらからともなく、お互いに唇を求め合ったのだった……
◇◇◇◆◇◇◇
『ダーリン!大変ですっ!
ユリコもザシャアも今は風呂に入っている。ブラックドラゴンの精神支配を受けていた女性たちも一緒だ。
俺は野営用のテントのロビーで女性たちが出てくるのを待っていた。
そんな時にシェリーから念話が入ったのだ!
彼女にしては
『どうした、慌てて。お前さんにしては珍しいじゃねぇか?なにがあった?』
『それが……ダンジョンマスターが……』
そう言うとシェリーからの念話が
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