アウロルミア神国首都、エフデルファイ

第0016話 そしてみんなが嫁になった?

「まぁ、はいってくれ」


 ソリテアが俺とシオリが待つ俺の部屋へとやって来た。

 俺たちは彼女を部屋に通す……。


 夕食を終えて、みんなは自室じしつへともどっていった。

 今頃はみんな自室でくつろいでいるだろう。


 キャルとシャルには、神殿騎士見習いの獣人族の女性、ラフの部屋に遊びに行ってもらっている。


「それでどうだった?」


 以前ソリテアには、みんなの "本音ほんね" を聞き出すように頼んだのだが、その結果について報告に来たのだ。


 みんなは "俺の嫁になること" を本心ではどう思っているか?

 それを彼女には聞き出してもらっている。


「やはり全員がこころそこからシンさんのつまとなることを望んでいます」


「貴族のおじょうさんもか?」

「はい。 ゼヴリン・マーロウは、特に強くのぞんでいます」


 ゼヴリンは"侯爵家こうしゃくけ四女よんじょ"で、小さい頃から高度な治癒系神術が使えたことから、彼女は周囲しゅういの者たちや領民りょうみんたちから聖女せいじょと呼ばれていた。


 その能力の高さゆえに、かわいそうに彼女は、本人の意思は無視され、神子みこになることを神殿から強要きょうようされたらしい……。


 これは俺がゼヴリンと会話した時に、その話の内容から感じ取った印象いんしょうである。


 ゼヴリン自身は『意思いしはんして神子みこにされたことをこころよく思っていない』などとは一言も言っていなかったことは確かなんだが……。


 "無理矢理むりやり神子みこにされてしまった"ゼヴリンが、今度も彼女の意思とは無関係に俺の嫁になれと言われて、自身じしんうえ悲観ひかんしているのではないかとずっと考えていたから、思わずソリテアに確認してしまったのだ。


「そうか……。分かった。 ソリテア、ありがとうな。 助かったよ」


「いえ……でも……シンさんは本当にみんなをつまとしてむかえてくださるんですか?」

「ああ、もちろんだとも! 望んでくれるんなら、俺は喜んでそうするぜ!

 ……だが、何でそんなことを聞くんだ?」


統括とうかつ神官しんかんさま代官だいかんさまから『 きさきをひとりにしぼるように 』との 横槍よこやり が入ったと聞きましたので、私もふくめて、みな心配しんぱいしておりまして……」


「ははは。安心しろ! ヤツらにそれをめる権限けんげんはねぇ!

 どうするかは俺が決めることだ! みんなにもそう言ってやってくれ!」


「はい。安心しました! うれしいです。 早速さっそくみんなにつたえてきます」


 ソリテアはホッとしたといった表情を浮かべ、この場をろうとする。


「あ、ソリテア!」

「はい? 何でしょうか?」


 彼女の身体は部屋の入り口の方へ向いていたが見返みかえり、俺の表情ひょうじょうから用件ようけんはかろうとしているようだ。


「お前さんの実家じっか農家のうかだったよな?」

「はい。 そうです」


「それでな、お前さんの家族かぞくのぞめば……なんだが、お前さんの家族も、ここへ来てもらったらどうだろうかと思ってな。

 さいわい、植物しょくぶつプラント兼住居けんじゅうきょも今ならいていることだし、家族に聞いてみたらどうだろう?」


「ああ……ありがとうございます。 両親に手紙でたずねてみます!」


「手紙で聞いてたんじゃあ、時間がかってしょうがねぇだろ?

 明日にでも俺がれてってやるよ」


「はい! ありがとうございます!」


「それから、実家が農家だという他の子にも聞いてみてくれねぇか?」

「はい。 承知しょうちしました」


「そうか、じゃぁ、その子たちにも俺が家族のところに連れてってやるということを伝えてくれ」

「はい」


 ソリテアはやわらかな笑顔を浮かべながら、この部屋をった。

 俺とシオリはそんな彼女を笑顔で見送る……。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「シオリちゃん、お前さんだけには俺の本心を言う。 聞いてくれるか?」


「はい? シンさんの本心ですか?」

「ああ、明日、全員をよめというか婚約者こんやくしゃにすることについてのな」


 俺はシオリにだけは、正直に俺の考えを話すことにした。


 彼女たちが本当に自身の意思いしで俺の嫁になりたいと思っているのか、疑問ぎもんに思えて仕方しかたがなく、洗脳せんのうによるものだとの思いが払拭ふっしょくできないこと。


 それゆえ、俺は彼女たちとは『 男女の関係 』になるつもりはないということ。


 まずは、彼女たちをこの惑星の色々な場所にれてき、多様たよう価値観かちかんれさせたいと考えていて、多様な価値観に触れることで彼女等の心に変化が生まれることを期待していること。


 そして、彼女たち自身に"やりたいこと"が見つかったのなら、全力ぜんりょく応援おうえんし……

 彼女たちが "のぞみち" へとこころよく送り出してやろうと思っていること。


 ……そんなことをシオリには話した。


僭越せんえつながら……恐らく、シンさんの目論見もくろみ失敗しっぱいするでしょう。

 失礼ですが、シンさんのお考えは "エゴイズム" としか思えません。

 今の彼女たちの気持ちを否定ひていする根拠こんきょ薄弱はくじゃくです。 意味をかりねます。

 御為おためごかしではありませんか? 偽善ぎぜんです。

 今現在の・・・・彼女たちの思い・・めることこそが、 "本当の意味でのやさしさ" だと私は愚考ぐこういたします。

 彼女たちの思いをれるのか、拒絶きょぜつするのかはべつにして……

 ながすのではなく、まずは真摯しんしめることだと思います」


「彼女たちが "神殿" に洗脳せんのうされていないとれるのか?」

「はい。彼女たちの"魂の履歴りれき"をご確認いただければお分かりいただけると思います」


 シオリは続ける……


如何いかなる理由りゆうでそう思うように……神の后になりたいと思うようになったにせよ、彼女たちが幸福こうふくに思っていることを神であるあなたであれば、頭ごなしに否定ひていしてもいとお考えなのでしょうか?

 彼女たちの "幸福こうふく"、"不幸ふこう" がどういったものかを勝手かってめつけて、それをしつけようとしていらっしゃいませんか? 違いますでしょうか?

 "俺がルールだ!" を、ここでもとおされるおつもりですか?」


「うぐっ! そ、そういうつもりではねぇんだが……な」


 シオリの辛辣しんらつ批判ひはんに、俺は考えがブレる……。

 彼女がこれほど強い口調くちょうで俺に意見いけんするなんて……今までにないことだ。


 シオリが言葉をごうとした時だった……ドアがノックされる。


「はい……」


失礼しつれいいたします。 火急かきゅうにお知らせしなくてはならないことがあります」


 ドアの向こうからは聞いたことがない女性の声がした。

 その声にシオリが対応する。


「シンさん、彼女は私のものです。……ゆるします、入りなさい!」

「ははっ!」


 黒装束くろしょうぞくつつんだ女性? が物音ものおとてることなく、スッと入ってくると……

 俺たちの前にひざまずく。


「彼女は "エン" と申します。 しの部隊ぶたいムンライトの副隊長ふくたいちょうつとめるものです。

 彼女にもうしつけて、ずっと代官だいかん監視かんしさせておりました。

 ……エン、何事なにごとですか?」


「はっ! 実は代官だいかんからぬたくらみが……」


 しの部隊ぶたいムンライトの副隊長ふくたいちょう、エンからの報告内容ほうこくないようは……

 要約ようやくすると、代官だいかんきさきになれなかった神子みこねらっているというものであった。


 力尽ちからづくでも、俺にはきさきを "ひとりだけ" えらばせて……

 他の6人を自分たちの "もの" にするつもりであるということである。


 きさきになれなかった神子みこたちを仲間内なかまうち凌辱りょうじょくした上で 奴隷商人に"性奴隷せいどれい"としてわたすつもりでいるらしい。


「ご苦労様ごくろうさま。 よく知らせてくれた。 れいを言うぜ」

「はっ! もったいなきお言葉、恐縮きょうしゅくぞんじます!」


「エン、ご苦労様ごくろうさまつづ監視かんしつづけなさい」

「ははっ! 失礼します!」


 エンはまるでえるかのごとく、いなくなる。


「シンさん、どうされますか?」


「ヤツらごときが どうこうすることは できねぇだろう?

 俺は予定通よていどおり、神子みこ全員ぜんいんよめにすると宣言せんげんするぜ!

 なんかしてきたら、"ボッコボコ" にしてやるだけだ! はははははっ!」


「はい。 私はアマゾネス・オーク・クイーンに連絡れんらくって、体制たいせいととのえさせておきます」

「おう! 頼む!」


 シオリと そのもの、"エン" に悪いから言わなかったのだが……


 実はさっき代官だいかんった時に、ヤツがあまりにも"胡散臭うさんくさかった"ので、俺はヤツの会話を傍受ぼうじゅできるようにしておいたのだ!


 だから、ヤツらの計画は俺はすでに分かっていたし、その傍受ぼうじゅした内容ないようもすべて記録してある。


 ヤツらが明日の計画を話し合っている時が、ちょうど夕食時ゆうしょくどきだったので、折角せっかくめし不味まずくなってしまった。


 その "礼" もかねて、明日はヤツらを "ボッコボコ" の "ギッタンギタン" にしてやることをこころちかっていたのだ!



「話が途中とちゅうになっちまったが……よめさんのけんは、シオリちゃんの意見いけんをよくかんがえてみるわな。 忌憚きたんのない意見を聞かせてくれてありがとうな」


「いえ。 出過ですぎた真似まねをしてしまい申し訳ありません。 ちょっと熱くなってしまいました。 ぶんえた物言ものいいでした」


「いや、諌言かんげんみみさからう……だな。 耳がいたい話だったぜ。 ありがとうよ」


 シオリは、ほのかな笑みをたたえながら、だまってうなずいた。


「しかし……なんか変なんだよ」

「え?」


「俺は地球にいた時は "ただひとりの女性" だけを愛していてなぁ……

 他の女性を好きになるようなことは、絶対になかったんだが……」


「ええ……」


「シオリちゃんだとあらがえねぇかも知れねぇが……

 たとえすごい美人がぱだかってきても、俺の心はびくともしねぇ自信があったんだよ」


 シオリがほおめる。


「だからみんなから俺は、"理性りせいがスーツをあるいているようなヤツ"と揶揄やゆされていたんだがな……」


「理性がスーツを着て歩いている……ですか?」


「ああ。そうだ。 それがどうだ! こっちに来てからは、ちょっと気持ちがつうう女性がいると、なんだかすぐに好きになっちまうんだよ……。

 俺は一体いったいどうしちまったんだろう?」


「あ、なるほど。 そのことでしたら、それは……現在ご使用中のお身体からだは、今回の実験がスムーズに進むように調整ちょうせいされていますので、その影響えいきょうが大きいのかも知れません」


「な、なに?」


「通常とはことなる点がしゅとして2つあり……

 まず1つ目が、 "パッシブスキル" として "魅了みりょう" が "常時発動じょうじはつどう" しているということです。 ただし、その対象たいしょうは女性のみですが」


「えっ!?」


「そして、2つ目が、好意こういせられる女性とある程度ていど気持ちが通じ合うと、すぐに愛情を感じてしまうように "プログラミング" されていることです」


「え、えっ!? ぷ、プログラミングされている?」


「はい。そのプログラムは、シンさんの身体の "基本きほんシステムレベル" で実行されていまして……ぞくに "れっぽいひと仕様しよう" とばれる基本システムの仕様しようです」


「えーーっ!? そうなのかっ!?」


「地球時代、異性いせいにとてもモテる人がシンさんのまわりにもいたかと思いますが……

 そういう人は、決まって "パッシブスキル" として "魅了みりょう" を持っています」


「そ、そうなのか!?」


「はい。また、すぐに異性に恋をする "れっぽい人" もいたかと思いますが……

 そういった人の肉体には、決まって、 "れっぽいひと仕様しよう" の基本システムがまれているのです」


「えーーーっ!? と、ということは……

 現在の俺は "モテモテでれっぽい人仕様しよう" になっているってことなのか?」


「まぁ……ひらたく言えば……」


 なんか複雑ふくざつ心境しんきょうだ……聞かなきゃ良かったなぁ。



 ◇◇◇◇◇◇◆



 気持ちのいい朝……と言いたいが、なんか身動みうごきがりづらい……。

 ん? んんん!?


 ん!!


 昨夜は、俺の右にキャルが、キャルの右にシャルが寝ていた。

 眠りについた時には3人だけだった。


 だが……今朝けさ目がめると……


 俺はキャルの方を向いて、横向よこむきでている。

 キャルは俺の右側みぎがわ寝息ねいきてている。


 俺の左で、俺の背中せなかに顔を引っ付けるようにして寝ているのはスケさん? え?

 俺の左、腰のあたりか? いや、俺のしりの位置に顔があるのは……ソリテア!?


 え!? 俺の右側、股間こかんの位置にはインガのかお!! え、えっ!?

 俺の右側で寝ているキャルは、インガの頭をけるように足を伸ばしていた。


 キャルの右にはシャル。

 そして、シャルの右には……神殿騎士見習いの獣人族女性ラフ!? えーっ!?


 俺のベッドは、キャルとシャルの寝相ねぞうがどれだけ悪くても大丈夫なようにと……


  "スーパー、スーパーワイド キングサイズ ベッド"


 ……なので、これだけの人数が寝ていても、まだまだ余裕よゆうがある!


 余裕はあるんだけどぉ……みんな、いつのはいってきたんだぁ?


 俺は全く気付かなかった。

 さっき目を覚ますまで、こんな状態になっているとは全く気が付かなかったのだ。


 俺はみんなを起こさないように、ソーッとベッドからす。

 そして、身支度みじたくをしてから食堂しょくどうへと向かい、朝食の準備をしたのだった。



 ◇◇◇◇◇◆◇



 神殿しんでんの "謁見えっけん" は、入り口から幅広はばひろあか絨毯じゅうたんおくへとつづいている。


 入り口から見みると、正面しょうめん壁際かべぎわが他よりも3だん高い舞台ぶたいのようになっているのだが、その中央ちゅうおう玉座ぎょくざがあり、俺は今そこにすわっている。


 俺のひざの上にはキャルとシャルがすわっており、俺の右斜みぎななうしろにはシオリがひかえている。


 玉座ぎょくざがある舞台ぶたいのようになったゆかへと上がるための3だん階段かいだん……

 その前……俺から見て右側みぎがわにスケさんが、そして、左側ひだりがわにカクさんが、俺たちをまもるようにして、入り口の方を向いて立っている。


 スケさんの右斜みぎななまえには シェリーとラヴが、そして、カクさんの左斜ひだりななまえには、ラフとミューイが、あか絨毯じゅうたんあいだはさんで、たがいにかいうように左右2人ずつ分かれて立っている。


 そして、彼女たち"神殿騎士見習い"から少し離れて、彼女たちと同じように、あか絨毯じゅうたんはさんでかいうようにして神官しんかんたちがならんでいる。


 神官たちの数は……30人くらいはいるだろうか?


 きさき候補こうほ神子みこたちは、俺の正面しょうめんあか絨毯じゅうたんの上でひざまずいている。


 俺から見て正面には、ゼヴリン・マーロウ、右にソリテア、左にインガ。

 彼女たちの後ろは、右に、タチアナ、左にはヘルガ、その後ろ、右にカーラ、左にディンクがひざまずいている。


 神殿騎士試験受験生3人は、まだ、神殿関係者ではないので自室じしつ待機たいき



 キャルとシャルは俺の膝の上で、ニコニコしながらみんなを見ている。


 入り口のとびらが開かれた! むさい男が2人、ゆっくりと入ってくる。

 統括神官とうかつしんかんの アルチエ・ルフク と 代官だいかんの ムケッシュ・ジェイペズ だ!


 入り口のとびらまるさいとびらこうに神殿騎士の姿がチラリと見えた。

 代官だいかんいきかった者たちであろう。


 マップ上で確認すると、扉の向こうで待機している神殿騎士は11名。

 いずれも魂の色は黒みがかった赤色をしている。クソ野郎どもだ。


 こりゃぁ、大漁だ! アマゾネス・オークたちが喜ぶぞ。 ふふふ。


 統括神官のアルチエ・ルフクの魂の色は"青"だ!?

 この男は代官に利用されているだけのようだな。


 代官の "ムケッシュ・ジェイペズ" については言うまでもなく、ほとんど黒に近い赤である!


 きさき候補こうほ神子みこたちのうしろ、カーラとディンクからはなれること5mくらいの位置でむさい男2人はあゆみをめてひざまずくと、挨拶あいさつの言葉をつらつらとべた。


 それがわると統括神官がおごそかに儀式ぎしきおこなうことをげ……

 后候補の神子たちの経歴けいれきべていく。


 そして、いよいよ! 俺が后を選ぶ時がやって来た!


「それではこれより上様うえさまに、ここにいる神子みこたちより "おひとり" おきさきとなられるかたをおえらびいただきましょう! では、上様うえさま、お願いします」


「おう! 分かった! 俺がきさきえらぶのは……」

「はい。上様が、おきさき様として選ばれるかたは! どなたでしょうか!?」


「俺の嫁さんに なりたいひとーーっ!?」

 "はーーーーいっ!"


 きさき候補者こうほしゃである神子みこたちだけでなく、キャルにシャル、スケさん、カクさんも、そして、シェリーに、ラヴ、ラフ、ミューイ! ……


 ……んん!? し、シオリまでもが、小さく手をげている!?

 ええーいっ! 面倒めんどうだ! 全員まとめて……!!


「よし! 今、げた者、すべてを俺のよめさんにするっ!

 これに異議いぎとなえることは一切いっさい、そして、絶対ぜったいゆるさん! 以上だ!」


「お、お待ち下さい! おたわむれはしてください! それはゆるされません!」


 代官だいかん異議いぎとなえる!

 統括神官はこしかさんばかりにおどろいている。


「ほおぅ? ゆるされねぇだとぉ? てめぇ何様なにさまのつもりだ?」

「と、とにかく、おひとりだけでないとこまります!」


こまるだとぉ? だれがだ? てめぇが…だろうが? ちがうか?」


 そう言いながら俺は、キャルとシャルをシオリにあずけて、シオリに目配めくばせする。

 シオリはうなずくとキャルとシャルを連れてマンションの自室へと転移していった。


「いえ、私ではなく、このような前例ぜんれいはなく……」

「今回のこれが初めてなんだぞ? 前例なんぞあるわけねぇだろが?」


 こう言いながら、俺は神子たち、神殿騎士見習いたちを俺のそばへと転送する。

 スケさんとカクさんがけんさやからはなつ!


「んぐぐ……。 と、とにかく、お、おお、おひとりだけに……」


 俺は神術、"威圧いあつ" を代官だいかんに向かって発動はつどうする!


「だ・ま・れ! 下郎げろう!」


「ヒィーーーッ!」


 ここからコイツをめていくのだが……

 そうなると神子たちにとっては非常に不快ふかいなことを、彼女たちの耳に入れなくてはならない。


 だから、彼女たちと神殿騎士見習いたちを、まとめてマンションの1階ホールへと転送することにした。


「みんなマンションの1階ホールで待っててくれ!……転送!」


 スケさんにも聞かせたくなかったので、ここにはカクさんだけを残した。


 さてと……これで心置こころおきなくコイツを処断しょだんできる。


 その時である! 入り口のとびらいきおいよく開かれる!

 代官だいかん悲鳴ひめいにもた声を聞きつけて、わる神殿しんでん騎士きし一団いちだん乱入らんにゅうしてきたのだ!


 まぁ、たかだか11人なんだけどね……。


「お代官様だいかんさま大丈夫だいじょうぶですか!? おのれ小僧こぞう!」


 そう言うと悪神殿騎士どもは一斉いっせいに俺にりかかってきた!


 せまるヤツらをむかとうとするカクさんを制止せいしして、俺は"見えざる神の手"を12本出して代官だいかんわる神殿騎士しんでんきしどもをつかむと、彼等を持ち上げてから、ゆかへとたたきつけてやった!


 ぶべっ! ぐわはっ! げふっ!………


「修復!……浄化!」


 代官どもは、全身打撲ぜんしんだぼく複数ふくすう複雑骨折ふくざつこっせつ大量たいりょう吐血とけつしてびてしまったので、えず治療ちりょうしてやった。


 コイツらの血でゆか絨毯じゅうたんよごれてしまったので、浄化じょうかによりそれらを綺麗きれいにしておく。


 しばらくすると代官だいかんが目を覚ました……。


「おい代官だいかん! てめぇの悪巧わるだくみは "まるっと" お見通みとおしだ! ほらこれが証拠しょうこだ!」


 そう言って俺は、昨日、代官が俺との謁見えっけんあとで、側近そっきん悪巧わるだくみを話している時の記録映像を見せてやる。



/*--> ここから記録映像開始……


 ………途中省略………


「神がきさきとして選ばなかったんだぜ? つまりは、神に見捨みすてられたんだよ。

 てられたんだから、それはもうゴミだろう?

 どうせてるゴミだったら俺がもらって楽しんでも文句もんくはねぇだろう? 違うか?

 しかも、そのゴミが金にもけてくれるんだぜ? 一挙両得いっきょりょうとくじゃねぇか?」


「なんかむちゃくちゃな理屈りくつですね」


「明日は絶対に、何としてもヤツにはきさきひとりだけ・・・・・選ばせねぇとな!」

「どうしてひとりだけなんです?」


「あたりめぇだろうが! 性奴隷せいどれいおおいにしたことはねぇだろ? 違うか?」

「はぁ……」


「ヤツがきさきをひとりにしぼらず、ごねた時は、力尽ちからづくで言うことを聞かせるからな。

 俺のいきかった神殿騎士しんでんきし10人を、ちゃんとあつめておけよ!

 俺がたっぷりとかわいがった後、"ゴミ"はちゃんとお前たちに回してやるからな。

 期待していいぞ! ゲヘヘヘヘッ!」


「はぁ……」


//<-- ここまでが記録映像 --*/


「どうだ? のがれできるか?」

「……く、くそっ!」


『もしもし、クイーン! 聞こえるか? 俺だ。

 シオリから聞いてると思うが、そっちの準備はできてるかぁ?』


『はい。上様。いつでもどうぞ』


『今回はちょっとばかし人数が多くてな、全部で12人だが……大丈夫か?』

『はい。大歓迎だいかんげいです。 これで今シーズンはオスりをしなくてもみそうです。

 ありがとうございます』


『おお! それは良かったな。

 でもな、まだまだこれからもそっちへ送るヤツが出てくるかも知んねぇ……』

『はい。大丈夫です。 多い分には何とでもなりますから……』


『そうか……色々面倒めんどうけるがこれからも頼むな!』

『はい。 喜んで!』


「代官! てめぇ……俺のかわいい嫁たちを性奴隷せいどれいにしようとは……ふてぇ野郎だ!

 ただじゃおかねぇから覚悟かくごしろよ!」

「ひぃ~っ!」


「それじゃぁ、てめぇらに判決はんけつを言いわたす!

 主文しゅぶん! てめぇらを、"アマゾネス・オーク" への "にえ" のけいしょす!

 抵抗ていこう無意味むいみだ!

 凌辱りょうじょくされる者の苦しみをたっぷりと味わいながら、生きたまま食われてこい!

 以上だ! ばっははーい!!」


「ゆ、ゆるしてくだ……」

「……転送!」


 クソ代官だいかんはガタガタふるえながら消えた。


 わる神殿騎士しんでんきしたちも、恐怖きょうふに顔をらせながら消えていった。


「おい、統括神官! アルチエ・ルフクさんよぉ、おめぇ、しっかりしろや!

 あんなクソ野郎を代官だいかん任命にんめいしやがって! おめぇの目は節穴ふしあなか?」


「も、ももも、申し訳ございません。 どうか、どうか命ばかりはお助けを!

 ひぃ~っ!」


 気の小さい男だ。 ガタガタふるえている。


「おめぇの魂の色は青い、つまりは、"善人ぜんにん" だっちゅうことは分かってる。

 だから今回は大目おおめに見る。 ばつを与えようとは考えてねぇから…そうおびえるな!」

「は、ははは、はい!」


「いいか? おめぇには特別に神眼しんがんさずけてやる!

 今後は、二度とあいつのようなクソ野郎にだまされるんじゃねぇぞ!」


「は、はは、はいっ!」


「よぅし! じゃ、ちょっとこっちへ来いや! 大丈夫だ、痛ぇことはしねぇから。

 神眼しんがんさずけるだけだ。 ったく、気が小せえヤツだなぁ~!」


 統括神官、アルチエ・ルフク を加護かご神眼しんがんさずけてやった。

 ん? リブートをけなくてもいいみたいだが……ねんのためだ……。


「リブート!」


 一瞬、アルチエ・ルフクの意識が飛ぶ……。


「はっ!」


「どうだ? まわりのヤツをよ~く見てみな!

 下向したむきの矢印やじるしみたいなのが、頭の上に見えるだろ?」

「は、はい」


「その色が魂のしつを表している。 つまりは、魂のしは色を見りゃ分かるってことだ。 青から緑、黄色、オレンジ色、赤、……黒と順に、黒に近い色ほど、魂がよりわりぃことを表すんだ」


「はぁ……」


「赤い色からは、私利私欲しりしよくのために人殺しをしてることを表している。

 色は無段階むだんかいに色々な色が付けられているからな。 注意しろよ。

 今度からは、この魂の色をしっかり見て、おめぇに近寄ちかよってくるヤツの善悪ぜんあく判断はんだんするんだぞ、いいな?」


「は、ははは、はいっ! ありがとうございました!」


「おう! しっかり頼んだぜ!」


 俺はほうけたようにこちらを見ている、他の神官たちに目を向ける。


「ということで、俺は、俺のそばにいた "すべての女性" を "つま" とする。いいな?」


 "はいっ!"


 全員が一斉いっせい同意どういした。


「よぅし! じゃぁ、みんな! それぞれのもどってくれ!」


 神殿騎士を11人もアマゾネス・オークのもとへやっちまったんだっけ……


「おっと、そうだった。 わる神殿騎士しんでんきしを11人も処分しょぶんしちまったからな、至急しきゅう新規しんき採用さいようする必要があるな。 募集ぼしゅうをかけておいてくれ!

 ……アルチエ! しっかり応募おうぼしてくる人物じんぶつ見極みきわめるんだぞ!? いいな!」


「は、はいっ!」


 統括神官は緊張きんちょうしている様子ようすだ。 大丈夫かな……。

 クソ真面目まじめだからこそ、こういう反応をするんだろうけどな。



 ◇◇◇◇◇◆◆



 マンションの1階ホールへと転移してくるとみんながそろって待っていた。


「おう! 済んだぜ! みんなをよめとしてみとめさせてきたぞ。 安心しな!」


 みんなに安堵あんど表情ひょうじょうあらわれる。


代官だいかんはどうされましたか?」


 めずらしくゼヴリンが口を開いた。


「ああ、ヤツときのわる神殿騎士しんでんきしは、まとめてアマゾネス・オークへのにえにしてやったぜ」


当然とうぜんむくいですわね! 貴族きぞくとしてあのようなやからだんじてゆるせませんわ!」


「ああ、最低の人間だからな。

 今頃いまごろは、凌辱りょうじょくされる者の気持ちを、たっぷりと味わっていることだろうぜ」


「それで……その後はどうなりますの? まさか生かしておくのでは……?」


「いや、多分……だが、アマゾネス・オークにづくりにされて、生きたまま食われちまうだろうなぁ」


 みんなは想像そうぞうしたのか青くなっている。


「いけづくりってなぁにぃ?」

(うみゅ?)


 し、しまった! キャルとシャルもいたのか!


「い、生きたまま食べられるように、料理したもののことだよ」


「ふーん。でもねぇ~キャルもシャルも、おさしみはたべられないなのぉ~。

 なまざかなはNGなのよぉ~」

(こくこく!)


「そうかぁ。 でも大きくなるとね、きっと食べられるようになるよ」

「ふぅ~ん」

(ふみゅ?)


 ふぅ~、なんとか残酷ざんこくな話に持って行かずにんだな……あぶねぇあぶねぇ。


「さてと、それじゃぁ昼飯前に、ソリテアたちの両親のもとへ行ってくるか?」


 実家が農家だという神子みこは、ソリテアにヘルガ、そして、カーラである。

 みんなを両親のもとへれて行くことになった。


 彼女たちの家族に、この神殿前の植物しょくぶつプラント兼住居けんじゅうきょへの移住いじゅうすすめるためだ。


 キャルとシャルも一緒に行きたがったが、今回もラフに子守こもりを頼んだ。


 以前、口減くちべらしのために娘が娼館しょうかんに売られることもある…とソリテアから聞いている。 それで万が一にも家族が引き離される場面に出くわしたらマズいと思って、キャルとシャルを連れて行かないことにしたのである。


 キャルとシャルには、そんなシーンを……今は絶対に見せたくない。 絶対に!



 キャルもシャルもちゃんと聞き分けてくれるからありがたい。


「それじゃぁ、行ってくる。 シオリちゃん、後は頼むな。

 代官だいかん手下てしたがまだいるかも知れねぇからな、みんな外出がいしゅつひかえてくれ!」


 "はい!"


 スケさんとカクさんも連れて行くことにした。

 ソリテア、ヘルガ、カーラにスケさんとカクさん、そして、俺……

 これが今回の旅のメンバーだ。


 まずは、ソリテアの実家へと転移することにする!


「さぁ、それじゃぁ! 行こう! …… 転送!」




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