優柔不断男の学園生活
佐々木悠
第1話
高二、中肉中背、フツ面。さて、何処に俺を評価する点があるのかよく分からないが何故か昔からそれなりに友人は居た。
モテた訳では無いが男女問わず友人は居た。
感情には理由があると言うのが俺の持論だ。
金銭的など現実的な理由の他に一緒に居て楽しいや面白い等の理由が必要だ。
一緒に居て楽しい訳でも一緒にいたい訳でも無い上で親しくする場合は詐欺を疑った方がいい。
「八簾!」
「おはよう、鈴原。」
長い黒髪の美少女。俺の幼馴染にしてクラスメイトで隣の席の
「私は貴里香で良いと言ってるじゃないか。私も笹山じゃなくて下の名前で呼んでいるんだ。」
長身スレンダーで女生徒からもカッコイイと評判だが、俺から見れば周りとそうは変わらないと思う。
「鈴原、考えておく」
珍しく拗ねる鈴原を見れただけでも良しとするか。これ以上は分不相応だ。
と自分の席で呼んでいた文庫本に目を戻す。本日はディストピア的なSFだ。
「また、痴話喧嘩か?」
「そうじゃない。珍しく早いな、木下」
遅刻ギリギリに登校してくるのが常の悪友木下奏太が声を掛けてくる。
「今日は姉貴が家にいたんでな。叩き起された。」
女子大生と聞いている姉に起こされたらしい。
「結構な事じゃないか。」
「うるせぇよ、鈴原。」
このふたりは仲が悪い。揶揄う鈴原と一々反応する木下。まぁ揉める組み合わせだろう。見た目は美男美女で大変よろしいのだがな。
そんな二人をよそに目をまた手元に戻す。
結局HRギリギリまで揉めていたらしい。
そろそろ冬服から夏服に変わろうかと言う5月。長袖無しには肌寒いが日が照っていれば窓際は中々な陽気に包まれる。
とても眠たいし、古典の教師の単調な口調の授業は眠るには最適な状況だが、隣にいる鈴原がそれを許さない。
渋々起きて、四限をこなし、現在は昼休み。
昼食の時間だ。鈴原が席を離れた隙にこっそりと立ち上がり、旧校舎へと向かう。
俺だけが鍵を持っている屋上へと赴くと鍵穴に差し込む。そこで空いていることに気がつく。
「…誰が開けた?」
恐る恐る、中へ足を踏み入れると意外な人物がいた。
「中田弓美子?」
学内カーストの上位に君臨する美少女。2年A組、つまりは同じくクラスの少女の泣き顔だった。
「…誰?」
顔を下に向けて居た彼女は入ってきた俺に気が付かなかったようだ。
「俺だ。笹山八簾だ。」
「笹山?何しに来たの。」
警戒が見える。あからさまに、遠い所に対面に座る。
「いつも俺がここで飯食ってんだよ。」
それを最後に無視して、持ってきたパンと缶コーヒーを昼食に食べ始める。
「アンタさ、何も聞かないの?」
手持ち無沙汰なのか暫くして中田は口を開いた。
「聞かれたいのか?」
再び沈黙。
「…言いたい訳じゃないけど聞かれないのもちょっと。」
成程、我儘らしい。
「じゃあ、何で泣いてた?」
「アンタ、私の事をどう評価してる?」
「俺の認識で中田をどう思ってるかでいいのか?」
首肯。
「カースト上位、それなりに話し相手は多く、成績は特段良くないが普通って所か?後はモテる位しか思いつかないが。」
「よく見てんのね。話し相手、言い得て妙だわ。」
俺があえて友人や友達ではなく話し相手と言う言い方をした意味を悟ったらしい。それで怒る事もせずにといった所からそれ関連だろう。
「んで、何かされたんだろ?」
「いきなり連れてこられて、顔がちょっと可愛いからって調子に乗ってる、モテるからって自慢してるビッチって言われた。」
徐に近づいてきた彼女は俺の隣に腰を下ろし、こちらの瞳をじっと覗き込む。
痣を見て、言葉だけでなく暴力も振るわれた事が分かる。
「私は1度も彼氏を作った事は無いし、勿論、男とそういう事をした事は無い。何で私がこんな目に。」
教室の木下からLINEが届く。曰く、もう1人のカースト上位者、河合八枝がいきなり彼氏を平手打ちしたらしい。揉め事の原因は彼氏の太河大輝が彼女の河合が居ながら、別の女に告白した事。読めてきた。
「中田、太河に告白されたか?」
「……何でそれを?」
「教室が大荒れだそうだ。」
そう言うと俺は屋上に寝転び襲いかかる睡魔に意識を投げ出した。
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