日常

杉将

日常

 部屋の電球を取り替えると、微かに埃が舞った。少し前に買った河童の置物が、その埃を受け止めていた。そのおかげで、太宰治全集には埃が落ちなかった。そんな風に脚立の上から埃の動きを見ていると、僕のスマートフォンからLOVEマシーンが流れた。そうだ、アラームを設定していたのだ。僕のアラームの音がLOVEマシーンだということは、僕しか知らない。僕は脚立から降りて、机に置いていたスマートフォンを取り上げ、アラームを止めた。ふと足元を見ると、犬のマコトが舌を出して僕を見ている。散歩の時間なのだ。アラームを設定していたのは、マコトの機嫌を損ねないためだった。僕は、よしわかった、という意思表示のために、マコトの頭を撫でようとした。そうしてマコトの頭を見てみると、小さな埃が一つ、乗っかっていた。マコトの目は、キラキラしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

日常 杉将 @mametarou0

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る