しかし、俺を連れて行け

ディージィーアール

第一章 しかし、オレを連れて行け

第1話 売る、売らない

「君のは、不謹慎だが、不健全では無い。アドバイスとしては──を──しなさい」

「不適切でも無いとか言えー」

 ぐうぐう寝ている。ベッドの上での激しい寝言だ。そう、夢魔の彼女たちの禁止を喰らった筈の夢のオーダーのお店、これに行って来ての顛末だ。その彼女達もいる。

 ぐぅがぁぐぅ。

 幾ら禁止を喰らっても、アクセルの街から飛び出せ無い現代っ子でも有った訳だ。『体験出来なかったものを、是非!』残った証拠はこれだ。メモ書きが残っている。

 夢魔の彼女達は正座し、転生者らしく彼に魔法が効かないからと事の次第を話し「大勢でおこなった」とたった一言ぽつりと囁く。異様にセクシーな事で今まで数多くの事を許してもらって来たに違い無い。ばれても。手法としては寝ている顧客の部屋に忍び込むのだ。ここら辺からして、ただでさえかわいい彼女達の美貌、売りと魔法をかけるために顧客に近付き魔法の内容は夢自体をコントロールする。使ってはいない香水の匂いがしそうな連中、夢魔の彼女達の存在が爪の先から髪の毛の先まで手入れが行き届きツヤツヤピカピカしてサラサラと動きに追随し、ついて来て風になびくのが美貌を日頃からピーアールと宣伝に、店の評判と知名度を上げる結果となっている。

 一介に皆、美貌の店のスタッフ達は下を向き、正座をしている。かわいいそれでも。と男なら言うだろう。出来栄えは素晴らしい。

 情報を聞き出し、対策を講じる。気付いた時には、夢の中へ大冒険のダイブに出た先だった。何が何でも寝ている人間を起こすには、『バニル』彼しかいない。装着したら、共に夢の世界へ深く引きずり込まれ熟睡。深く眠りについた彼から喋りだした。寝言だ。

 彼の持つ特性を生かし、悪魔の部分、バニル本体で有る仮面の装着者に激痛を与える。「救助」と言って呼び出しから寝ているサトウカズマ本人に装着したら、救助するはずのバニルまで、寝てしまい、冒頭の顛末という訳だ。

「どうなっているのよ?」

 喋る。

 女神の一瞥も虚空に響く。何だか虚しい。



 ──少し前──

 サトウカズマ、そう呼ばれてこっちのアクセルの街でも久しい。占い師という奴に声をかけられた。

 そう、俺って言うのはこう言う時に頭が良い。頭が回る点は、これだ。まず、夢の世界とわかるために、店の半券をまるで地図のように、わかる事。オーダーを忘れるのが夢の世界、記憶が繋がらないからこその失敗を思い、過去の改善を繰り返しイメージで繰り返し続けた。過去のパターンに対し、現状維持では無い。徹底的改善を受けた結果こうだ。

「俺のオーダーを持つ奴がいるか?『邪魔されない。絶対』これが、大事だ」

 フハハと帝王のように笑っていたら、アクセルの街ではまず見ない、嫌、出来るやつに頼まなかった行商の占い師と言う奴に出会った。露店に店を出し、何だかお祭りだ。良心的だろうと店主の顔を覗き込む。すると、運命学的な本屋の一角でありそうだった言葉が飛んで来た。

「あんたは、隠れた才能を知っているかい?自身に眠る真実ってヤツをさ。しかし、何だね?才能の割には称賛を受けた回数があまりにも無いね?例えて言うなら二流だからここまでしか言えないよ」


 夢だ。矢張り夢だ。しかし、良い。こうでなくっちゃ。しっかりと第二のワードは、決めていた通りに仕事をする。『持って帰れる。決して無駄にはならない』これは、某ゲームがよぎった事によるそこからの出典だ。強い。極めて強い。冴えていると、ワクワクと浮き足立つ。お金はバッチリ持っている。

 何かを売る売らない程度にしか思っていなかったと言い換えたくなる程、「売る」と「売らない」が頭の中で選択肢として連呼した。

 現実との連帯感か──同じ額だ。ポケットには余裕で冒険を行えるくらいの額は有るが、カズマは武器は所持して無い。久しぶりの敵の居ない世界も、満喫しつつ、頼りになる程初めての体験で彼の表現で「普通の世界」だった。前提としてこれを、踏まえつつ考えるのを止める。

 良いような気がする。こう、思ったからだ。足を止めたのも俺だ。決断した。

「よろしくお願いします。是非とも、続きを」

「ちょっと多いよ。調度払いな」

 よく見ると、ナナメに金額が見えており、ちょっとだけ多かった。正しくするのは大事な事だ。店主は老婆であり、厚手のローブが続きのためにと集中しだす。老婆は占い師らしく、全身型のピンクと言う何ともお祭りに合わせたドレスコードと言った感だ。指先の指示の通り、空白の欄に名前を書いた。サトウカズマと本当の事を思いのほか、綺麗な字でコントロールして、書けてしまう。

「うん、称賛と言うかはっきり言うとあんたはその場でのアドリブ感って奴が非常に良い。ついでに言うと自分では無い状態、つまりこれは演技のことだね。これが、思いの外グレートなんだよ。グレードが高いんじゃ無いかい?普段の自分じゃ無い自分を演出出来ると強い。しかし、これはオトコだね。家では案外ぐうたらなものさ。しかし、窮地を救うぐらいのエネルギーって言うか運命的働きが有るんだがね。努力によるものなんだよ。わかるかい?決断として、それを買わなきゃ、交易で爆発的儲けを出す事は出来ない。うーん、若い才能だよね」

 意外と合っている事に途中から、びびってしまう。と、いうかボクはそういう人間だったのか?なるほど。と深く頷いてしまう。目の前の店主の圧倒的自信にひれ伏しているだけなのだが、何せここは夢の中。『持って帰れる。決して無駄にはならない』オーダーを信じようと思う。しかし、満足した。

「ありがとうございました」

 こう言って、台に手を置いてしまう。客としては態度が悪いが感涙の出来だ。オトコなんだよなっオレこう言う満足感があるもので、少々堪えられない。

「ついでに言うとね。キミ見たいのは仲間がいると良いことがある。孤独を望むんだがね。ユニークな逸材ってのは、孤独を好み、格好がつくんだがね」

 店主は、プロらしくもう、集中を解いた後だ。この集中はあのお店と、同じ型かも知れないと脳裏に過ぎる禁止のイメージを確認しつつ、しかし、プロであったと満足して、店の前を横切る形で、次の目的地へ向かおうと思う。しかし、祭りだ。こんな物滅多に無い。これは、情報を得て楽しんだ者の勝ちだ。何せ、今度こそ。『夢の中』だからな。こう思う。半券状態のオーダーメイドの文章、直筆で嫌でも現実世界への記憶へのアクセスこれこそ、永年温めてきた必死に守り抜いてきた秘密、知力だ。ばれる訳には行かない。


 夢の中のお祭りなんて不思議なものだ。アイテムも摩訶不思議なものがここぞとばかりに、売っている。取り揃えてあるのは、気狂いになっても欲しい物ばかりだ。心の隅を突くこんな物が欲しかったと言う展開、先ず「伝説の剣への交換チケット」が目に入る。なるほど、流石、伝説の剣欲しかったよ。では無く、ここには無い。重要な設備で保管してある。これが、大事だ。すぐには名前が出ないが、会えばきっと思い出す程度なのは、要求と言うダメージだったのだろう。宙空を向きそう思う。夜空が眼前に広がりつつ、安全な範囲での細かい花火が飛び交う。これはこれで綺麗だ。主税を凝らしていながら……気が遠くなりそうな、感覚と感動を得る。これは安全が為せるものだ。

 次にゆっくりと大きくなってくるのは祝うためのまるで、と言った感の音楽だ。確かに懐に余裕があれば、とは思うが素直に楽しんだ方が良いだろうと、音楽の力を思い知る。

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