第四話 元・《魔王》様、ヤバい奴と再会する
……何度見直しても、俺の筆記試験の点数は〇のままであった。
にもかかわらず、俺は主席合格の扱いになっている。
これはどういうことだ? ていうか、〇点の
わけもわからず、イリーナ共々首を
「やぁやぁキミ達。合格おめでとう!」
悲喜こもごもな受験生の集団の中に、プラチナブロンドの
「ついてきなよ。学園長が今回の結果について説明してくれるようだから、さ」
ジェシカに付き従いながら移動し、学園長室に入った、その瞬間。
「アード君! 君は天才だ! いや、天才どころの
入室した矢先、ゴルド伯爵が
「……申し訳ありません、学園長。おっしゃることの意図が
「あ、あぁ。うむ。すまんな、年
「アード君。君の筆記試験の点数について、じゃが」
「えぇ。〇点、ですよね? 率直に申し上げますと、予想外の結果なのですが」
「ふむ……ちょっと聞いておきたいのじゃが、何を思ってあのような解答を?」
「問題があまりにも簡単すぎましたので、引っかけ問題か何かかと」
「簡単すぎる、か。一応、我が校の筆記は世界的にも最難関と言われているんじゃがのう」
苦笑するゴルドに、俺は首を傾げた。最難関? あんな三歳児でも解けそうなものが?
「まぁ、ともあれ。君の解答は全て
ゴルドの
「いったい何をどうすればあのような発想が出てくるのかね!?
そして、ゴルドは興奮したまま結論づけた。
「君の解答はテストとして見れば〇点じゃが、魔法学の論文として見れば満点どころではない! これを学会に発表すれば世界に
俺の両手を
「ふっふ~ん! そうよ! アードは
イリーナちゃん、マジ可愛い。
合格が決まってからすぐ、学生
俺は主席合格者だが、入学式にて
これはありがたいことだった。出る
しかし、イリーナにはそれが気に入らなかったらしい。
「なんでアードが
さっきから俺の隣でぶつくさと呟いている。
ともあれ、入学式に集中した。美人な生徒会長の挨拶だとか、四大
そして入学式の最後。学園長・ゴルド伯爵のスピーチが始まった。
「さて、新入生諸君。君達は極めて厳しい試験を
うむ。ゴルドの言うとおり、俺達はひよっこもいいところだ。ゆえに、ここはゴールではなく通過点。ちゃんと気を引き
「しかしながら。今年の新入生には、ひよっこに
……は? ちょっと待て。どうした学園長? なぜこちらを見る?
「ふふんっ! 学園長も
いや、イリーナちゃん? なぜテンションを上げて──
「行くわよ、アードっ! あたし達の
「はぁっ!?」引っ張られる。イリーナに引っ張られ、俺は無理やり壇上に立たされた。
ゴルドはそんな俺の
「この少年の名は、アード・メテオール! そしてこの少女の名は、イリーナ・リッツ・ド・オールハイド! これだけでも理解できるだろう!? 諸君!」
ゴルドの問いかけに、場がざわついた。
「メテオール?」「オールハイド?」「おい、まさか……」「う、
「そうっ! この二人は何を
解答を
「マ、マジかよっ!?」
「あの大
「ま、まさか、大英雄のご一族と共に学べる日が来るだなんて……!」
我が両親は
貴族の子供達は、多くがマイナスの反応を見せた。
「大魔導士といえども、
「
これは、非常に
今の俺は単なる村人であるからして、前世みたくいじめを受けたならどうにもできない。
退学後のお礼参りだって、できはしないのだ。
そして今。あまりにも悪目立ちしまくっている俺は、一部の生徒達に着々と敵視されていることだろう。このままでは転生した意味がなくなってしまう。
危機感を覚えた俺は、ゴルドに対し声をかけたのだが。
「あ、あの、
「彼は諸君等と
こんなことを言いくさったもんだから。
「レイル
「いや、マーちゃんの方がよくね?」
「なんにせよ、あいつは
終わった。俺の学園生活、入学式と同時に終わった。
ゴルドが引き起こした大争乱の中、俺は心の底から思う。
どうしてこうなった?
入学式
それから講師の引率を受け、教室へと足を運び、担当講師が
……大勢の生徒達に、囲まれながら。
イリーナの周りは男子が、俺の周りは女子が固めていて、歯の
「ふふんっ! まぁ、あたしはあたしだからねっ! 当然よっ!」
その一方で、俺はといえば。
「アード君っ! わ、わたしクレラって言うの!」
「なに
「
「あぁっ! 先
「……は、はは」
初めての
前世で学園に入った時はこんなふうにならなかった。教室の
それが今はどうだ。世に
……これはおそらく、
前世で学園に入学した際は、なんの肩書きも持ってはいなかった。されど、今は大魔導士の息子という肩書きがある。それに人々が群がっている形だろう。
なんにせよ、嬉しいことだ。
「チッ。調子こいてんじゃねぇぞ、平民が」
「死ねばいいのに。マジでウゼぇわ」
少し
それもこれも学園長が
今後、いじめなどにどうやって対応すればいいのだろう。考えれば考えるほど胃が痛くなる。これほどの苦境は、前世にて神々の軍団に追い
これはどうしたものかと本気で
「……ぃ……だなぁ……」
「っ……」
生徒達が生み出す
まるで、一人の男子が何者かを
音が飛んできたと
制服のデザインからして、両者共貴族の子供か。男子の方はエルフだな。随分と
女子の方は……特別な身体的
肩まで
そして、
そうした彼女の肉体を見ていると……
ふむ。彼女はおそらく、サキュバスであろう。極めて希少な人種だ。
そんなサキュバスの女子に、エルフの男子が暴言をぶつけていた。
「無能女でも学園に入学できるたぁ、
「そ、そんなこと、してません……」
ニヤニヤと笑いながら
「……皆さん。あのお二人のこと、ご存じですか?」
「えっ? う、うん。男子の方はエラルドね。かなりの有名人よ。名門公爵家、バークスの天才児、だからね。それで……もう片方はジニーね。こっちは逆に才能がないってことで有名。生まれは結構な名門伯爵家なんだけどねぇ」
「彼女の家はエラルド君の家に仕えてる身分で……昔っからあぁして
「ほう。それはそれは……
眼光を
どうせ俺がいじめられることは確定しているのだ。それならばもはや
ゆえに奴の
「やめなさいよ、あんたっ! その子、
イリーナが決然とした
エラルドがそんなイリーナに目をやった後。俺もまた奴に近寄り、声を投げた。
「我が友人のおっしゃる通り。
対し、エラルドは舌打ちを一発かまし、
「
「七光りか
「うっせぇんだよ、バァーカ」
俺の足下に
「流石はエラルドだぜ、もっとやれ」
「大魔導士様のご子息にあの態度……神童に怖いものはなし、か」
「どうしても、こちらの願いを聞き入れてはくれない、と?」
「そうだなぁ。ま、オレと
この言葉に、イリーナが真っ先に反応……しなかった。
意外なことに、彼女は
「どうされました? イリーナさん。
「あいつは、その……
ふむ。イリーナでさえ
それならば──と、思った矢先のことだった。
「おい。なんの
その
ツンとすましたような美貌は見る者を
身に
……いや、待て。ちょっと待て。な、なぜ、奴がここにいる?
他人のそら似でなければ、あの女は──
「オ、オリヴィア様っ!?」
「えっ!? あ、あの伝説の使徒様……!?」
「学園の特別講師をやってらっしゃるとは聞いていたが……ま、まさか、入学初日にご尊顔を拝見できるとは……!」
そ、そう。かつての我が
オリヴィア・ヴェル・ヴァイン、その人である……!
ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ。なぜ、あいつがこんなところにいるのだ?
四天王という経歴からして、てっきりどこぞの国の
「チッ。担当クラスで初日そうそうに
なん、だと……!? ま、
奴は俺の転生に腹を立てているだろう。無責任に王としての職務を
だというのに、これから担任になる?
「……この騒ぎは、貴様の仕業か。大
もう
し、しかし、まだ
ここはしっかりと、アード・メテオールを演じなければ。
「オ、オリヴィア様。本日もご
「本日も? 貴様とは初対面のはずだが?」
し、しまった! ど、
「……フン。まぁいい。それで、何があったのだ。説明しろ」
黒い猫耳をピクピクさせるオリヴィアに、おっかなびっくり事情を説明した。すると、
「決闘を許可する。さっさと
「い、いや、まだ私はやると決めたわけでは──」
「やかましい。
黒い
「お、おい、今のって……!」
「オ、オリヴィア様が品定めを……!」
「
皆が
……決闘で下手こいたら、俺=《
神の子と決闘することよりも、そのことのほうが、俺にとっては問題だった。
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