第7話 東京駅のダメゲーテ友達


「うちさ、吐いてるから、歯、やばいじゃん? だからいつも口元、手で隠して笑うのね。んで、指が目立つから、指先だけは、いつもすげぇ綺麗にしてんだ。うちのぼろ、隠せるからさ」

ぼろ? 冗談でしょ。歯なんて治せるし、玉ちゃんはどう見たって綺麗だし、あた詩たちはぼろなんかじゃないよ、かすかすなんかじゃないよ、ってか、多分ぼろでもかすでもいいんだよ、だからそこに居て、と玉ちゃんに今咽喉の伝送路を通してちゃんと述懐しなきゃと思うのだけども、窒息しそうになってああ、ってなったらば、東京駅に山手線が到着してしまい、降りる人々に圧されるようにその言葉たちは女の子肉体のあたしからも男装のあたしからも出てゆけなかったのです。


「あ、TOKYOだ。じゃねー、またメールすっから。Bye」

繋がらないメアドで繋がろうってあた詩と同し操り人形体の玉ちゃんは、もう彼女に縁がないTOKYOの交点の東京駅で、多すぎる人と時と観念の群のヴォーテックスの流体のうずまく運動/凝縮の有機の光の中に消えてゆきました。


東京駅のその繰り返されてきた幾何を測光するような感覚で色々に戸惑い顔にまぼろしをうかべていたらば、ふとあたしは気がついてしまいました、三匹の小人に。

もれなく「ゲーテの絵本」にば閉じ込めらたと思っていのだけれど、赤ちゃん悪キューピー丸亀小人集団のうちの小人の三匹だけ、ゲーテの絵本の物語の歴史画の一部にも入りきれなかったご様子で、山手線に残っており、ちょこまりんちょこまりん、七秒だけうっとうしく車両内を遊びまわり、その小人たちは、すくすくさっさとみるみるみるくdog_year顔負けの速さで「イマ」の若者に成長したのでふ。

そして、玉ちゃんがいなくなってから、もはやこっちの世界ではお友達様全くいない一人パレードを男装しながらなんとか七分の二拍子で、ひっぱれーひっぱれーひとりでひっパレード、とば行ってきたあたしなのですが、その三人の若者たちは、山手線車内限定で、一人ぼっちーズであったあたしの「お友達」にすんすんすんなりりと何故かなったのでございます。

緊張しないで、ゆるいことを話したり何も話さなくたって良いし、なんとなく、てけとーに適当刺激を共有したりの磁石感、この「お友達」simphony、あたしの空き殻だったあすこに曙歓心として響きます。

「普通に歩いてると、警官に会うたびに確実に職務質問されるから、俺大学に通えないで、単位取れないんだよねぇ、ほら、道歩けないからね、すぐ職質で絶対遅刻だからね。だって道歩けないんだも」

と、しみじみ語る「お友達」の一人。しみじみ系男子です。

「おれは芸術至上主義だから妥協したくないから就職活動辞めた。今レオタード着てサラ金のCMに出て踊ってる。聞く音楽はノイズとプログレだけ」

と、きっぱりと語るもう一人の「お友達」。きっぱり系男子です。

「僕の人生の絶頂はね、バイト代ためた金で憧れの沖縄に一人旅行ったとき、沖縄の海辺で全裸で大好きなカレーライス食いながら、大海原と空見ながらゆっくり歩いてたあの夏。でも捕まっちゃって、大学も除籍。沖縄の海ならいいかな、と思っちゃったのね、全裸。だって憧れの沖縄だったから。親とお巡りさんと沖縄には迷惑かけたなぁと思うけど、あの開放感、僕は後悔はしてないよ」

と、爽やかに語る最後のあたしの「お友達」。爽やか系男子です。


系列を持たされた「お友達」たちは、お色で喩えるるならば、全員どどめ色です。

THE Tokyoどどめ色コレクション2010年代すなぁ。

あ、でもでも、そんな風に「お友達」の彼らを喩えてしまうと、まるで負/腐のみを、あたし自身下にいるくせに淀んだ勘違い風味でば上から目線で仄めかしているような感じになってしまうんにょですが、いえー、いえいえOH-YEAR、どどめ色ーズ「お友達」の彼らは、あたしなんかよりもこのもりもり整備roundされたのだか勝手に隆盛して衰弱したのだか、やっぱこぽこぽ生きているじゃーんな、なのだか、わけわかめ~わかめ~ゆらゆらら~~わかんなーいわからないな東京密林、まぁ大雑把に申して、そのような感じの東京の一端に妙に馴染んでいるといふか、紛れも無く、彼ら/「お友達」は、ここの一部なんだなぁって抗えない音綴の織り成すバッカスなのです。本当です。まぁ、無論、申し上げるまでも無く御洒落やら洗練やらやらの通常からは隠されている緯(よこいと)様方ではあるのでするるが。

あたしは、せっかくできた緯(よこいと)の「お友達」に、お友達会話がなされているのだから、ちょっとでも頓知の利いたナイスでグーなことをば話さなきゃ話さなきゃ、と脳絵をfull稼動させつつも、片隅の脳絵では、あくまでも他の乗客の皆様からの視覚に配置される自分は、すました男装の麗人の構築景観を崩しちゃいけない、そこ絶対に守らなきゃ、と、なにも生み出しはしないけれど、ここまできたらもはや非生産職人芸だなっ、という名工・正宗並みの神経無駄研ぎ澄まし芸で、お友達会話にすら苦悶する小心者感を肉体と表情に反映させないよう細心の注意を払いつつ、どーでもいい雑談のために見つけられるだけのあらゆる神経回線をばひねりんひねりひねりし続け、うぱっ、と、結局無言で「お友達」三人に無言で頷く、という無難な線に落ち着いたりそれなりにお友達lifeをば堪能しはじめました。山手線ぐるりん、ぐるりん。


(続きますですよ…)

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