28.突然、目の前を、炎と稲妻と水流が入り交じる。

眼前に居た、『奴ら』がばらばらと屠られた。

「救世主様っ、しっかりして、あんな奴らの事聞いちゃダメ!」

「救世主様っ、あたし達が守るっス!」

「救世主様には私達が居るので・・・!」

僕の後方からは奴らを屠った三人の少女が、赤、青、黄の魔法少女服を着て、輝くステッキを握っていた。

「うっ・・・君達・・・ありがと・・・」

「戸川ぁ!」

僕が三人にお礼を言おうとしたら、奴らが僕の名を呼ぶ。

「戸川ぁ、お前、逃げるなや!現実から!逃げた結果が今のお前だ、判るか!?」

嘲笑の笑みを浮かべながら僕に語りかける奴ら。

その空洞の何もない顔が、表情を浮かべている、何も無いが判る。そして、奴らの声も・・・

「消えなさい!」

物凄い水量の水柱が発射され、奴らの一部が吹き飛ぶ。

水柱の主は梓ちゃんだった。

さっきまでの大人しげの様子だった梓ちゃんは凛とした顔で奴らを睨み付けている。

そのギャップに僕はただ驚いてしまっていた。

「大丈夫ですよっ、救世主様っ」

驚き、腰を抜かしていた僕の背中から女神ちゃんが抱きついてくる。

「あれは、救世主様を、世界を破滅に導こうとする魔物っ。救世主様の守護者でありヒロインの魔法少女達が、救世主様をお守りするのですっ、昨日の夜の様に」

僕を安心させるように微笑む女神ちゃん。

その微笑みは慈母の様で、まさしく女神の様で・・・

「戸川ぁ!」

女神ちゃんに抱かれている所を、また僕を名が叫び呼ばれる。

その声音は明らかに、悪意と下衆の性根が入り交じった声音だ。

「ダメですよっ?救世主様っ?」

女神ちゃんは僕の目を手で覆い視界を奪い、そしてまた抱き締める。

「何も聞かなくて良いのですっ、あれは魔物が世界を崩壊させる為に放っているもの。私は救世主様のヒロインでは無いですけど、戦いが終わるまで、私の胸の中で待っていくと良いのです。」

女神ちゃんの僕を抱き締める力がまた強くなったのだった。

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