11.「な、何だ!?あれっ!?化け物!?」

「魔物ですっ!」

周りを見渡すと、顔面に穴の空いた生徒に取り囲まれていた。

「戸川君、暗いよねぇー」

「戸川ぁ、もっと、声を出せよ、お前の声ボソボソ言ってて、聞こえないんだわ」

「お前、一緒彼女出来なさそうだよな」

クスクス笑いながら生徒達は、迫ってくる。

その表情は、顔面が欠落しているので、見えない、見えないのだが、ニタニタニタニタと、見下した微笑みを浮かべているに違いない、それは明白にわかった。

彼らの表情は見えない。だか、彼らの表情はわかっていた。そう、わかっているのだ。

長い長い時間彼らと付き合い続けていたのだから、分かっていたのだ。

しかし、今の僕はあの頃の僕では無い。

学校卒業後、就職出来ずに、フリーターを続け、ようやく小さな会社に入社し、ボロ雑巾の様に扱われ、会社が倒産し、そして、また小さな会社に入った。浮かばれない人生だった。だが、僕は学生時代なんかよりも強くなった。だから、あんな奴らの言う事なんて、少しも効かない。

「やっぱ、お前、カスだわ、負け組だろ、お前」

「何っ?」

クラスで、イキっていた、あいつの声は言う。

「お前の人生、価値無いだろ。そんな金も貰えず、サビ残ばかり無駄に労働に時間を浪費し、彼女も居た事無いって、学生時代から何も変わって無い。ずっと負けっぱなしだわ、それで中年まで・・・」

「黙れっ!」

我慢成らなかった。

「俺は負けてなんか無い・・・!」

精一杯、奴の言葉を否定した。

だが、それは虚勢だった。酷く無様だつまた。

「ひゃっひゃっひゃっひゃっ・・・」

全て、全ての人間が、俺を笑う。

小学校の頃のガキ大将も中学校の頃の野球部のあいつらも、高校生の頃のクラスのカースト上位の奴も、職場の上司も後輩も、みんな、みんな・・・!

「黙りなさいっ!」

そう少女の叫びと共に、周囲の者が発火した。

人の形をした魔物達は、断末魔を上げながら炭となる。

「勝ちとか負けと無いわ!救世主様とはあんた達とは格が違うの!住んでいる世界が違うわ!」

奴らを黒焦げにしたのは菜野葉ちゃんだった。

菜野葉ちゃんはいつの間にか、魔法少女の装束に身を包み、ステッキを握っている。

その表情はギリギリと歯を食い縛り、憤怒の表情だった。

「大丈夫ですよっ、救世主様っ、救世主様は私達が守るですっ」

そう言って、女神ちゃんは、僕の頭を胸に埋めて抱きしめる。

僕も女神ちゃんも、風呂場に居たままの姿である。しかし、女神ちゃんの包容を自然を任せてしまう。

「そうよ、救世主様は私達が、守るんだからっ!、女神様、救世主様をお願いね!」

「はいですっ!」

女神ちゃんが、僕の顔を抱きしめる力が強まった。

「おーいっ、戸川ぁ」「ぎゃははは・・・戸川っ」「マジ、おめえ、使えねえなあ」

また、新たに奴らがやって来た様だ。僕に向ける声が聞こえて来る。

「気にしちゃ、ダメですよっ?、救世主様。救世主様は私達に守られているだけで良いんですから、私の事だけを考えて下さいっ」

女神ちゃんは奴らの声から僕を守る様に抱きしめる続けるのだった。

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