10.「き、君達っ!な、何入って来てるんだ!」

僕はすぐ視線を壁に向け、怒鳴った。

「何って、背中流しにですっ」

「結構だよ!そんなもん!ほらっ、眼を瞑っててやるから、早く出ていった出ていった」

「救世主様」

僕の腰に、手が絡み付く。

「私達、救世主様の役に立ちたいの、一緒に居たいの」

「後にしてくれよ!僕は風呂に入りたいんだ!」

「風呂なら一緒に入った方がお湯節約になりますよっ!」

楽しそうな声で、女神ちゃんは言った。

「・・・じゃあ、洗うね、救世主様・・・」

「っ!待っ・・・!」

僕が静止する前に泡を含んだらしき二人の手が僕の肢体を絡んだ。

「きゅっきゅっきゅっきゅっ」

「しゅっしゅっしゅっしゅっ」

僕は目を瞑っているから、二人がどの様な様子で、僕の体を洗っているかわからない。

彼女達の手以外の肉体のどこかの部類も触れたが、僕は目を瞑っているから、どこなのかわからない。わからない方が良いと思う。

「目を瞑ってる・・・という事はキスしても良いんですかっ?救世主様?」

「ダメに決まってるだろう!」

「っちゅう・・・」

首に柔らかいものが触れた。

足がガクガク震えてしまった。

良いように弄ばれている。

こんな、少女達に。

「なあ・・・そろそろ勘弁してくれないか?」

「ダメよ、ちゃんと洗わないと」

「そうそう・・・、救世主様の体を、隅々まで洗って洗って・・・んっ?」

ガタンっ!

「うわっ!」

「きゃ!」

「ひゃあっ!」

突然、床が抜けた感覚に陥って、僕はどこかに落下した。

「あててて・・・」

尻をさすりながら、目を開ける。すると、そこは、廊下だった。見覚えのある廊下。

おかしい、僕はさっきまで、うるさい小娘二人と、風呂場に居たはず。それに、この廊下・・・ここは初め来た場所じゃない!

ここは・・・高校時代の学校の廊下だった。

「うひーっ・・・イテテ・・・大丈夫?救世主様?」

「痛っぁー・・・、もう少しで、救世主様をメロメロに出来たのに・・・」

二人も尻餅ついた様で、尻をさすっている。

僕もそうだが、二人も全裸だ。目のやり場に困る。

「ここは、僕の高校生だった頃の学校の中だ。何で風呂場に居たはずなのに、こんな所に居るんだ?

「ふむ・・・、魔物に時空を歪められたみたいですね。

「・・・時空?」

「そうですっ、ここは、いつかあった時と空間の残照。この世の憎しみの根源たる魔物が、救世主様を消そうと、私達をこの時空間に閉じ込めたみたいですっ!」

「ええっ!何でまた、こんな所に?」

「それは救世主様の思い出深い場所だからですっ、世界の悪意は救世主様を肉体的にも精神的にも追い詰める為にも、救世主様にダメージが入りやすい事をしてきます。きっと、多分、学校に嫌な思い出があるんじゃないかなーと思うのですけど・・・」

「嫌な思い出・・・、まあ、あまり楽しい学校生活では無かったけどさ」

我が高校時代。・・・まあ、青春と言える日々では無かった。もっと、素っ気ない日々だった。

「ウウウウ・・・」

僕らがぶつぶつ駄弁っていたら、背後から、唸り声の様なものが聞こえた。

振り替えってみると、そこには数人の生徒が居た。

フツーの学生服を着て、そして・・・顔面に大きな空洞のある生徒が。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る