6.ぶちゅーっと僕の唇に菜野葉ちゃんの唇が覆い被さった。
引き剥がそうにも肩を捕まれて、振りほどけない。
菜野葉ちゃんは見た目は少女なんだが、その僕の肩を掴む力はプロレスラーの様に強力で、どうにも引き剥がせなかった。
ぶちゅんぶちゅんと熱いキスが暫く続き、僕が呼吸困難になりそうになってようやく唇が離れてくれた。
「ぷっは」「ぷはあー!」
ぜえぜえひいひいと僕は息を整える。
「えっへへ、魔力供給有難う、唾液、美味しかったよ、救世主様」
菜野葉ちゃんは顔を赤らめながら微笑む。
「おま・・・おま・・・お前・・・、今、自分が何やったか分かってんの?」
僕は狼狽しつつ、顔を赤くしてニコニコ微笑んでいる少女に問い詰める。
「えっと、魔力供給?」
「違う違う!」
「ちゅーの事ですか?救世主様」
僕と菜野葉ちゃんの間に割って、女神ちゃんが、唇に指を当てて言った。
「そ、そうだよ、ちゅーの事だよ、いきなり何なんだよ」
「魔力供給ですよ、魔法少女は救世主様の匂いや体液等から魔力を供給するんです。そうしないと、魔力枯渇して、魔物と戦えなくなる所か、存在が消えてしまいます」
女神ちゃんはそう言うと、にかっと笑い
「だから、何もやましい事とか考えなくて良いんです。ねっ?」
そう言って女神ちゃんも僕の頬を両手で掴み、ぶちゅーっとキスをしてきた。
「こほっ、こほっ!」
「ごちそうさまです、ご主人様」
僕から唇を離し、女神ちゃんはニコニコ微笑んでいる。
「き、君なあ!」
「こんな美少女二人にキスされたんですよ?不満ですか?」
女神ちゃんはクネクネ体を曲げて、扇情的なポーズ(しかし、全然色気を感じない)を取って、悪戯気に言う。
「不満じゃないけどさ・・・」
「なら、良いじゃないですか」
「そういう問題じゃ・・・うーむ・・・」
納得いかなかったが女神ちゃんが言ったように不満はなかったので、納得する事にしたが、疑問が一つ沸いてしまった。
「・・・所でさ」
「何です?」
「君は魔法少女なの?」
「違います。女神は女神です」
「じゃあ、魔力供給とやらは必要なのかな?」
「いや、全然」
「君なあ!」
僕は畳をダンっ!と叩いてみせると、女神ちゃんはクスクス笑った。
「減るものじゃないですから、良いじゃないですか」
「そういう事じゃない!」
笑っている女神ちゃんの顔を見て、頭を抱えてしまう。
この奇想天外な少女達をどう扱えば良いのかと。
「あー、カップ麺ばっかり、救世主様、どういう食生活してるのよ?!」
女神ちゃんに構っていて、放っていた菜野葉ちゃんが部屋の隅っこにあるカップ麺の山を見て、大声を上げている。
「ご覧の通り、カップ麺を主食とした食生活だよ」
菜野葉ちゃんの疑問に答えてやると、菜野葉ちゃんは憮然とした表情をし、
「そんなのダメだよ!絶対!ビョーキになっちゃうよ!」
と、僕の食生活ぶりを非難した。
「そんな事言ってもねえ、社会人は時間に終われて大変なのよ・・・・・・今日無職になったけど」
・・・無職・・・そう、無職である。こんな女の子に自分が無職だなんて告白するなんて、ああ、我ながら情けない。
「ふーん、そんじゃーねー、私がご飯作ってあげる!」
菜野葉ちゃんは鼻をふんふん鳴らして、そう宣言した。
「作る・・・」
「そうそう、救世主様のご飯作ってあげるわ、私こう見えて、家事は得意なのよねー」
鼻をふんふんふんふん鳴らして、僕の返事も聞かずに、菜野葉ちゃんは、冷蔵庫を開けた。
「わー、人の冷蔵庫を勝手に・・・」
「ぎゃーっ!!」
冷蔵庫の中身を見た菜野葉ちゃんが悲鳴を上げた。
「何これ・・・エナドリしか入って無いじゃない?!」
「・・・そうだよ、驚いた?」
僕の冷蔵庫はエナドリしか入ってない、何故かと言うと、それ以外の物を冷蔵庫に入れる必要がないからだ。
カップ麺とエナドリさえあれば、食生活は十文に豊かな食生活を送れるのだから。
「馬鹿っ!馬っ鹿!馬鹿!こんなの食べたり飲んだりしてたら、体壊すわよ!」
「壊れない壊れない、かれこれ5年はカップ麺とエナドリだけで生活してるんだから」
「馬鹿ーっ!」
菜野葉ちゃんが僕にタックルをしてきた。
「駄目よ、ちゃんとしたの食べないと駄目ぇ、駄目だもの、駄目」
菜野葉ちゃんは僕の懐でふるふる鳴き始めた。
女の子に泣かれるのは初めての体験である(さっきのキスも初体験だが)、僕はどう対応すべきか、検討もつかない。
「あーあ、救世主様、まどかを泣かせたー、罪な男」
「泣かせたつもりはないよ、ほら、菜野葉ちゃん、泣かないで」
「うーっ、うーっ」
僕の懐で菜野葉ちゃんは泣いている・・・何か、胸の匂いを吸われているような感覚がするが、気のせいとしておこう。
「救世主様ー、腹減ったですー、何か食べさせて下さいー、カップ麺以外のフツーの食事を」
女神ちゃんは食事を催促してきた。何て、厚かましい女神なんだ。
さて、どうしたものか、僕も腹が減って来た。
カップ麺だも食べたいが、手に取ろうとすると、菜野葉ちゃんが、僕を押して、カップ麺を取らせようとしない。
困ったしまった。
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