あんたいとる!-reminiscence-
不知火ふちか
000
私が彼と出逢ったのは、まだ物心のついていない頃だと母親に聞かされている。
当時、とても仲良しだったそうだ。
でも、それはあくまで無意識に出逢っただけであって、私と彼が意識的に出逢ったということではない。物心がついていないというのは、そういうことだ。
私達の意識的な出逢いは、幼稚園の年少の頃だった。家が隣だということもあって、家族ぐるみで仲が良かった。だから私と彼は
初めての出逢いは私も彼も、緊張していたような気がする。
子どもというものは、あまり会話などで仲良くならず、行動で相手に意思疎通を図ることが多い。私はその頃人気だった女の子向けのおもちゃを持っていて、彼は男の子向けのおもちゃを持っていた。それを交換して遊んだり、使い方を身振り手振りで教えたりする中で、私と彼はすぐに仲良くなった。
幼稚園にはお互いの母親が交互に連れていくことになったりもして、私達は毎日一緒に通っていた。もちろん帰る時も一緒。
彼は内気であまりやんちゃな子ではなかった。そのせいか、元気な男の子達とはソリが合わず、同性の友人はまったくと言っていいほどいなかった。それもそのはず、いつも私と一緒に遊んでいたし、「男の子と遊ばないの?」と聞いても、やたらと首を横に振って嫌がった。
さらに、とても泣き虫だった。何か嫌なことを言われるとすぐに泣き出して、私の背中に隠れて、助けを請うのだ。
「この子には、桜ちゃんがいないとダメね」
彼のお母さんがため息を吐いてそんなことを言う。私のお母さんもうんうんと頷いていて、顔を見合わせて笑っていた。
彼の家庭は両親共働きで、夜遅くまでいない時は、私の家に遊びに来たり、泊まったりもしていた。今思うととっても気恥ずかしいけれど、一緒に寝たり、お風呂に入ったりもしたかな。
ずっとずっと、そんな日々を一緒に過ごしていくんだろうと思っていた。
けれど。
そんな日常に終わりが来るなんて、その時の私は、思いもしていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます