デスゲーム教室の金の亡者

月田優

この世界の真実

 この世界には夢も希望もない。

 オレがそう悟ったのはいつのことだっただろうか。


物心ついた頃、最初に学んだことは『諦める』ことの大切さだった。


 こだわりやプライドなんて持っていても邪魔で疲れるだけ。

 諦めてしまった方が楽に生きられる。


 全てを諦めて生きているオレには何も無かった。

 将来の夢。未来への希望。何も。

 無色透明。空っぽな存在。


 オレは理解していた。

 夢や希望。そんなものに何の意味もないことを。


 何かを持っている人間は弱く、何も持っていない人間は強い。

 捨てるものがある人間は弱く、捨てるものがない人間は強い。

 オレが生きてきた世界は強くなければ存在することを許されない。

 強くなるためには心なんて邪魔なだけ。

 邪魔なものは消し去ってしまえばいい。

 自分を守るために邪魔なものは切り捨て、見捨ててきた。

 自分を助けられるのは自分だけ。

 それがオレの処世術。防衛本能。

 世界がもう少し優しければ変わっていたのかもしれない。


 しかし世界は、そう甘く簡単なものではなかった。

 世界は理不尽に満ちていた。


 この世界は金によって支配されている。

 夢を叶えるためにも、希望を持つためにも金は必要だった。


 もし自分に多額の借金があれば、夢を諦めてすぐに働かないといけないし、何かを学ぶために学校に通うのにも、ご飯を食べるのにも金は必要だ。

 夢に向かって努力することが許されるのは、金を持っている人間だけだった。

 金がなければ、ただ生きることすら許されない。

 それがこの世界の現実。


 もし金がなければ、様々なものを犠牲にしなければならない。

 時は金なり。労働とは、時間を金に変える行為であり、金がなければ時間を犠牲にしなければならない。

 もし、病気を患っており治療費が足りなかったら、命を犠牲にしなければならない。


 金があれば、様々なものを購入し手に入れることができる。

 貧乏暇なし。金があれば心の余裕や時間も買うことができる。

 極論を言えば、土地を買うということは地球の一部、つまり惑星をも買うことができるのだ。

 食材などの商品は言うに及ばず、権利、土地、夢、希望、時間、心、命だって買うことができる。


 この世界は身もふたもない金という紙切れで回っている。

 金という紙切れが無いから自ら命を落とすということもある。


 ーーーそんな夢も希望もない金だけの世界に、果たして生きる価値はあるのだろうか。

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