殺戮の天使~善か悪か~
星成和貴
プロローグ 誕生
プロローグ 継承
二月十三日。バレンタインの前日。少女は一人、学校からの帰り道、普段通らない道を歩いていた。目的は一つ。憧れの先輩へと渡すチョコレートを買うためだ。
その店は有名ではないが、一部のコアなファンが多数存在している。そして、少女もその一人であった。しかし、店が路地裏にあることも災いし、少女は特別な日にしか向かうことはなかった。
だから、知らなかったのだ。その周辺では時折、人智を超えた争いが繰り広げられていることに。
先輩、喜んでくれるかな、そんなことを思いながら歩いていると、
「待て!」
と、叫ぶ声が聞こえた。振り返ると、先輩が立っていた。そして、目が合うと先輩は驚き、両手を広げた。そして、次の瞬間、少女の視界は真っ赤に染まった。
その赤い色の正体が分からず、自身も真っ赤に染まりつつ呆然と立ち尽くしていると、目の前の先輩が少女に向かって倒れかかってきた。
「先輩……?」
「くっ……仕方、ないか……。巻き込んで、しまって、申し訳、ない……。でも、こうするしか、外に方法は……」
息を途絶えさせながらも、そう言うと少女の手を握り、どこか知らない異国の言葉のようなものを発した。すると、先輩の身体が光り出し、その光が少女の身体へと吸い込まれていった。
え?何、これ?
突然のことに少女は困惑したが、次第にそれもなくなっていった。光と共に頭の中に全てが入ってきたからだ。
先輩が特殊な力を持っていて、とある敵と日夜、戦闘を繰り返していること。そして、その戦闘は遥か彼方昔から延々と続いていること。さらには、その力の使い方まで。
そして、最後に流れてきたのは、今、先輩が使っているのが最期の秘法であること。自らの生命全てを使用し、自らの力の全てを他者に託す、そんな秘法であることを。
それを知り、先輩の死を悟ってしまった少女は泣き崩れそうになるが、上空に人影が見えると、無意識のうちにそちらへと手を伸ばしていた。そして、
「
そう言い放ち、自らの手から不可思議な力を発動させた。
その手から放たれたそれは真っ直ぐに上空の人影へと向かい、貫いた。それを見届けると少女は声を上げた。
「はは、はははははは……。あーーーーー!!!!」
それは泣いているようにも、笑っているようにも見えた。
これは、後に殺戮の天使と呼ばれる少女が生まれた瞬間だった。
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