第3話 鑑定

【呪神レグルスの加護】

 人を呪わば穴二つ。世を呪わば穴二つ。

 世のことわりに二つの穴を。呪と共に祝福を。


 うん、意味が分からない。わからないことは放置でいいや。


 えっと、後は転生者の称号だね。


【転生者】

 別世界から来たものの証。スキル【鑑定】を獲得。INT、MNDに上昇補正。


 なるほど。これで鑑定が手に入ったのか。スキルを獲得する条件は、記憶が戻ったまたは蘇ったとかかな。まぁ無条件でスキルを取れるならありがたい。細かいことは調べたいやつが調べればいいさ。私はそんなことに興味は無いし。


 能力値、つまりパラメーターか。INTとMNDがちょっと高いのも、この【転生者】の称号のおかげっぽいね。


「能力値のことで他に聞きたいことはある?」


 そういえば称号のことですっかり母様を放置していたわ。大丈夫ちゃんと聞いていたよ?


「いえ、能力値についてはわかりました、母様」

「そう、さすがノワね、賢いし可愛いわ」


 そう言いながら私を抱っこしてなでなでする。う~ん、これが普通だったんだけど、記憶が戻ったせいであまり慣れないというか、むずがゆい。


「それでスキルなんですが」

「そうだったわね。スキルは自分だとそれがどういうのか自然とわかるし、ステータスでもわかるわ。とりあえず鑑定を私にしてみて。あ、ちなみに鑑定Levelが低いと使った人に鑑定されたってわかるから、あまり無断で使うと嫌な目で見られるわ」

「…わかった。鑑定」


 名前 ブランシュ・アダマント アダマント王家次女 第2王女

 種族 人族

 性別 女

 年齢 ひ・み・つ ♪

 Level 85


【STR】不明

【VIT】不明

【DEX】不明

【AGI】不明

【INT】不明

【MND】不明

【LUK】不明


 ……は?全然わからないんですけど。あとツッコミたい所が多すぎる。


「どう?見れたと思うけど」

「…鑑定は使えたと思うけど、母様の名前と種族、性別、Level以外がわからないのですが?」


 もうそれってほとんどわからないのと同じなのでは?


「そうね、その4つは私が意識的にみられても問題ないと思っているから見えているだけで、今のノワからだと全部見えなくすることもできるわよ」

「へ?」

「鑑定はスキルと称号以外を鑑定できるけど、相手のレベルに応じて見れる情報に制限がかかるの。ノワは鑑定を取ったばかりだから、スキルLevelも1だろうし、ノワ自身のLevelが1でしょ?だから私とLevel差がありすぎるのね」


 なるほど。そう考えるとあまり使えないスキルな気もするけど…


「今使えないスキルと思ったでしょ?」

「…うん、正直微妙かなと」

「敵対していない人には微妙かもしれないけど、相手のLevelと能力値がわかること、そしてわからないというのは戦闘においてとても重要だわ。対人や対魔物でもね。後は生物じゃなく物でも使えるから、意外と便利なのよ?」


 さらっと戦闘という言葉が出る辺りとLevelが高そうな感じで、母様がどんな人かだいたいわかってきたのではないだろうか。


 それはいいとして、物か。とりあえずそこら辺の物を鑑定してみよう。


 周りを見渡してよさげな物を探す。この水差しとコップでいいかな。


「鑑定」


 名称:ガラスの水差し

 ランク:B-

 材質:ガラス

 状態:良好

 備考:アガット産珪砂から作成。新鮮な水が入っている。


 名称:ガラスのコップ

 ランク:B-

 材質:ガラス

 状態:良好

 備考:アガット産珪砂から作成。


「名称の他にランクと材質、状態と備考とかが出ました」

「そうね。名称はいいとして、ランクはそのもの価値がわかるわ。材質は作られた物ね。状態は壊れてそうならそこに表示されるわ。備考はその他のことね」


 ふむ。物の価値がわかるのはいいかもしれない。状態もわかるのもいい。装備などの場合、戦闘で使う剣とかは状態の良し悪しで、だいぶ違うだろうし。


「鑑定のLevelを上げるには、どうしたら?」

「もちろん鑑定をたくさん使うことよ。他のスキルも使い続けることでスキルLevelが上がるわ」

「なるほど、わかりました」

「あ、でも同じのを何回見てもダメよ?使うならいろんな種類を鑑定しなさい」

「……わかりました」


 そんな簡単じゃないか。まぁだから鑑定はその仕事をしている人が覚えやすいし、Levelが高いのだろう。


 鑑定についてはこれでいいだろう。私のこともなんか世界の声で色々あったけど凍結されているらしいし、それが動かない限りはかわらないだろうし。


 まずは現状の状況把握からね。


「母様、今日私は神殿に連れて行かれましたが、状況的にどうなっているのです?」

「そうね、まずはこの国に来た理由からね。アガット教国からアダマント王国へ、友好条約の締結のために招待状が送られてきたわ。第2王女である私は特使として、この国にノワと一緒に来たってことね。まぁ観光のつもりだったわ。ノワに違う国を見せたかったしね」


 私に今まで起きたことを話しながら、のどの渇き潤すため水差しから水をコップに入れ、一気に飲む。私も飲むかと促されたが、辞退して話の続きを聞く。


「そして調印式当日に私と外務大臣が出席していたところを襲撃。ノワが休んでいたアガット教国側が用意した離れの一画と同時にね。たぶん封印系のスキルか何かだと思うわ。それを使って一時的にアダマント側のスキルを封印、取り押さえに来たアガット教国側のスキルも封印されていたっぽいから、範囲指定のスキルかアイテムの何かだと思うけど、多勢に無勢だったから、攻撃しないことを条件に大人しく投降したわ。そしてここに幽閉ね」


 ふむ。呼び出しておいてこの状態ってことは、調印式自体これの計画のためってことになるか。


「投降した後に始末されることはなかったのですか?」

「国の状況からその判断はしないだろうと思って、大人しく投降したわ。あちらは条件である抵抗しなければ攻撃しないことを了承したしね」

「国の状況?」

「そうね、まずは国の位置を頭に思い浮かべてね。私たちの国アダマント王国を中心に東西南北にそれぞれ1つづつ国があるわ。北にネフィライ連合国、東にヘリオラ公国、西にクンツァイト帝国、南にここアガット教国ね」


 アダマント王国から見て4つ国があるのか。私たちの国はその中心ってことね。


「国力からすると西のクンツァイト帝国と、北のネフィライ連合国が同じくらいね。次が南のアガット教国、そしてアダマント王国と、東のヘリオラ公国という順になるわ」

「そうなると、私達の国よりもアガット教国は力が強いのですね」

「そうね、国力という総合的な意味合いでみればね。土地の広さとかもあるし」


 そうか、アダマント王国は国に挟まれているから、そんなに土地自体が広くないのか。


「国力を分野別にするとだいぶこの順位が違ってくるのよ。総合軍事力でいえばクンツァイト帝国が1番強くて、次がアダマント王国、アガット教国、ネフィライ連合国、ヘリオラ公国の順になるわ」

「アダマント王国の軍事力が高いですね」

「そうね、国に囲まれているという状況もあるし、王家の特性、それに国民の気質というか、心構えというのもあるわ。だから総合軍事力はクンツァイト帝国が1番強いけど、個人資質はアダマント王国が群を抜いて強いのよ」


 周りが国に囲まれて、いつ攻められてもおかしくない状況でも、アダマント王国の国民で居続けたい理由があるということか。

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