第2話 転生
「教皇様、神託鑑定が出ました」
「見せろ」
「はっ、こちらになります」
「先天性スキルは無いか、だが称号の欄に何か書いているようだが、これはなんだ?」
「それは……インクが滲んだのか、よくわからなかったそうです」
「ふむ……しかしスキルが無いなら大したものでもないのだろうな」
「はっ、さようで」
「ならやつに育てさせても問題ないだろう。好きにさせろ」
「ご随意に」
私の前世の記憶が蘇ったのは、神殿で神託鑑定を受けた時だ。最初は訳が分からなかったが、そのまま流されるようにしていたら、神殿を出て、馬車で揺られているうちに、どこかの城のような建物に着き、女性に受け渡されると、そのまま神殿へ行く前の一室へ連れて行かれた。
そこにはこちらの記憶である母親がおり、状況を観察している間に前世の記憶とこちらの記憶が混濁していたのが、やっと落ち着いてきてわかったことは、私は生まれ変わったこと。年齢は6歳くらいかな。あとこの城の端の方にある塔で母親と一緒に幽閉されていること。
母親が幽閉されている経緯はまた後で話すとして、まずは先ほどの会話を思い出しながら、疑問を1つ1つ解いていこう。
まず教皇と誰かが話していたということは、私達を幽閉しているのは、この国の一番偉い人で間違いないだろう。
そしてもう1人はよくわからなかったが、神託という言葉と着ている法衣みたいな恰好から、神殿関係者かもしれない。
まぁこの辺りはどうでもいい。問題は神託鑑定なるものを受けた際に、脳内に流れた音声だ。女性みたいな声だが、感情が乗らず、義務的な音声を発していたが、それが気になる言葉を私に伝えた。
『転生者の覚醒を確認。称号「転生者」により、スキル「鑑定」を獲得』
『初のスキル獲得を確認。称号「呪神レグルスの加護」により、スキル「鑑定」に干渉しています』
『……スキル神ミザールよりスキル干渉について拒否を応諾……呪神レグスルの階位が上位のため、スキル神ミザールの提唱を破棄。スキル干渉を継続します』
『スキル神ミザールより創造神アルファルドへ現行為に対しての異議神告を応諾……スキル干渉を一時的に凍結します』
たぶん称号の転生者とは私のことだろう。前世の記憶があるからね。それで鑑定スキルを取れたはずだけど、使えるのかな?
「母様、スキルってどうやって使うの?」
「ノワ、スキルが取れたの?」
「神託鑑定ってのを今日したけど、その後だと思う。神託鑑定の結果でスキルが無いって言ってたから」
「そう、それはよかったわ。普通の鑑定スキルだと、相手のスキルが見えないから、今日ノワを神殿に連れて行ったのね。他に何か言ってた?」
称号の転生者ことは黙っていよう。混乱するだろうし、私はこちらの記憶もあるから、母様のことは母様とちゃんと思ってるしね。
「やつに育てさせても大丈夫って教皇様って言われてた人が言ってた」
「よかったわ。スキルが無かったせいで脅威に感じなかったのね」
幽閉しているのに関係しているんだろうな。母様は安堵しながら、私を抱きしめる。前世では母親がいなかったので、このぬくもりはこちらの世界で初めて得たものだ。存外悪くない。
「先天性スキルって言ってたけど、それって?」
「先天性というのは、生まれたときに備わっているスキルのことよ。今までわかっている先天性スキルはどれも強力なものばかりだから、それを知りたかったのね」
へぇ、なるほどね。まぁさっき覚えた鑑定スキルみたいに、後から覚えることも出来るんだろうから、そこまで気にしなくていいか。
「さっきスキル覚えたから、後でもスキルは覚えられるんだよね?」
「そうよ、さっき言った鑑定スキルも、そういう仕事についていると覚えることがあるわ。調べものをしたり、物の価値を見分けたりね。スキル習得で1番簡単だとされているのは、戦闘系ね。短剣を稽古すれば短剣スキルが手に入るって感じよ」
行動によってスキル習得が可能ということか。まぁそれだけじゃないのは自分で経験してるから、他にも色々ありそうだ。
「それでスキルの使い方を聞いてきたのは、何かスキルを覚えたのよね?何を覚えたの?あ、でも他の人に教えちゃダメよ?さっきも言ったけどスキルは神託鑑定じゃないとわからないから。それにスキルがわかると戦闘でも何でも対策をたてられちゃうわ」
ワクワクした顔を私に近づけながら、注意事項を話す母様。お茶目な母様だ。
「わかった。他の人には言わない。母様だけね」
「そうそう」
私の回答が気に入ったのか、頭を撫でてくる。悪くない。
「えっとスキルは鑑定だよ」
「鑑定なの?以外ね。知識系のスキルはそれ専門でもないと結構取得するのに手間取るんだけど。私の娘だもの、きっと天才なんだわ!」
なぜそこに着地したのか謎だけど、疑問に思わないなら別にいいや。転生者の称号のせいですって説明するのも嫌だし。
「母様、スキルの使い方教えて」
いつまでも進まないので、教えてくれるよう促す。
「そうだったわね。でも簡単よ。スキルは取得するときに世界の声が聞こえたでしょ?それで取得したことはわかるし、自分のスキルは自分だけは確認できるわ。まずそれからにしましょ。スキルの確認はステータスと心の中で思うだけでいいわ」
あの声って世界の声って呼ばれてるのか。母様に言われた通り、まずは心の中でステータスを確認したいと思うと、頭の中にホントに何か出てきた。
名前 ノア・アダマント
種族 人族
性別 女
年齢 6歳
Level 1
【STR】F
【VIT】F
【DEX】F
【AGI】F
【INT】E
【MND】E
【LUK】F
スキル
【鑑定】Lv1
称号
【転生者】【呪神レグルスの加護】
名前はノワ・アダマント。母様のブランシュ・アダマントと同じ家名。種族は人族で、女性で6歳か。種族があるってことは、人族以外もいるのかな?
ステータスもそうだが、Levelがあるということと、スキルがあるという事は、まぁもう疑うこともないが、転生先は地球ではないらしい。ま、あんな世界に未練もないから、むしろありがたい。
「見えたかしら?ステータスオープンで見せたい人に見せることが出来るから、やってみて」
「ステータスオープン」
「そうそう。名前、種族、性別、年齢、Levelはいいとして、その下がわからないわよね。これは自身の能力値とでも思っておいて。まずSTRはStrengthで(力の)強さ。一般に物理攻撃の攻撃力に影響するわ。DEXはDexterityで器用さ。武器の扱いの上手さや、生産系スキルにも影響するわ。VITはVitalityで丈夫さ、持久力ね。AGIはAgilityで敏捷性を表すわ。足の速さや反応速度に影響するわ。次にINTはIntelligenceで知力や賢さを表すわ。魔法系スキルの魔法攻撃力に影響する能力値ね。MNDはMindで精神力を意味するわ。魔法防御力や回復魔法、補助魔法の強さに影響するわ。最後にLUKでLuckyね。これは確率があるスキルに影響するのだけど、あまりよくわかってないわ。確率だから統計を取ったりしない限り難しいし、能力値はFからSまであるけど、同じランクでも若干幅があるらしいってことがわかってるからね」
母様の話を聞きながら私が考えていたことは、能力値のことではなく、称号で異彩を放っている【呪神レグルスの加護】の説明文であった。
【呪神レグルスの加護】
人を呪わば穴二つ。世を呪わば穴二つ。
世の
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