第8話:ドイツで僕の過去を話す

僕は正直躊躇った。

何処から話すべきか、何を言うべきか。

取り合えず、僕は出生から話をした。


大阪で生まれ、

父親はサラリーマン

母親は主婦

3人兄弟の長男

父親の仕事関係で小学2年生の時に中国

小学4年生に東京へ

中学2年生に再度中国

高校2年生の時に父親を亡くす

高校3年生の時に叔父を亡くす

18歳にカナダへ単身で行く

20歳に東京へ戻る

24歳に初めての鬱病にかかる

28歳に嫁と出会う

29歳に結婚

30歳に鬱病を再発


こんな感じだった。

マークは驚いていた。

こんなに世界を飛び回り、家族を失ったりしていてる事が珍しかった様だ。

彼はその後変わった質問をした

「家族関係や対人関係はどうです?」

溜息混じりで僕は正直に答えた

「正直言えば僕はあまり良いとは思っていない」

マークはパソコンに打ち込みながら聞いた

「理由は?」

僕は取り合えず思った事を全て伝えた。

「父親は気に入らないと殴るし、マンションから投げ捨てられそうになったり」

「父親が死んだ時の他人の変わり様を見て、人って屑なんだなって思った」

「僕が大学へ行く時に台湾を選んだが、家族に邪魔され叶わなかった」

「弟が屑で、お互い嫌っている」

「初めての鬱病と言われた時の原因は彼女の浮気から始まった」

「2度目は正直分からない、色んな事があり過ぎて何がどう影響したのか…」

マークは悲しそうな目で見てきた

「正直言って、過酷な人生だったんですね」

そうなのか?と僕は思いつつ答えた。

「そうなんですかね、他人の人生はよく分からないです」

マークはパソコンへ入力しつつもこんな事を言っていた。

「君は鬱病になってしまうのも仕方ないと思う」

僕には分からない、そうなんだ。としか言えなかった。

「そうなんですね。」

マークは入力が終わったのかこちらを向いて言った

「過去の体験と症状からして、重度の鬱病だ、時間は掛かるが投薬とセラピーを受けたら治るよ」

取り合えず僕は相槌を打ち、

「そうなんですね…」

と答えた。

現実と思えなかった、医者に申告される気持ちってこうなんだなって。

中度レベルなら投薬と休養で治せるが、重度となると別だ。


そんな僕を他所に、マークは

質問が終わった様で、最後にマークから言われた。

「君は、鬱病を治したいのかい?」

「辛い思いをしなくて済むならば、治したい」

と言って最後に握手をし、病室へ戻った。


嫁さんは病室で待っていた。

僕の顔見ると、安堵した様子で

「どうだった?」

と聞いてきた

「過去を話しただけだよ、僕は鬱病になるのは仕方ない位酷い人生だった様だ」

「そして…重度の鬱病らし、時間がかかる、すまない。」

嫁さんは黙って抱きしめてくれた。

僕は、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


この後、嫁さんは実家へ帰り、また後日来ると言った。

嫁さんが帰った後、晩御飯の時間だ。

僕は食堂へ向かった。

食堂には既に患者さんが集まっていた。

殆どが老人だ。最年少は僕だけだった、と言っても30歳で最年少も変だ。


この日はパンとハムだった。

パンは乾燥していて、パサパサしていた。

ハムは美味しかった。

即席でサンドウィッチを作り軽く食べた。

病院食は案外食べれる。


食べ終わると、女性から話しかけられた。

どうやら隣の病室の人の様だ。

名前は…思い出せないが、おしゃれに気を使っている、綺麗な人だった。

香水もつけていたな、確か。

ここでは彼女の名前はエリーとしよう。

エリーはドイツ語で何か言ったが、分からない為、無言だ。

察した様で「英語は分かる?」と英語で話しかけてくれた。

「ええ、多少は話せます」と答えた。

この後の会話は特に重要では無かった。

名前は?

何処出身?

何でドイツに居るのか?

病気は?

どれ位居るのか?

何かあれば言ってね

とか、そんな事だった。

患者仲間と言うのか、その時だけの関係の知り合いが一人出来た。

僕はそんな事を思っただけだ。

尚、このエリーは1週間程度でオープンステーションへ移った。

この女性とはまた会う事になるが、「ドイツの病院は恋の場」

と言う話が事実である事を知らなかった。

この話はまた別の話で。


自分の病室へ戻ろうとした時、看護師のマイクから話しかけられた。

「薬を忘れているので飲んでくれ」

との事だ。

「分かりました、これらの薬の説明をお願いします」

マイクは問題ないと言い、薬の説明を始めた。

「まずは、この青い錠剤はタボールと言う薬だ、これは抗精神安定剤で」

「効果は、不安や緊張を抑える薬だ」

「容量さえ守れば依存症と離脱症状には悩まされないから、飲んでくれ」

「黄色い錠剤はオランザピンだ」

「これも抗精神安定剤だが、リラックスさせる効果があって、君にとっては睡眠誘導剤と同じ物だ」

僕は相槌を打ちつつ

「分かりました、有難う御座います。」

と答え、薬を飲んだ。

マイクは、念の為口の中を確認させてくれと言った。

海外ドラマであるあれか。

薬を口の中に隠すあのシーン。

と思いながら僕は、口を開け、舌の下を見せ

しっかり飲んだ事をアピールした。

確認が終わったマイクは、「何かあれば何時でも呼んでくれ」

と言い、病室を後にした。

この後僕はベッドへ横たわり、薬の効果か疲れなのか気が付いたら寝ていた。


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ドイツの隔離病棟の一日目はあっという間でした。

幸いにも英語が通じる環境で、問題なく入院でした。


「ドイツの病院は恋の場」と言うのは、ドイツでは有名な話らしく

一時帰宅した時に般若顔した嫁さんに注意されてました。

嫁:「分かってるでしょうけど、他の患者や看護師かと関係を持ったら即、離婚よ」

僕:「安心して、僕はモテないし、他人に興味ないよ?」

嫁:「いい?アジア人は若く見えるの、貴方は外人受けの良い顔してるの」

僕:「ふーん?実感湧かないな」

嫁:「メンタル系の病院は薬でハイになってるから、男女関係を結ぶ人が多いの」

僕:「へー…?」

嫁:「獣と一緒よ」

僕:「ジー」

嫁:「私が獣って思ってるなら、叩くよ?」

僕:「おい、待て、僕はまだ何も言ってないんだが…」

はい、お約束で生意気だからって理由で叩かれました。

毎回こんなやり取りで生意気だからーって理由で尻を叩かれます。

理不尽ですけど、夫婦のスキンシップなのでこれで良いんです。


次回は隔離病棟で起きた事件その1を書きます。


日本は新型コロナウィルスで騒がれてますが、大変そうですね。

真っ先に思い出したのSARSですね、当時中国に居た時騒がれてました。


友;「もしSARSなら隔離病棟へ強制収容されるゾ!」

僕:「え?つまり出られない?収容所か…」

友:「そうだよー?奴らは消す事に躊躇いは無いぞ、粛清だ!」

僕:「これが…中国の本気…!!」

友:「それでも…守りたい世界があるんだー!!」

僕:「絶対正義のガンダムキャラが言っても、やってる事は犯罪は正当化できんよ」

なんて話を笑いながらしてました。緊張感ゼロ。

※当時ガンダムSeedが流行っていてアニオタだった台湾人との会話


日本ではそうならないので、必ず病院へ行って治療されましょう。

それでは、良い一日を


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