第12話 放課後Ⅱ
「昼にも言ったろう? 大事なのは呼吸と丹田への意識だ」
「う、うん。スウ、ハア、スウ、ハア」
「よし、それじゃ一回全身に霊力流すから、心の準備しておいて」
「わ、わかった」
霊力を暴発しないようにするのが精一杯の美咲に、乙葉は微量の霊力を流す。もちろん霊力波長は合わせてある。
「ん⁉、んんん!」
先ほどとはまた違った感覚がしているのだろう。美咲は体をよじって、声をもらした。
(一回でいいんだ。一回でも全身を霊力が駆け巡る感覚がつかめれば・・・)
「・・・っ、よし、これでいいぞ」
乙葉は美咲の後ろから離れる。
「え?、す、すごい・・・・」
美咲の全身にはゆったりと霊力が万遍なく流れており、神聖な雰囲気を醸し出していた。
しかし、それは1分ほどで解けてしまった。
「あ・・・・」
「最初ならこれぐらい持てばいいほうだよ。後はこれの継続時間を長くしていけば神楽祭にも間に合うさ。お疲れさま」
「うん、ありがとう。でも、どうやったの?」
美咲は縁側に腰を下ろした乙葉に聞いた。
「霊力波長を合わせたんだよ。それを俺の操作イメージで流しただけだ」
乙葉は後ろに倒れこみながら答えた。
「それってどういうことなの?」
「あ~、なんというか、隠密術の中に周りの霊力と波長を合わせて隠れるっていう術があるんだけど、それの応用かな」
「ああ!、聞いたことある! でもそれって相当難しいんじゃ・・」
「俺は、というか鴉宮家は代々霊力が弱いから他の部分で補ってきたんだよ。そのおかげかな」
美咲も乙葉の隣に腰を下ろした。
「そっか、私、鴉宮家のこと何にもわかってなかったな・・・」
乙葉は目をつぶった。
「・・・・俺も篠宮家のことはよく知らないからお互い様だろう」
「そう?、・・・・そうなのかな」
「ああ、」
夕日が2人の横顔を照らし、朱に染めた。
«お二人さんや»
「ひゃう⁉」
「ん?・・どうした、鴉」
«どうしたじゃないわい。もう大禍時だぞ»
「そうだな。信三さんのところには行ってきてくれたかい?」
«ああ。聞いてきたから、着いてこい»
「わかった。・・・・今日のはどれくらいのかわかるか?」
«んあ? そんなに強くはないぞ»
「なら、」
乙葉は美咲に向き直り、満面の笑みを浮かべる。
「な、なに?」
「実践練習してみよう!」
「・・・え?」
「まずは篠宮家に戻らなきゃな。美咲のも装備がいるだろう?」
「確かにいるけど、」
「よし、行こうか」
そう言うなり、乙葉は美咲の手を引いて走り出した。
「わ、私、行くとは一言も、」
「大丈夫だよ、美咲なら」
※次回更新 3月18日 水曜日 0:00
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