第11話 放課後Ⅰ


 放課後、鴉宮家-------------------------------


 乙葉と美咲は鴉宮家にいた。乙葉が訓練するならこちらのほうがいいだろうと誘ったのだ。


 「お、おじゃましま~す」


 「俺以外はいないから別にかしこまらなくてもいいよ」


 「へ⁉」


 乙葉はいつも通り書斎に荷物を放り込み、台所に向かった。


 「応接間で座ってて。お茶でも持ってくから」


 「う、うん」


 乙葉がいなくなると、美咲はキョロキョロと周りを見はじめた。


 (ど、どうしよう!、なんか落ち着かないよ~)


 結局乙葉が帰ってくるまで美咲はずっともじもじしていた。


 「どうぞ」


 「うん、ありがとう」


 心を落ち着かせるためにも、美咲は渡された紅茶に早速口を付けた。


 「・・おいしい」


 「それはよかった」


 乙葉もカップを傾けながら、ほほ笑んだ。美咲はそんな乙葉の新しい表情を見て、手が止まってしまった。


 (初めて、笑顔見れたかも・・・)


 「飲み終わったら、早速訓練しようか」


 「え⁉、そ、そうだね」


 (緊張でもしてるのかな?)


 若干挙動不審な美咲を気にかけながらも、乙葉の意識は訓練に移っていった。


 -------------------------------庭


 鴉宮家は四方を林に囲まれているため、多少庭で暴れても近所には気づかれにくい。


 「ここなら、思う存分暴発してくれてかまわないぞ」


 「もうしないよ!、・・・多分」


 「ふふ、冗談だよ。さ、昼休みの復習からやってみようか」


 「うん!」


 美咲は右手に霊力を集中させ始める。先ほどよりも格段にうまくなっている。


 (さすが本家といったところか。素質はいいんだよな)


 «お前に、彼女を育て上げられるかな?»


 庭の片隅にたたずむ鴉が乙葉に語り掛けてきた。もちろん、美咲には聞こえないように。


 (どういう意味だ)


 «神楽祭がうまくいけば、お前はまた教育係を頼まれるだろう?»


 (そうだな)


 «そして、お前はそれを受ける»


 (なんでそう言い切れる?)


 «ケケケ、お前ほどのお人よしが受けないわけなかろうて»


 (・・・・)


 「乙葉くん? どうしたの?」


 「いや、なんでもないよ。それより前よりもうまくなってるね。次はその感覚を全身に広げてみようか」


 「や、やってみる」


 美咲の霊力がまた高まっていく。


 「操作量はそれぐらいでやってごらん」


 「うん」


 今度は聞こえたようだ。しっかり量を抑えて操作しようとしている。


 「ん?、くっ、う」


 (少し早かったかな? いや、これくらいじゃないとまずいな)


 乙葉は苦戦している美咲に近づき、また後ろから手を取った。


 ※次回更新 3月14日 土曜日 0:00

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る