陰陽高校生の悪霊討伐
春風落花
出会い編
第1話 プロローグ
日本には八万ほどの神社が存在する。そのなかでも一握りの神社はある使命を帯びている。
それは、悪霊の討伐であった。
世の中で起きる心霊現象のほとんどが錯覚だと言われているが、それは霊感がある者がたまたま自分の霊感と波長があったものを見てしまうから起きるのであった。そして、中には生者に害を及ぼすものもいる。
これは不本意ながらも霊感を持ってしまった少年の話である。
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冬休み前日の夕方、学生が楽しそうに数人で下校している。冬休みの予定でも話してるのだろうか。
そんな中、通学路の人混みをすり抜けるようにある生徒が一人で歩いている。
学校指定のかばんを小脇に抱え、右手で文庫本を持ち、読んでいる。青いメガネに黒髪で身長は少し高めだが、普通の高校生だ。
不自然なのは、文庫本を持つ右手の手首にブレスレットのようなものがのぞいてることくらいだった。
駅付近で、周りを歩いていた生徒の数は激減する。彼はそのまま郊外の方まで歩いていく。薄暗い裏道をどんどん進んでいくと通行人はいなくなる。
そこから、少しすると小さな林が見えてくる。彼はそこに入っていく。敷地に入る前に本をしまい、右手のブレスレットを頭上でひとふりする。
(毎度毎度めんどくさいなあ)
彼、
もちろん、住居にも霊がうろついているので手前に人払いの結界が張ってあるのだ。
鍵を開け、だだっ広い日本家屋に入る。そのまま書斎に向かい、鞄をおく。乙葉は気だるそうに机のイスに腰掛けた。
この書斎は今は亡き乙葉の祖父が使っていたものだ。祖父が死んでからは、一人暮らしなので乙葉が好きに使っている。
イスを回し、後ろの窓に顔を向けると一羽の鴉がこちらを見ている。
乙葉は机の古びた本を広げながらその鴉に目を向けた。その辺にいるようなカラスとは違い、綺麗な羽をしている。
ふいに乙葉がその鴉に話しかけた。
「本家は動きそうか?」
鴉は口を開かずに答える。
«当代ではなく、跡継ぎが動くようだ»
「初陣ってことになるのか」
乙葉少し驚いたように鴉との会話を続ける。
«ああ、見ておいて損はないと思うぞ»
「確かにな、気は進まんが」
乙葉はため息をつきながら答えた。
「今まで通り俺の出番がこなくて済むようにしてくれよ、跡継ぎさん」
夕日を受け、乙葉の紫色の瞳がゆらめいた。
夕方ー
※次回更新 2月8日 土曜日 0:00
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