9.飾らないコトノハマシュマロ

「このシュガーポットの中に向かってメッセージをお願いします。言い終わったら蓋を必ず閉じて下さい。言葉が逃げてしまいますから。では、五分後に」


 言葉を閉じ込めた砂糖で作る、魔法のコトノハマシュマロ。食べれば頭の中で言葉が響くという。

 勇気を振り絞り滅多に来ない魔法菓子店に来たが、肝心のメッセージが浮かばない。


(こんな洒落た事……しかし……)

 毎年労いの言葉と共にバレンタインをくれる妻へ何か返したい。俺は意を決した。


「飾らない僕の言葉を送るよ。いつもありがとう。そして、世界で一番あ……」


 最後の言葉を言い切る前に、部屋のドアがノックされた。

(最後の言葉は自分で、か)

 蓋を閉めながら、心の中で俺は独りごちた。


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