魔法菓子コレクション

服部匠

1.感情マフィン

 魔法菓子職人である母さんと、見習いの僕はそれぞれ感情マフィンを作った。テーマは夜。


 母さんは、できあがった僕のそれを夕焼けのマフィンだと言った。

曰くオレンジと青色のグラデーションに、僕が学校で貯め込んだ憂鬱の砂糖欠片を詰め込んだからだと。

 母さんは僕の作った夕焼けマフィンを食べて、学校からの帰り道の色々な事を思い出す味だわと微笑んだ。

 そのあと、少しだけ急いたようにお茶を飲み干したけれど。

 僕も母さんのマフィンを食べた。マフィンは時折苦くて、でも甘くて、ほんの少しお酒のような味がした。もっと欲しい、と残り一つに手を伸ばすと止められた。


「これはお父さんの分なの」


 何せ夜のマフィンだからと、母さんは囁いた。


:::


2015-10-03

#Twitter300字ss

お題:夜

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