狂人が目指すは優しい世界

白紙先生

第1話 間違いからの物語

突然だが私こと上原水無月(うえはら みなつ)は

どうやら異世界と呼ばれるものに

迷い込んでしまったらしい

見渡す限りの針葉樹林、

聞いたことの無い動物たちの声

まぁそれだけでは

今までもよくあったことだし

異世界と決めつけるには早いと思う…のだが

これはさすがに

水無月「おかしいだろぉ…」

こんな雰囲気はどの武人からも感じえなかった

どんな人間でもだしうることは出来ないであろう

雰囲気に固唾を飲む、

それほどまでに違う生き物、そう神様がいるのだ

そんな神様は私を一瞥し

女神「初めまして

貴方は召喚に応じた勇者で間違いは

ありませんね?」

と…尋ねてきた

私が勇者として召喚されるとは世も末と言うものだ

水無月「…人違いでは?」

女神「はい?」

【狂人】として壊すことしか知らない私に

世界を救えと無理難題を押し付けてくる

神様はきっと何も知らないのだろう

水無月「少なくとも私は勇者としては

召喚されないでしょうね」

そう、【勇者】なんてものはありえないのだ

何度も何度も私を

打倒するために送り込まれてきた【勇者】

人々の願いを、私という破滅を殺害するために

やってくる【勇者】

それをことごとく討ち滅ぼす人類の【敵】である私

女神「?…私の召喚は完璧だったはず…」

それは本当に【勇者召喚】だったのだろうか


…死の間際に感じたあの感情がもしかしたら

この召喚に繋がったのだろうか

いや…ありえないな

善行を積んだわけでもないのだ

今更人類の味方としてなんて…

女神「しつこいようですが

もう一度本当に【勇者】では無いのですね?」

水無月「私は…【勇者】などではありませんよ」

そんなことが有り得るはずがないのだ

女神「では今から勇者ってことでいいですか?」

…?

もう一度【勇者召喚】というものを行えば

本当の【勇者】というものがやってくると

思うのだが…

それを考えてないのか…いやもしかしたら

もう出来ないのかもしれない

だとするならば、なるほど

アホなんだな、

水無月「…アホだな」

思ったことが口に出た

女神「アホとは何ですか!

召喚に応じた貴方は、今から勇者なんです!」

水無月「私が言うのもなんですが

もう少し論理感を持ちましょう」

元の世界、いわゆる前世というもので私は

死体の上に立ち続けていた

そんな私が論理なんて笑わせる、

けど何故だろうかそんなことを思っても

どこか普通の人のようにこの女神には話してしまう

不思議な感覚だ

前の私ではありえない事だな

こちらの世界に来て10分足らずで自分の変化に

気づき始めた水無月、

もしかすると私はもう【敵】としてでは無く

【勇者】…人類を救う側として居ても良いのだろうか

悪逆非道なんてものじゃないほどに

私は殺して、喰らって、潰して、壊して、

【敵】として【狂人】というものの役目を全うし

私は殺戮の限りを尽くした

殺すのは立ち向かってくるものから、

平和に暮らしていた農民等、

ただ自分が生きる意味を見つけるために

喰らい尽くした

そんな私が

今度は、味方として

人類を守る側として生きても良いのだろうか

否、

断じて否、

そんな夢物語は有り得てはいけない

だが

水無月「諦めるしかないよな…」

アリシエ「えぇ、諦めてください

たとえ貴方がどんな人物でも

わたしが【勇者】に育ててあげますから」

水無月「言ったな?

なら存分に期待しておくよ女神様」

アリシエ「おっと…そうでした私としたことが、

私の名前はアリシエ、

死と眠りを司る女神です、よろしくね」

これは驚いた、

死を司る神様とは、これは何の因果だろうか

水無月「では私も、私の名前は上原水無月

…特に言うことは無いかな」

アリシエ「では水無月

あなたに3つの能力を与えます

所謂、恩恵というやつです」

恩恵と言われても困る、

恐らくは戦闘能力はそれなりにあると思うが…

そうだな、どうせなら

水無月「では遠慮なく…

脳のリミッターを解除、これを1つ目の能力として

その負荷に耐えれるだけの体の構築をお願いしたい」

アリシエ「…可能ですが、何故そのような…

いえ、他でもない貴方が願うのです

叶えてみせましょう」

水無月「では頼みます」

私は年甲斐にもなく少しはしゃいでしまった

どうにもこの女神の前では

普通の人間っぽくなってしまう

これが神様と言うやつか、恐ろしい…

そんなことを考えていると

浮遊感と共に少しの違和感を感じた

そして一瞬のうちに辺りは眩い光で覆われた

さすがに眩しく、目をつぶった

アリシエ「終わりましたよ」

その声を合図に光は収まり

私は目を開けた

表立った変化はない

少し試してみるか、

スゥ…フゥ

水無月「はぁっ!」

所謂、正拳突きと呼ばれる動きだ

その動きが頭の中でクリアに視える

一つ一つの動きがまるで手に取るようにわかる

武術を極限まで高めると至れる頂き…

というものがあるが

私はその領域の一歩手前で死んで行った、

だが今、私はその頂きへと足を踏み入れた

これは凄い、何もかもが手に取るようにわかる

だが、負荷に耐えれるとはいえ、慣れは必要だな

目からは少しの血涙が起こり

手の震えは止まらない

頭もガンガンと痛い、仕方ないな

水無月「少し眠るから

周りに気をつけてく…れ…」

アリシエ「え?ちょっと!」


私は眠るとしよう


かくして【狂人】は【勇者】に選ばれた

それは茨の道、彼にとって人を救うということは

自分の過去を否定することに繋がる

そんな彼が果たしてどう物語を紡いでいくのか

それを知るのはまだ誰もいない


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


農作業って大変だよねぇ、

この時期はなんかブドウの枝を切ってたんだァ

ちなみに私は全く何をしてるのか

分からないから

とりあえず暖かいコンポタをみんなに

買ってきたあげたんだァ

偉い!私偉いよ!

おっといけない話が長くなってしまう!

そんな訳で

第1話お楽しみいただけましたでしょうか

いやぁ本を書くのは楽しいですなぁ

どこまで続くか分からない

駄文の物語

読んでくれる皆様を

私は愛しております

それでは皆様おやすみなさい


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る