異世界転生は地獄の始まり

もももの門

序章

序章1:チート・・・?

 《》内は主人公には聞こえていません。


 ▽


 ―――筧 梓 享年 21


 死因:贔屓球団が優勝して、嬉しくて川に飛び込んだら足を攣って溺死。


 「・・・馬鹿じゃないの?」

 「酒の勢いでつい・・・」


 俺は今、自分の死体の上で目の前の神様?に煽られている。

 実際、笑えない理由で死んでしまったから仕方ないんだけどね・・・。


 「まあ、あたしは上から言われた通りにするだけだからいいんだけどさあ」

 「俺、今から地獄にでも送られるんですか?」

 「地獄のほうがまだマシだったかもねえ」


 地獄より怖い所ってなんだろう。

 っていうか地獄が一番怖い所じゃないのか?


 「ん~・・・あんたらの世界で言えば『異世界転生』ってやつだね」

 「まじっすか!?」


 全然地獄じゃないじゃん!

 なんか魔法とか使えて、チートスキル貰えて無双できるんだろ?

 むしろ今世より来世のほうが幸せじゃん!


 「え、じゃあ俺どんなチートスキル貰えるんですか?」

 「何言ってんの?」

 「え?」

 「あんた、死ぬまでに魔法なんか使えた?」

 「使える訳ないじゃないですか」

 「それでいきなりチートなんてある訳ないじゃん。ま、サービスだけはしたげるから頑張れ、少年♡」


 結局ロクな説明も貰えず、神様にバックチョークで絞め落とされた。

 神様は武闘派だった。



 ▽



 目が覚めると、俺は台車のような物に乗せられてどこかに運ばれていた。

 足をロープでぐるぐる巻きに縛られている。


 俺を運んでいるのは、緑色の体をした小人。

 ゴブリンでいいのかな?


 台車でしばらく運ばれた後。

 洞窟に到着して、そこにある臭い牢屋の中に放り込まれた。


 これ・・・もしかしなくても俺、絶対絶命じゃないか?

 なぜか腕は縛られてないから動けるけど、武器なんて持ってない。

 ゴブリンは短剣を持っていたし、数もいた。

 俺が何を出来るのかもわかってないし、このまま戦っても死ぬだけだと思う。


 「ラモチイクチ・・・シチスイシチ・・・《おまえは だれだ》」

 「うおっ!?」


 牢屋の隅に男が居た。

 両腕を切り落とされていて、呼吸も浅い。

 こんな経験ないけど・・・なんとなくわかる。

 この人は、助からない。


 「シチスイシイモラ ニニ ラモチイキチ ニノニカイシイスチスイカチスチ ラスイミラ ニモラナカラミニ ノラスイテラ テチカチトニカイ ノナスイ・・・《だれでもいい おまえが いきてでられたら おれの いもうとに これをわたして くれ》」


 やばい。

 全く何を言ってるのかわからない。

 何かを訴えかけてきてるのはわかるんだが・・・


 「チカラクチ・・・カチミラモナ《あとは たのむ》」


 結局、何を訴えかけられたのかわからないまま男は死んでしまった。

 男が最後に見つめていた先には・・・

 切り落とされた腕付きの剣と、少し大きめの袋があった。


 牢屋には鍵が掛けられているけど、見張りはいないようなので足音にだけ気を付けながら袋の中身を確認する。


 中身はまず、全く読めない文字で書かれた手紙と日本語の手紙があった。

 紙の質と綺麗さに違和感がある・・・これが神様のサービスって奴なのか?


 とりあえず、その手紙を読んでみた。


 --------------------


 こんにちは。神様の上司です。


 これを読めてるって事はまだ生きてるね。


 君にはこの世界で生きていくための最低限だけ伝授してあげよう。


 まず、『ステータスオープン』と唱えれば自分のステータスが確認できる。

 スキルはレベルアップで習得できるから、頑張ってレベルをあげていこうね。


 レベルが30になれば、現在の職業の上位の職業に転職できる。

 下位職業で覚えたスキルは引継ぎだから安心してね。


 各職業のレベル上限は99。

 大体70くらいで強力な必殺技が覚えられるから、そこまで上げるのもいいかも。


 それと、君の心を読んで、一番欲しがっていたチートを授けておいたよ。

 使い方は、大体感覚でわかると思う。


 ただ、それを授けたら他が与えられなくなっちゃったから・・・

 その世界の言語なんかは頑張って自力で覚えてね。


 それじゃ、頑張ってね。


 p.s.


 上からの伝言は伝えた。

 これ以上はあたし何も手伝わないから。

 あとそこのゴブリン、一匹一匹があんたより強いから。

 精々死なないようにすることね。


 --------------------


 全て読んだら、手紙が燃えて無くなってしまった。


 いやちょっと待ってくれ。


 言葉がわからないのはまずいだろ!?

 生きてここを出られても人間と意思疎通できなきゃどうにもならないじゃん!

 っていうか俺が欲しがったチートってそもそもなんだ・・・?


 とりあえず、手紙の通りにやってみる事にした。


 『ステータスオープン』


 ◆


 カケイ アズサ 16/男 冒険者Lv1 SP0


 HP30/30 MP10/10


 攻撃:10

 敏捷:10

 耐久:10

 知力:10

 技力:10

 

 【アイテムストレージ】


 ◆


 見事に貧弱だった。

 ザ・初期ステータス。


 そして、ステータスを見るまで気付かなかったけど少し若返っている。

 少し若返った所で強くなるわけじゃないけど・・・。


 袋の中身は他に、空の瓶と盾が入っていた。

 申し訳ないけど、盾は借りていこう。


 そして、俺が神様から言語を捨ててまで授かったチート、『アイテムストレージ』。

 異世界漫画を読みまくってた俺にとって確かに欲しかったには欲しかったものだ。

 でも・・・まずは生きてここを出られなきゃ意味がない。


 使い方だけ確認しておきたかったので、何を書いてるか読めなかった手紙を収納してみる。

 触れなくても、目で見て収納したいと思ったら手紙が消えた。


 ストレージの中身の確認の仕方がわからなくて時間がかかったけど、ステータス画面からアイテムストレージを選択すれば中身の確認ができた。


 手紙で色々試した結果・・・

 収納できる距離は3m弱まで、取り出せる距離も同じくらい。

 銃のようにストレージから取り出した物を撃ったりする事はできない。

 本当に『保存』できるだけの物だ。


 ・・・いう程チートか?これ・・・


 とりあえず今出来る事はここまでかな。


 まずは、どうにかして生きてここから出ないといけない。

 剣なんか使った事ないし、戦えるかわからないけど・・・


 絶対生き残ってやる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る