更生の六冒

仁谷ミハル

第1話 メール

 ある日の夜、暗闇を彷徨っていた男の名は、東城修一、24歳、詐欺グループ現リーダーである。


 男は高校を卒業後、地元の先輩に誘われ、詐欺グループLIFEに加入した、主な内容は架空請求、オレオレ詐欺、融資保証金詐欺、などなどである。業界での成績がよく、とても騙すのがうまい性格で、あっという間にリーダーまでもぼりつめていった。


 男は他人のことなど気にせず自分勝手な性格、何か起きても自分だけ助かればいいと思っている。だがグループのリーダーだけあり人をまとめ上げる力はあり、仕事もそれなりにこなすことができる。


 「あー、何かガッポリと儲かる話はないのか。最近警察の目も厳しくなってきたから、そろそろ潮時か。」

 

 だがこの男、この業界を抜け出し更生する気は全くなく、いまも人を騙すことに生きがいをかんじている。


 携帯の所持数は一般の人より多く持ち、仕事用、自分用、たまに間違えることがある。


 そのなかで、見たことのないケータイが混じっていることに気づいた。開いてみると一通のメールが届いていた。


 「なんだ、このケータイ。おれのケータイじゃないな? メール? だれからだ?」


 男はそのメールをひらいた、差出人、無名。


「無名?いたずらか。」


 男はメールを無視し、何も気にせずに今までと同じように生活を送っていた。


 だが、グループメンバーに立て続けに不幸なことがおこった。ちょうどメールが届いたあたりから周りがおかしくなり男は気にし始めた。


 このケータイが原因なのかと、もう一度そのケータイを開いてみるともう一通のメールが届いていた。


 メール「⭐︎ご当選おめでとうございます⭐︎

 あなたに女神が舞い降りました。とても幸運です、こちらのURLから祝杯をお受け取りください。http://sokouoy.maen」


「なんなんだこのメールは?ただの詐欺メールじゃないか!!」


 男は自分もフィッシングメールなどを送りつけていたため、すぐに詐欺メールだということはわかった。


「こんなの送りつけてくるやつはどこのどいつだ?開いてみるか」


 男はすぐにそのURLを開いた、突然あたり一帯が暗闇に囲まれ、徐々に意識を失っていくのであった。


「目覚めよ、東城修一」


 どこからか見知らぬ男の声が聞こえてきた。その声に聞き覚えはなく、なぜ自分が気をうしなっているのかもわからずに頭の中がとても混乱していた。


 男は目を覚ました・・・


「どこだここは?」


 あたりを見渡してみると現実世界とは信用できないほどの荒地にかこまれており人類が滅亡したかのような静けさと混沌とした雰囲気にかこまれていた。


 とにかく、訳がわからずにひたすら走った。ここまで息が切れるほど走ったのは高校生以来であった。男は心の中で考えていた。


「ここはなんなんだ? いくら走っても周りの景色も変わらないし、一体どこなんだ?」


 男はひたすら走っていた。もうどうすることもできないと思った頃、ある2つの異変に気が付いた。1つ目は、あの迷惑メールを開いてから意識が飛んでしまっていたこと。2つ目は、目覚める前に見知らぬ男に呼ばれた事だ。


「まてよ、あの迷惑メールはなんだ? 俺は何に当選したんだ、あのメールを開いたからこんなところに来たのか、だとしたら相当悪質なフィッシングメールだぞ!」


 男はいつも人を騙して生活しているが、自分が騙されて少し新しい感覚にワクワクしている様子


「そんな事言ってる場合じゃないか、でもここには俺だけじゃなく誰かがいるはずだ、あの声は誰だ、全く聞いたことがなかったぞ。」


 ようやく男は冷静になり頭の回転が戻って来た。


 こんな静かな空間で一人になった事がなく、落ち着かない男は、普段考えないようなことまで考え始めた。


「この感じはなんだろうな〜 なんで俺はこんな所にいるんだよ、俺が今までやってきたことが全部帰って来たみたいじゃないか。」


 こんな空間に一人でいる男は孤独感と、内心とても不安だが人がいなくても怖がらずどうするべきか考えていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る