第二十六話 対決! ウィルゲン

――アグニボロス遺跡・最深部


◇マロン

ぐはっ……

う、くっ……


◇ウィルゲン

勇ましい――


が、単身で私に挑んでくるとは


それは勇気ではなく

蛮勇という


身の程を知るといい


◇マロン

うるさいっ!!


ボクは……

ボクは絶対におまえを許さない!


島をめちゃくちゃにしようとする

おまえを!!


◇ウィルゲン

『世界の終焉』が訪れれば

この島だけでなく――


この世界に存在する

すべての島が消え去るんだ


大事を成すためには

耐えねばならぬ痛みがある


◇マロン

なにが痛みだ!


おまえは

この島の人間じゃないだろ!?


だから

こんな酷いことができるんだ!!


◇ウィルゲン

それこそ視野狭窄というものだ


俺は帝国軍人だ


そして、この島は

我がエイジス帝国にとって

大事な領地……


そこに住まう者は

大事な帝国民

辛くないわけがないだろう


◇マロン

嘘だ!


◇ウィルゲン

……聞く耳を持つ気は

なさそうだな

アラン――


◇アラン

は、はい……!!


◇ウィルゲン

この娘に、止めを


◇アラン

た、大佐っ!?

そんなっ……!!


◇ウィルゲン

できないか?


◇アラン

出来ません……!


大佐……!

さっき大佐が

おっしゃったじゃないですか!?


この少女は、

エイジス帝国にとって大切な

帝国民です!


我々帝国兵は、

国の平和と

国民を守るために――!


◇ウィルゲン

そうだ

より多くの国民を守らねばならぬ


◇アラン

!?


◇ウィルゲン

おまえは

俺についてくると言ったな?


◇アラン

は、はい……


◇ウィルゲン

なら、その甘さを捨てろ

これから先は、更に険しい道を

進むことになる


手を血に濡らすことに、

慣れておけ


すべては世界のため!

エイジス帝国の栄光のためだ!


◇アラン

う、うぅっ……


◇ウィルゲン

…………


◇アラン

た、大佐……

どうされたんですかっ……


あなたは武侠の人だと

聞いています!


決して弱者を切り捨てない――

『情』ある方だと!!


なのに、どうして……


私はあなたに憧れ、

ガーディアンになった!


平和を……弱者を守る

あなたの姿にあこがれて――!!


◇ウィルゲン

時に――


非情にならねばならぬこともある

それが――


今だ


◇アラン

大、佐……


◇ウィルゲン

わかった

おまえがやらないのであれば、

俺がやる


◇マロン

たすけ……て……

おじいちゃ――


◇アラン

た、大佐……待――


◇ウィルゲン

許せ、少女よ

世界の未来のため、

命を捧げよ――






◇カイ

たああああああああああああああ

あああああああああああああああ

あああああああああああ!!!!


◇ウィルゲン

!?


◇クロナ

マロン!

もう大丈夫だからね!


◇マロン

クロナ……

カイ……


◇ノア

アリア!

回復を!!


◇アリア

はい!

『癒やしのマナよ、

 応えて』――!


◇ウィルゲン

やはり来たか

カイ!


◇カイ

くっ……!!

大佐!

これが、こんなものが大儀か!


◇ウィルゲン

そうだ

やがてこれが大きなうねりとなる


カイよ……ノアよ

眼を開けよ

心の眼だ!!


◇カイ

ぐはっ……!!


◇クロナ

カイ!!


◇ノア

兄さんっ!!


◇クロナ

よくもカイを!!

はぁっ!!


◇ウィルゲン

ふんっ!!


◇クロナ

うぐっ……!?


◇ノア

クロナ……!!


◇ウィルゲン

次は、どちらだ?


◇ノア

アリア、さがっていろ


◇アリア

ノアさん、でも――!


◇ノア

いいから!


◇ウィルゲン

ノアよ――


◇ノア

なんでしょう、大佐……


◇ウィルゲン

我が友の息子――

聡明なお前なら

わかるだろう


ときには私情を捨て

血を流さなければ

ならないこともある、と


◇ノア

…………


◇アリア

ノアさん……


◇ウィルゲン

なあ、ノア――


◇ノア

大、佐……


◇アリア

ノアさん!

こんな人の

甘言にほだされてはいけません!


◇ノア

っ!


◇ウィルゲン

邪魔をしないでもらおう

少女よ!!


◇アリア

きゃぁっ!?


◇ノア

アリア!


◇ウィルゲン

カイはあの頑固な

デイヴィによく似ている……


いつも夢を語り

夢を求め

夢に生きる――


しかし、おまえはどうだ?


この世界の現状を、行く末を

見据える『眼』を

持っているはずだ


俺は、友の息子をふたりとも

失いたくはない


◇ノア

…………大佐

僕は――ノア・ロストマン


◇ウィルゲン

そうだ

おまえは――


◇ノア

デイヴィ・ロストマンの息子

そして――


『カイ・ロストマンの弟』だ!!

見くびるな!!


◇ウィルゲン

ぐっ……!?


◇ノア

アリア!

みんなの回復を!!


◇アリア

はい!!

『癒やしのマナ』よ!!


◇カイ

うっ……

ありがとう、

◇アリア


◇クロナ

くっそぉ~……

やってくれたなぁ~


◇ノア

兄さん!

クロナ!


◇ウィルゲン

おのれ……

小僧どもが……


◇ノア

兄さん!

ウィルゲンが

怯んでいるすきに――



――ピピピ……

声紋……各生体認証クリア

……メモリ・リストア完了



――『アグニボロス』ノ

出力制限ヲ解除

出力ヲ最大ニシマスカ?



◇ノア

っ!?

これの声は――!!


◇ウィルゲン

遺跡が――!?


ふふっ……

ふはははははははははははは!!

そうか! そうだったのか!!


遺跡は起動した!


『アグニボロス』の出力を

最大に!!

ノーラグベルを真の姿へ!!


◇カイ

やめろ!!

ウィルゲン!!



――承認シマシタ……



――『アグニボロス』ノ

出力制限ヲ解除

出力ヲ最大ニシマス……



――300秒後ニ

オーダーを実行シマス……



◇カイ

ウィルゲン!!

こんなことで

世界は救えない!!


◇ウィルゲン

だまれ、青二才が!


◇カイ

行くぞ、みんな……!

約束を果たすんだ!


◇ウィルゲン

俺に挑むか……

我が友の息子たちよ……


来るがいい!!

受けて立ってやろう!!


◇カイ

たああああぁぁぁぁーーーー!!


◇ウィルゲン

フンッ!!


◇カイ

!?!?


◇クロナ

たあっ!!


◇ウィルゲン

ハッ!!


◇クロナ

──!?


◇ノア

……?


◇アリア

どうしたんですか……?


◇ノア

いや……

ウィルゲン大佐の様子がおかしい


◇アリア

え?


◇ウィルゲン

…………


◇クロナ

剣さばきは鋭いけど

力で押せば、勝てそう……


◇カイ

帝国の英雄ウィルゲン──

こんなものなのか……?


◇ノア

っ!

そうか!


ウィルゲン大佐は、

前にこの火山に来たときの

ケガが治りきっていないんだ


だから──


◇カイ

この勝負……勝てるぞ!


◇ウィルゲン

ほう……

さすが、あの男の息子たち、

といったところか


これしきのケガで

お前たちに負けるとは

思っていなかったが……


見くびっていたこと、

謝ろう

そして──


ここは負けを認めよう


◇カイ

!?


◇クロナ

じゃあ、遺跡を止めて!!


◇ウィルゲン

それはできん

我らも、大義がかかっている


◇ノア

……どうする気だ


◇ウィルゲン

本意では無いが──


これを使わせてもらう


◇ノア

マキナ……!?


◇ウィルゲン

来い──


◇カイ

何をする気だ

ウィルゲン!!


◇アリア

ッ!?

なにか、来ます!


◇ノア

!?


◇ドン・マグラーダ

ヴゥゥゥオオオ……!!


◇ルビーゴーレム

ゥゥゥゥウウウウ……!!


◇クロナ

なにこいつら!?

どこから現れたの!?


◇ノア

あのマキナの力か──!?


◇アリア

とても、深くて、暗いマナが

あのマキナから

溢れ出している……


◇カイ

!?


◇ウィルゲン

すまんな

デイヴィの息子たちよ──


ここで、散るが良い──!!



To Be Continued……

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