魔王vs神

 まずはオレから仕掛ける。

 魔力の粒子が光り輝き魔法陣に吸収される。

 《火魔法》火炎滅却砲を4門発動させグリムへ放つ。

 グリムは前に手をかざす。

 オレの攻撃はかざされた手に防がれるように四方に霧散した。


「無駄だ。《空間固定》、空間を固定し、いかなるものも固定された空間を通ることはできない」


 固定された空間に阻まれればどんな攻撃も当たらない。

 それを一度の攻防で事実として理解した。


「神の力を宿しているだけなことはあるな」


「どうだ!この空間は俺が支配している!今の俺にはどんな攻撃も当たらない!」


 両手を広げて高らかに笑っている。

 鬱陶しいから、黙らせるか。

 オレは《火魔法》火炎滅却砲を50門展開する。


「な………に……!?」


 驚きのあまり声が漏れるグリム。

 オレは無視し、魔法陣を重ねがけする。

 50門の魔法陣を一つに重ね合わせる。

 魔法は同じ魔法を重ねると威力を上げることができる。その分魔力制御が難しくなるが、オレの力なら造作もないこと。

 《火魔法》火炎滅却砲を放つ。

 再び前に手をかざすグリム。

 やはり攻撃は見えない壁に防がれる。


「無駄無駄。神の力を宿した俺は無敵だ!」


 グリムは手刀を横に一閃する。

 《空間切断》空間を切断しそこにあるものを切断する魔法。

 オレは身体をのけ反りこれを避ける。

 地面が地平線の彼方まで真っ二つになる。


「フハハハハッ!!!どうだっどうだっ!!!」


 両手の手刀を何度も振り攻撃してくる。

 魔法障壁ごときで防げるはずもない。オレは躱し続ける。


「ガゼル…………」


 心配そうに見つめるセレス。


「おいおい、そんな顔するなよセレス。ちょっと遊んでいるだけだ」


 オレは懐からタクトを出す。

 まるで指揮者が使うような小さい一本の棒。

 オレはそれをグリムに向ける。

 黒い魔法陣が発動する。

 《消滅魔法》デスピア、触れたもの全てを消滅させる魔法。

 魔法陣から闇色の砲が放たれる。

 《空間固定》で防ごうとするグリム。

 しかし、《消滅魔法》デスピアは止められた空間さえも消滅させ、突き進む。


「なっーーーーー!?」


 《消滅魔法》デスピアに触れれば肉体はたちまち消滅してしまう。

 それを本能で悟ったグリムは《空間操作》で瞬間移動して避ける。

 《空間操作》は空間を足したり引いたりして瞬間移動する魔法。

 宙に浮いていたグリムが地面近くに降りてきていた。

 オレと同じ高さに来たグリム。


「引きずり下ろせたな」


 オレは呟いた。


「舐めてんじゃねぇ!!!《空間圧殺》!!!」


 グリムが殴るような動きをとると前の空間がぐにゃりと曲がり、トラックに轢かれたかのような衝撃が走る。

 吹っ飛ばされながら、片手を地についてバック転の要領で体勢を立て直す。

 ふっ、と鼻で笑うオレ。

 ちっ、と舌打ちするグリム。


「ーーーお前何者だ。神の力を宿した俺とやりあえるとは…」


「ただの魔法騎士志望の少年だ。今はな」


 そろそろ遊びも飽きてきた。

 決着をつけさせてもらおう。

 オレは地に手をかざす。


「ーーーーー来い、無滅剣レイ」

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