前兆
翌日、オレは朝のひと時を楽しんでいた。
早めに起きてトーストとミルクを用意し、天気がいい外の景色を見ながらゆっくり食べる。
もうすぐ魔法競技会とかっていう催し物が始まる。
出場すればどうせ勝ってしまうから参加することに興味はないが、見てみたい気もする。
今の人間達の魔法の技能がどれほどのものか確認することができるからだ。
・・・それに、人間の催し物を見てみたいという気持ちも少しはあった。
そんなことをを思っていると、家の外に人の気配を感じ取る。
人がいること自体は驚くことではないが今回は違った。
ーーーーー殺気を纏っている。
・・・穏やかな朝にはならなさそうだ。
ドンっ、という扉を蹴破る音と同時に人が入ってくる。
人数は5人、いずれも殺気を纏いオレを殺しにきたことが分かる。
オレはイスに座ったまま動こうとしなかった。
「穏やかな朝にして欲しいもんだ」
そう呟く。
返答を期待しての言葉ではなくただの独り言。
「死ねっ!」
返答はあったが簡潔極まるほど分かりやすかった。
言葉を発する暇があるなら黙って殺しにかかればいいものを・・・
1人が火魔法を発動すべく魔法陣を展開する。
オレはすかさず
身体強化の魔法を発動させ、即座に距離を詰める。
「火事になるだろう、が!!」
オレは前髪を掴むと自分の方にたぐり寄せ、その顔面にヒザ蹴りを叩き込む。
鼻血を吹き、がくっと膝から崩れ落ちる。
すぐさまオレは上体をそらした。
直後、オレの頭があった位置を剣が切り裂く。
別のヤツがオレに襲いかかる。
オレは後ろに跳び距離を空けると、催眠魔法を放つ。
「まだ朝だ、大人しく寝てろ」
5人は虚無から誘う睡魔に逆らえず、ゆっくりと意識が闇に落ちた。
「おはようガゼル。どうしたの、浮かない顔して?」
席に座っていると、クシェルに挨拶される。
「いや、なんでもない。ちょっと遅刻しそうになっただけだ」
襲撃者を軍に引き渡していたら、色々と事情聴取されて、来るのが遅くなった。
「ちょっと、また寝坊したの!?アンタってホント遅刻の天才ね」
「まぁな」
オリビアにそんな嫌味を言われたが、流しておいた。
オレは頬杖をつきながら考え込む。
それにしても今朝の襲撃者、目的は何だ?
オレを殺したかったのは間違いないだろうが、何故オレを狙う?
時期的にみて、魔法競技会絡みの可能性が高いな。
また、何か起ころうとしているのか?
いくら考えても答えは出なかった。
ーーーーー今はまだ。
「それで襲撃の件どうなった?」
「失敗したようです。やはり、街のゴロツキ如きではだめでしたか」
人気のない裏道で女が答える。
全身黒っぽい服を着ている黒髪の女だった。
「情報漏洩の心配は?」
「ご心配なく、奴らにはこちらの情報は何一つ伝えていません」
「なら良い。俺たちの計画は知られていないということだな。この計画、失敗は許されない」
男の方は腕章の入った学生服を着ている。
どこかの学生だろうか?
「承知しております」
女は邪悪な笑みを浮かべて笑っていた。
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