後悔
セシルと長髪の男がガゼルを見下ろす。
「ごめんガゼル、最初から僕たちの目的は君だったんだ。ガゼルみたいな優秀な魔法騎士がこれから成長して、さらに力をつけると厄介なことになる。だからその前に摘んでおくんだ」
「そういうことだ。これも仕事のうち、悪く思うなよガゼル・レイヴァルド」
ガゼルからの反応はない。
もう死んでしまっているようだ。
2人は部屋を後にしようと踵を返す。
「これで仕事は終わりですか?」
セシルが長髪の男に尋ねる。
「ああ、これで終わりだ。ランディは殺されてしまったが、こちらは依頼を達成できたからそれで充分だろう。
ーーーあ、そういえば、お前には言ってなかったが依頼の内容はもう一つあったんだ」
長髪の男はセレスの方を向く。
その手にはなぜか短剣が握られていた。
「何ですか、もう一つの依頼って?」
セレスは長髪の男に尋ねる。
男は黙ってセレスを見つめている。
「それはーーーお前の抹殺だ、セレス」
短剣がセレスに刺し出される。
もう少し距離が離れていれば《
しかし、セレスは完全に油断しており男との距離はほぼ0に等しかった。
短剣がセレスを貫く。
「お前みたいな力がありすぎる奴は、危険だと判断されたんだろう。これも仕事だ、悪く思うなよ」
セレスは胸を押さえ膝から崩れ落ちる。
その顔は、少しだけ笑って見えた。
そのままうめき声すら上げず静かに床に倒れこんだ。
まるで、死を受けいれているかのように。
「さらばだセレス、それにガゼル・レイヴァルド」
男は部屋を出て行く。
「ご…………めん……ガ………ゼル………」
セレスは霞んでいく視界の中でガゼルに手を伸ばそうとしていた。
次第に声が出なくなっていく。
声が出ない分、セレスの心からは今の気持ちが溢れ出ていた。
ーーーいつか、こんな日が来るんじゃないかと思っていた。
ーーー僕は、暗殺の中でしか生きることができない殺し屋。
ーーー生まれつき暗殺者になる為のような能力を持って生まれて、人を殺すことでしか生きることができなかった僕。
ーーー裏切り者は裏切りによって殺される。
ーーーこれが僕にお似合いの最期だろう。
ーーーでも、君と一緒にいた時間は悪くなかった。楽しかった。
ーーーもし、こんな能力を持たずに生まれてきたら君と本当の友達になれたかな…。
ーーーあぁ、普通の人生を送りたかったな……。
「やりたくないのにやらされて、それで終わりでいいのか?セレス」
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