足止め

学園が襲撃される15分前ーーー


「ヤバっ、また遅刻だ!」


オレは学園に向かい走っていた。

今日も朝の睡魔の誘惑に負けて寝坊してしまっていた。


「急がないと、またオリビアにどやされるっ!」


急いで学園に向かう。


しかし、走りながら妙なことに気づく。

朝の商店街は賑やかなはずなのに人が1人もいない。

今日はたまたま少ないにしたって、全くいないのは不自然だ。


…人払いの結界か。

オレは人の気配を感じとり、その場に足を止める。

人払いの結界の中にいる人間、すなわち術者だ。


「おい、そこにいるのはわかってる。出てこいよ」


すると、路地裏から1人男が出てきた。


「気づく前に奇襲するつもりでしたが、その前に気づくとはやりますね」


淡々とした口調で称賛する。


「何者だ?なんでオレを狙う?」


「これから死にゆくあなたには関係ないことです」


そう言うと、手をかざし魔法陣を展開する。


しかし、魔法が発動することはなかった。


オレと男の周りを濃密に圧縮したオレの魔力で満たし、魔力場を乱して魔法の発動を妨害したのだ。


ずば抜けた魔力量のオレにしかできない力押しの荒技だ。


「もう一度聞く。オマエは何者だ?なぜこのオレを狙う?」


心臓を射抜くようなオレの視線に気圧されて、男が一歩後ずさる。


「あ、あなたに教えるわけないでしょう」


怯えながらもオレの質問を拒絶する。


「面倒な手間をかけさせないでくれ。今日は1時間目が実技なんだ。オレは急いでるんだよ」


声に含まれる怒気がさらに男を怯えさせる。


「じ、授業なら受ける必要はありませんよ。授業はとっくに中止になっているでしょうから」


……なるほど、こいつの目的はオレの足止めか。

学園で何かが起こっている可能性が高いな。

ならば、わざわざ付き合ってやることもないだろう。


「速攻で潰すっ!」


そう口にし、自分を奮い立たせると、《身体強化》の魔法を使い地面を蹴り一瞬で懐に潜り込む。

こんなやつは、オレの敵じゃない。

最小限の力で充分だ。

男の腹部に拳を叩き込み、それと同時に魔力を撃ち込む。


「ぐぁっっ!!!」


男は崩れ落ち、地面に倒れた。


「まったく、弱くて足止めにもならないな」


オレはすぐに踵を返し、学園へと急いだ。










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