生徒会長

 オレたちは訓練場から教室に戻ってきた。


「アンタ強いのね、アタシ地元では負け無しだったのに」


 教室に帰るなりオレに話しかけてくるオリビア。


「井の中の蛙ってやつだな。世界は広いんだぞ」


 む、とした顔になるが怒ってはいないようだ。


「悔しいけどその通りね。アタシももっと訓練しなくちゃ」


 訓練するというオリビアに対して、オレは戦って思ったことを言ってみる。


「オリビアは剣より弓の方が合ってると思うけどな」


 どうして、と首をかしげて聞いてくる。


「今日戦ってみて思ったんだ。アレだけの魔法素質があれば、遠距離から魔法と弓で圧殺する戦い方の方が合ってるって」


「一応参考にさせてもらうわ。それじゃあアタシは訓練のために今から帰るから。あ、それと、実力は認めるけどアンタ自身を認めたわけじゃないんだからね」


 そう吐き捨てると、帰っていくオリビア。

 それを機にクシェルが近寄ってくる。


「お疲れ様、一緒に帰らない?」


 いいぞ、とオレは頷く。

 オレもそろそろ帰るか。


「ガゼル・レイヴァルドは居るか?」


 不意に教室の出口の方から声をかけられた。

 見たことない顔だな、それに制服の色が違う。上級生か?


「オレですけど」


 オレは一応返事をしておく。


「生徒会長がお呼びだ。直ぐに生徒会室に来るように」


 言いたいことだけ言うと、そのまま行ってしまった。


「ガゼル、今度は何したの?」


 クシェルが心配そうに聞いてくる。


「失礼だな。今度は、ってオレは最初からなにもしてないぞ…たぶん」


 また呼び出しをくらい不安になる。

 今度もまたとんでもないことを言いだすんじゃないだろうな…。


「そういうことだからオレは生徒会室によって行く。悪いな、一緒に帰れなくて。先に帰っててくれ」


 少し寂しそうに頷くと、クシェルは一人で帰っていった。

 オレは生徒会室の前に立ち一呼吸すると、扉を開ける。


「失礼します。生徒会長に呼ばれてきたんですけど…」


 生徒会室が一瞬時が止まったように硬直する。

 生徒会役員からの視線を一身に浴びる。

 部屋の中央で椅子に座っている男が声をかける。


「よく来たな。俺は生徒会長のキース・グランハルトだ。待っていたよ、ガゼル・レイヴァルド」


 好戦的そうな目つきに、着崩して着ている制服。

 何でこんなやつが生徒会長なんだ?

 オレは疑問に思いながら、部屋を見渡すと、一人の女に目が止まる。

 この女、朝に商店街でオレを敵視していた女だ。

 何か面倒なことが起こりそうで、嫌な予感がしていた。




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