クシェル・ダーマイス

 オレと少女は夕暮れに染まる街並みを歩いていた。

 気まずい雰囲気だったので、オレから話を振ることにした。


「そういえば、自己紹介がまだだったな。オレはガゼル・レイヴァルド。君と同じ魔法騎士志望だ」


 そう言うと、少し驚きながら自己紹介してくれた。


「そうだったんですか。あ、私はクシェル・ダーマイスといいます。さっきは助けてくださってありがとうございました」


「そんな大したことはしてないよ」


 謙遜ではなく本当にそう思ったので、そう口にしておく。


「いえ、こんな素晴らしい剣まで頂きましてありがとうございます!これで、入学試験に合格できます」


 剣を買うとかも言っていたが、魔法騎士になるのに並々ならぬ理由がありそうだ。


「クシェルはどうしても魔法騎士になりたいんだな」


「はいっ!魔法騎士は私の目標ですから!」


 クシェルは急に目をキラキラさせて、昔話をしてくれた。


「昔危ないところを魔法騎士様に助けてもらって、それで私もなりたいと思ったんです!」


 実に単純な理由だか、なりたいものなんて皆複雑な理由があるわけじゃないだろう。

 それだけその時のことを印象的に感じていたんだろうな。

 そんな風に推察していると、不意にぐぅ〜とお腹がなった。


「話の途中で悪いんだけど、この近くで泊まれる宿を知らない?よかったら教えて欲しいんだけど…」


「はい。剣を頂いたお礼にとっておきの宿を教えますよ」


 クシェルに案内されて、オレは宿に着いた。

 自室のベッドに寝転び今日を振り返る。


(色々あったが、いよいよ明日が入学試験か…)


 オレ新しい人生の幕開けに少し胸を踊らせながら、そのまま眠りについた。







 入学試験当日、オレは試験を受けるため学園に向かっていた。

 隣にはクシェルもいる。


「今日はお互い頑張って合格しような」


「はい、頑張りましょう」


 オレたちはそう励まし合う。

 学園についたところでオレたちは別れた。

 入学試験には素質調査、実技試験、筆記試験の三つがあり、その合計点で決まる。

 オレはまず素質調査を受ける。

 素質調査とは、魔法騎士にとって重要な役目を果たす、魔力の量をはかる調査のことで、素質のないものはここでふるい落とされる。


「3564番、ガゼル・レイヴァルド」


 受験番号を呼ばれ、オレは総魔力量を数値化する魔道具に魔力を流し込む。

 魔道具には4000と表記された。

 これは高いのか?それとも低いのか?

 基準が分からないからなんとも言えない。

 すると試験官が瞬きを何度もしながら魔道具を凝視する。


「き、君は一体……いや、なんでもない……」


 オレの方を見てそう呟く。

 全く、なんなんだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る