鍛冶屋
オレは鍛冶屋にやってきた。
見ると、金髪碧眼の少女が困っていた。
どうやら、持ってきたお金では足りないようで、銀貨を何度も数えていた。
「これ以上は下げれんのだよ。金が無いならもう少し安いのにしたらどうだ?」
店のおじさんは、部屋の隅にまとめて立てかけてある剣を指さす。
しかし、少女は首を横に振る。
「だめなんです。明日の魔法騎士の入学試験に合格するには、これじゃないと…」
なんだ、こいつも魔法騎士志望なのか…。
オレと同じ、剣を探してる魔法騎士志望者…なんとなく親近感が湧いてきた。
「どうしたんだ?困っているなら力になるけど…」
オレは少女を助けることにした。
声をかけると、少女は戸惑っていたがすぐに事情を教えてくれた。
「この剣が欲しいんですけど、お金が足りなくて…」
オレは剣を見て疑問に思う。
この剣は素材はただの鉄だ。ミスリルでもオリハルコンでもない。なのに何故こんなに高いんだ?
「この剣、素材はただの鉄ですけど、なんでこんなに高いんですか?」
「この剣の装飾部分の魔石には、[
ん?なにを言ってるんだこのおじさんは?
オレは言っている意味が分からなかった。
確かに魔石は貴重品だ。それに魔石には、魔法を保存する機能があるから、[
しかしそれにしたって高すぎる。家が一軒買える値段だぞ。
「あの…オレはいつも七つの魔法を込めて戦っているんですけど…」
「えぇっ!!?」「うそっ、!?」
二人とも、とんでもない顔で驚き、店のおじさんに至ってはカウンターから身を乗り出していた。
なんで驚いているのかサッパリ分からない。
しかし、おじさんはすぐに笑い出した。
「はっはっ、冗談はよしなよお客さん、二つの魔法を込めるだけでも人間国宝級って言われてるのに、七つなんて無理に決まってるだろ」
信じようとせず、バカにしてくる。
何故信じてくれないのか分からないが、信じてもらうために目の前で実演してみせる。
「ほら」
七つの魔法陣が剣に吸収されるように吸い込まれ、剣が薄く光る。
その様子を見る二人は言葉も出ないようだった。
そんな中、おじさんは言葉を絞り出す。
「ま、マジかよ…」
信じられないという様子だったが、構わずに説明を続けた。
「オレの剣には魔石が無いから永続的に魔法を発動させることはできないけど、斬る瞬間に七つの魔法を込めることならできるから、それで誤魔化しながら戦ってきたんだ。けど剣がもう限界で…」
オレは剣を探していることをさりげなくアピールする。
随分と話が逸れてしまっている。
「オレは自分で魔法を込めるんで、魔石さえ付いてる剣ならどれでもいいですよ。君もその高い剣じゃなくて安い剣を買えばいい。オレが魔法を込めてあげるから」
問題は解決した、と少女に伝える。
「あ、ありがとうございます!」
少女は戸惑いながらも嬉しそうにお礼を言ってくれた。
剣を買い、店を出ようとすると、店のおじさんに引き止められた。
「待ってくれ!うちの剣に魔法を込めていってくれねぇか?報酬ならはずむぞ!」
おじさんは、オレを利用して商売にできると思ったのか、そんなことを言ってきた。
「悪いな、他を当たってくれ」
「そんなこと言わねぇで頼むよ、なぁ?」
オレはおじさんの瞳に悪魔が囁いているのを見逃さなかった。
欲という名の悪魔が、おじさんに囁いていた。
「悪いな、能力があるからって担がれて利用されるのはうんざりなんだ」
オレは別に人助けをしたいヒーローじゃない。
助けるかどうかは自分で決める。
オレはおじさんを見限ることを決めると、店のドアを閉めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます