第8話 姫さまとエイプリルフール2 ~姫さまはウソつかない~

椅子から転げ落ちて腰をぶつけた姫さまを支えつつ、訊ねてみます。


「それで、姫さま。今年はどういったウソをつかれるおつもりで?」

「う、うむ。今年はな、とっておきのウソで派手に皆を盛り上げてやろうと思ってな」

「ほほう、といいますと?」

「まず、絶対にできないことをたくさん言う。そうだな、たとえば、『この城は空を飛ぶのだ!』のような、な」

「え? だいじょうぶですか? いくらエイプリルフールといっても、そこまで具体的な発言をしてしまうと、王家のしきたりに反するのでは?」

「うむ。王家の者は、具体的な発言は、必ず守らねばならぬからな。だが、最初にこういうのだ。『私は決して嘘をつかぬ!』とな」


フフン、と胸をはる姫さま。


「なるほど、その一言がそもそもウソ、だからその後の事も全部ウソだ、とするおつもりですね」

「左様じゃ。でも皆は『そんな壮大な事をやってのける決意をした姫さますげー!』となり、わらわの威厳にひれ伏すであろうぞ」


かかか、と下卑た笑いをする姫さま。


なるほど、悪だくみをする姫さまもたいそうお可愛いのですが、私めは姫さまにお仕えする執事。

たとえ、エイプリルフールであろうと、これまで姫さまに一度もウソを付かせたことなどないのです。

今年もやり遂げてみせますぞ。。。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る