姫さまとエイプリルフール

第7話 姫さまとエイプリルフール1

4月1日。


今日はエイプリルフールでございます。


「フンフン、フフン♪」


今日の姫さまは朝からそわそわと落ち着かないご様子。

よほど、楽しみにしていたようです。


「今日はエイプリルフールだな!」


「さようでございますね」


「ああ……待っていたぞ! この日が来るのを!」

「?? なぜでございますか?」

「今日だけは公然とウソをついてもよいのじゃぞ? 日頃わらわは虚勢を張ることさえ許されず、等身大の姿でおらねばならぬ身だからな」


顎に手を当て、鼻を鳴らす姫さま。

常日頃から背のびばかりしている気もしますが、そんな細かいことをいちいち気にしない姫さまもかわいいなあ。


まあ姫さまご自身が真っ先にウソをついてしまうのもあまりよろしくは無い。

ここはワタクシめが先陣を切りましょう。


「あ、姫さま」

「なんじゃ?」

「お楽しみのところ申し訳ありません。今年のエイプリルフールは諸事情により中止となりました」


「な、なんじゃと!?」


勢いよくのけぞったせいで、椅子から転げ落ちる姫さま。

大事なスカートがめくれてしまって丸見えですぞ。ああ、かわいいかわいい。


「うそでございます」


「え?  ……そ、そうか。い、今のはなかなかよかったぞ」


心底安心した表情の姫さま。


姫さまは今日ばかりはウソをつきたくて仕方がないご様子。


ならば……。


我々は意地でも阻止するまで!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る