死にかけて手に入れた特殊能力がどこか間違っている。

お地蔵さん

第1話 心の声……?

朝起きると、頭に何か重いものがのしかかっているような、そんな違和感があった。


しかしそんなこと気にしてられない。時刻を見ると七時五十分。


朝のHR開始まであと十分といったところだ。


俺は布団から跳ね起きて、すぐ制服に着替えて家を出る。


親はすでに仕事に出てしまっているらしい。


高校生になってから遅刻なんてしたことなかったのに……まぁ昨日あんなことがあったからな……


俺は中学時代三年間帰宅部の誇りにかけても絶対に遅刻するわけにはいかない。


帰宅部は帰る速度は全国レベルに速いが、普通に走る速度は逆に全国レベルに遅い。


俺は必死に呼吸し足を動かし続けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


校門に着き、呼吸を整えてから顔を上げると、そこにはたくさんの生徒の姿があった。


え? なんで? みんな遅刻しすぎじゃん? と思っていたが、学校にある時計台を見てみると、時刻は七時三十分だった。


どうやら俺の時計がズレていたらしい。


飛んだ走り損だった。時間返せ。


はぁはぁ言いながら教室に着くと、数人の生徒が読書したりスマホいじったりしているが、なんだか空気がぬめっとしている。


なんだ? 気持ち悪いな。


そう思いながら、キョロキョロ周りを見渡しながら自席に着くと、後ろの方から俺の名前が聞こえた。


「来たよ……羽場……」とても小さな声だったが、なんだかエコーがかかっている感じがした。


聞こえてるよ……もうちょっと聞こえないように話そうねそういうことは……


俺は少しばかり傷ついたが、まぁそりゃそうだ。自殺しかけたやつとなんて、関わりたくなくなるものだろう。


俺は机に突っ伏して、HRが始まるまで寝た振りを決め込むことにした。


しかし、その最中俺は違和感に気付いた。周りが異様に騒がしいのだ。


なんだか聞いてはいけないものを聞いてしまっているようだった。


俺は勢いよく顔を上げ、違和感の正体を突き止めようと周りを見渡すが、誰一人として話している様子はなかった。


だが周りの声はしっかりと聞こえている。


どういうことだ……?  


「うわ、こいつまたこの話始めやがったよ……だりぃー」


え? なんだこれ……? どこからか愚痴のようなものが聞こえてくる。


教室を見渡していると、一緒に話している二人組を見つけた。


一人は楽しそうに話しているが、もう一人はなんだか居心地悪そうにしている。


今の声はあの人の….…心の声……?!

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